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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第四章 ステラの章 竜の尾が降った街
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レクシアの真実

さらに二日。だいぶ体力は回復してきたし、足の痺れもなくなったところでついにまた街に入った。


やっぱり、街は崩壊していた。歩いても歩いても、誰にも出くわさない。

毎日灯りは人を引きつけんと夜な夜な輝いているのに、街の中には誰もいない。


新市街を抜け、旧市街へ。

この先右に曲がると…あった、『銀の天秤』だ。


ーかちゃりとドアを開ける。あれから大きな変化は…ないだろうか。


あらためて、レクシアさんに祈りを捧げる。


この狭い店の中で、[深い]場所を探すことができるのかな。

レクシアさんのベッドを動かしてみても、特に何もない。天井裏には入れるような入り口がない。

地下室の階段などもない。


「当てが外れたか」

イグジさんは窓を開ける。


「レクシアは学者肌の魔術師でね。魔力素材についてずっと調べてた」

セルテさんは、お店の奥の居住スペースを調べていた。私たちは、お店のカウンター、最後にレクシアさんが横たわっていた場所のすぐそばで、レクシアさんの痕跡を辿っていく。


『魔術素材の効率化研究ー最低の素材から最良の術を放つために』

『蓄魔力素材大全』

『質量、法則を突き破る奇跡の素材』

『聖属性、闇属性と無属性』

『属性魔術の反転ー炎を水に、光を闇に』

『月の力と日の力』

『無力化、反転攻撃の理論』


そんなタイトルが並んでいた。

「なあ、ステラ」

「何です?」

「だいぶここの本、反転魔術に関するものが多いよな?」


あ、確かに。栞もついてる。


本を取り出して、栞のページを開く。


『闇を光に、悪を聖に変換する技術的理論』のページだった。

“理論構文に破綻。火と水の相互性が否定された”


付箋にはメモなのか、几帳面な字が書き込まれていた。

よかった、私そんなに読み書き得意じゃないけど、ちゃんと読めるよ。


別の本を見ると『属性の概念的分解』について、「炎の根源=明かり、燃焼。燃焼は水、明かりは闇?」、というメモが残っていた。


素材の本にも手を伸ばす。

『奇跡の素材』のページでは、私が無くした“水竜の涙”にもチェックがついていた。


セルテが寝室から戻ってきた。

日記を開き、悲痛な顔をしていた。


「レクシア、この街の水の問題をどうにかしようとしてたんだね」

「はい、あの時の表情、とても真剣でした」


思い出しても胸が痛くなる。


「それで、真面目に真面目に取り組んで、越えられない壁に躓いた」


今の今、見ていた内容を思い返す。


「日記には、日に日に焦っていく様子が書かれてるわ」

そう言ってページを広げてこちらに見せる。

さっきの几帳面な字とは打って変わって、ガタガタに大小も筆圧も大文字小文字も狂っている。


「街の人が水を飲めず死んでいく。心を痛めて…」 


ぺらりとページをめくっていく。


「さらに追い込まれていってー」


その結末は、聞きたくなかった。


「ーそして壊れた」


見せつけられた最後のページには、かろうじて読めるかどうかという字で『もうダメだ、死のう』と書かれていた。

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