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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第十三章 セルテの章 王国の未来と天の声
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六千年の恨み

イグジが戻ったのは、サイトから遅れること三刻ほどしてからだった。


東に行ったサイトに対し、西に行ったイグジ。

この世界の魚が集まる西側は、つまり海で、いくつもの島々が点在する。


「おかえり。どうだった?」

だいぶ疲れた様子のイグジ。私は水筒を渡しながら声をかける。


「おう。ありがとう」

水に口をつけて、二口、三口と飲み進める。


ーぷはっ


飲み終えると、やっと答えが返ってくる。


「だいぶ離れ小島が多いからな、王の威光が届いていなかった地域も多いみたいだ」

「そうなんだ…やっぱり一枚岩とはいかないのね」


「…そうでしょうな」


突然、ヤズグットが割って入る。


「ナズリン族と言う名前にお聞き覚えは?」

「確かに、島の方でその名前を聞いたな」


ヤズグットは神妙な顔をしている。


「私は王の側近として二十年、仕えて参りました。その中で、何度か聞き及んだのがナズリン族です」


「そのナズリン族っていうのは?」

「はい、王がこの地に王国を移転することに最後まで抵抗した一族です」


その言葉は、私も想像していたものだった。

国を別の次元へ移転するなんて、国民全員が納得するはずがない。その場で反対した人間は出国したり向こうの世界に居残ったりしたものと思われる。


でも、それだけじゃなくて、親が移転に賛成したからついてきたけど納得しなかった子供のような、止まれぬ事情があった人もたくさんいたんじゃないか。

そういう予測はできる。


「六千年という時の重みがが私たちには想定できないのだけど…最初は相当、抵抗があったんじゃないかしら」

「はい、私も王よりそう聞いております。ですが、世代が移り変わるにつれ、柔軟な思想を持つ者が現れ、下の世代を納得させていったそうです」

「…その中で、ナズリン族っていうのは…最後まで柔軟な奴が現れなかったわけだ」

「そう聞いております」


「まあ、分かるわよね。元々の世界には当然知り合いもいれば、未練もあるだろうし」

「当時は相当な非難と反対があったそうです。ですが、我らが亡き王は、自分の罪であると非難を一身に受け止め、断行したと聞いております」


なぜ自分達が世界から隔絶されなければならないのか。なぜ自分達に、災禍の芽が降りかかったのか。


この病は数千年前にあっという間に広がりを見せて、あっという間に収束した、という記述だった。

それだけ、初期対応が迅速で効果があっただろうことは間違いない。だけど、その犠牲になった人たちの怨嗟の念は…。


この選挙は簡単には進まないのかもしれない。

私はそう、考え始めていた。

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