次の目的地
竜に会いに行く。
俺の旅の目的には見事に合致している。
セルテはステラと旅がしたいのだろうが、ステラはそれでいいのだろうか?
「ステラはそれでいいのか?」
ステラはサラリと答えた。
「私の旅の目的は『私の起源、両親や親族』ではありますが、それよりも自分のしたい事をした方が、自分の起源に近づけると思うんです。だからこれは私のための提案なのです」
ふふん、と語るが、体良く俺たちの都合に合わせてくれているだけのお人好しにしか見えない。
セルテも呆れ半分、諦め半分といった感じでやれやれという顔をしていた。
だが、それを目的にしてくれるなら乗らない手は無い。
今仮説が立てられるとすれば…数ある竜の中で、水竜ならば水が人々や生き物の営みを支えているような場所ならば、竜にも会えるかもしれない、といったところか。
「水の名所…か」
「カシューカス…治安が悪すぎる。アラニル…遠すぎる。テルニ…どうかな?水のイメージはないか」
ハンドブックをパラパラとめくりながらセルテも心当たりを探すがピンとこないようだ。
「あっ」
ステラが閃くときは心してかかる。
「私、竜に会ったことがある…かも」
ほらきたよ。
セルテも驚きを隠せなかった。
竜の玉から取り出すエネルギーは人々の暮らしを支えている。しかし、その玉の採取は専門家のような職人に一任され、その顔ぶれも行き先も一切秘匿されているのが常だ。
そのため、一般の市民で竜に会ったことがある人はほとんどいない。
「ステラ…あんたはまた…」
「どこでだか覚えているか?」
彼女も思い出そうと懸命になっている。
…。
……頑張れ。
………ダメか?
「綺麗な、真っ青な海だったとしか…」
頑張った割に断片的な情報だった。
近くで綺麗な海…。
自分の記憶に照らし合わせるが、内陸にいた自分は綺麗な海の記憶は持ち合わせていなかった。
「…青い海?…『青の海』?」
セルテはどこか思い当たったようだ。
「ステラ、あなたのご両親、相当遠くまであなたを連れ回してたの?」
「そうかもですね。何せ放浪の民ですから」
「あっけらかんと…そうだとしたら幼子の旅する距離じゃないんだけど…筒の地図の今ここらへん。そしたら青の海はここだよ?」
そう言って改めて地図を丸めて場所を確認する。
丸めた地図の上から四分の一。そこから半分より少し下まで。歩きではひと月以上はかかる場所だ。街道沿いであれば乗り物が欲しいところだった。
「でも、他に行くところもないからな」
「じゃ、のんびりと青の海を目指しますか!」
こうして、我々の目的地が決まったのだった。




