祝宴の夜
3人と4人と大袋と簀巻きの大所帯で街に戻る。
まずは大口の門から入ってすぐの詰め所に、簀巻きを届ける。取り合ってくれない、なんてことがないように、さっき使わなかった思念力を呪力に変えて、黒い石に宿らせて、偉そうな奴の胸元に仕込んでやった。
私の大切な宝物に傷をつけようとした報いは必ず受けてもらう。
続いて向かうは拠点、山猫の酒場。
幸い今日は定休日。マスターだけ呼び出して、ランタンを灯して祝勝会だ。
みんな旅と戦闘でもうぐったりだった。
だけど、皆、語りたいことがたくさんあった。
いや、一人は話すより聞くばかりだったが。
今日はマスターに湯を沸かしてもらおう。かけ湯で体の汚れを洗い落とさないと、我がステラを全力で愛でられない。
ステラはというと、人の悪意に当てられはしたが、今は足取りもしっかり、店に戻ってからはヤシマンバ討伐の大冒険を面白おかしく私に語っている。うい奴め。
弱みを握られていた4人とは店で一杯やりながら話を聞いて解散。皆どこか清々しい顔をしていた。
全く、うちの娘の浄化の力には畏れさえ感じるわ。
よく知られていない獣の生態に精通し、あっさりと討伐をしてくる胆力と能力。
今はまだ知られていないが、きっと皆が求めるだろう。
だけど。
この討伐と戦闘の立役者は間違いなく、彼だった。
多くを語らないやつではあるが、その剣の腕は確か。
計算も早く、優先順位を間違えない。
既にステラとは数年来のお付き合いといった風格まで出ている。
元宿屋のこの店は、私とステラの部屋以外にも幾つも空きがある。この前はマスターに無理を言って相部屋させたが、もう別に部屋ひとつ割り当ててもいいだろう。
ステラを愛でて寝かして食堂に戻ると、彼は静かに酒を煽っていた。
「ありがとう。約束を守ってくれて」
カウンターの隣に座り、空になったグラスにおすすめの一杯を注ぐ。
その酒をちびりながら彼が言葉を返した。
「約束?」
「そう、あの子を守るって」
「そうだったな。気が付いたらそれが当たり前になっていた。不思議な奴だ」
どうしようか、先読みの話、するかな。
少し悩んだが、今のところ、やめておいた。
静かに酒を酌み交わしながら、夜が明けるまで、ほとんど会話のない祝宴を続けた。