男たちの帰還
こうして話し合いを続けること数日、いよいよ代表選出の申し出が行われる。
それはつまり、各地域の代表候補が王都に集まるということで、サイトとイグジが一度戻ってくるということでもあった。
「よう、制度の準備の方は進んでるか?」
「あら、お帰りなさい」
サイトが戻ってきた。
「これから王様のところに行ってくる。…間に合わなかったみたいだな」
「薬はできたんでけどね…間に合わなかった。ステラはそっとしておいてあげてね」
少し、悲しそうな顔をした後、明るく答える。
「任せときな。旅の土産話で笑かしてやるから」
「あんたのそういうところ、好きよ」
「俺に惚れるなよ?故郷の女が泣いちまう」
「いないくせに」
「うるせ」
久々の小気味良いやり取り。
でも、なんだか、この数週間でだいぶ疲れてたのは私たちだけではないようだった。
向こうサイドも相当大変だったんでしょうね。
「そういえばイグジは?」
「いや、旦那とは途中で反対側に別れてったからな、そのうち戻ってくるんじゃないか?」
そりゃそうだ。こんな広い国土を一団体でぐるりと回るのは効率が悪い。
「で、そっちの守備は?」
「まあ、素直な国民たちだからな、特に不正とか国家転覆を目論むような奴は特に見当たらねぇかなぁ」
「それならいいけど…」
「ただやっぱり地方の豪族みたいな奴は票集めしたり傀儡を立てたり、俺たちの世界で昔起きたことは起きそうな気配があったけどな」
そう言うと、サイトは王様のいる中庭へと向かっていった。
入れ違いでステラがくる。
「今、サイトさんの声しませんでした?」
「ちょうどすれ違って王様の木に挨拶してくるって言ってたわよ」
「あらら、はーい」
「あ、ちょっと、ステラ」
追いかけて王様の木に向かおうとしたらステラを呼び止める。
「今日はサイトとイグジに思い切りご馳走を作ってあげましょ」
「…はい!」
にっこりと笑って、ステラはサイトの後を追いかけていった。
…本当に、このままうまくいくかしら?
それは、先読みしたわけでもないのに、ほぼ確信的な予感だった。