竜の尾が降った街
まずはスープをずずーっ。
ああ…カフカラが染み込んでくるよ…。
その飛ぼうと思えば食べるのに頑張らないで走り回って鍛えられた足の肉を頬張る。
固すぎずむちっとした筋肉の食感と、遠火でじっくり焼いたことで表面に浮き出てきた、旨味そのものの脂。
これは…
「ヤバいですね」
「無限にイケるわ…」
お姉さんの目つきが本気です。
「……」
無言でガブガブとかぶりつくイグジさん。
本人は口下手だって言ってたけど、その表情は実はとってもものを語る人。そして、とっても楽しくて良い人。
続いて肛門。
ここは知る人ぞ知る美味しい場所なんだけど、セルテさんは抵抗あるみたい。
だからこそ。
「はい、セルテさん」
問答無用に同じ部位を渡す。ああ、躊躇ってる困ってる。可愛いよう!
では先に。ぱくり。
「んー!」
噛み切ると断面からじゃばっと流れ出る旨味のエキス。
「!」
ほら、ステラさんだって食べたらいけるでしょ!
ああ、イグジさんごめんなさい。2つしかないので…
「あだーーー!」
「自分が口につけたものを人に渡さないの!」
イグジさんが楽しそうに笑う。
その足元でコロネは骨をカジカジと食べる。
マルカは『森の掃除屋』。なんでも食べて分解して土に返す。
そして骨なんかの成分が鼻の奥で固まって通信石を作る、らしい。
さあ、今度は炊き込みだ。
あー、これは…。
カフカラの美味しいところ、ぜーんぶご飯に溶け込んで染み込んで。
「幸せ…」
ぽろっと感想がこぼれ出た。
私はそろそろお腹が膨らんできたけど、イグジさんは止まることなく、吸い込むように食べ続ける。
半刻もすると、綺麗さっぱり、お皿しか残らないのだった。
「で、そろそろカヌイに着くわけだけど」
「はい、着きますね」
実はもう、街の明かりはかなり近くに見えている。
でも、まっすぐ歩いても絶妙に深夜になっちゃう距離感なんだよね。
カヌイ。半年前、『竜の尾』と言われる、大きな流れ星が街に落ちたと言われている。
この話を聞いたイグジさんの反応が男の子のようで可愛かった。
「とりあえずは『竜の尾』について調べる、でいいね?」
「はい」
「私は魔力素材を見てきたいと思う」
「俺は酒屋で話を聞くかな」
「私は宿屋の確保を…」
「いや、あんたは私と来なさい。交渉ごとはお人好しよりガメツイ姉さんにお任せよ」
「はーい」
明日はいよいよ、次の街。楽しみで眠れないよ!と思っていたけど、テントに入って目をつぶってすぐに、セルテさんに起こされたのだった。