待ち侘びる夜
最初に引っかかったのは、
“なぜ『採集』すなわち木の実や果実、野草をメインにしているステラに、この地域でもほぼ最大の脅威になる、ヤシマンバの依頼を出す者がいるのか”
だった。
ステラのこれまでの実績は、まさに『採集』であった。
急にこんな重たい依頼をすれば、つまり1人では動けない。
基本お人好しのあの子は、自分宛の依頼を断らないし、自分の受けた依頼を終えるまで、他の依頼も受けない。
つまり、依頼した者勝ちだ。
最初は、その依頼の直後に現れた新入りが怪しいのでは、と考えた。
様子を見るために、私ができる最大限の呪
(まじな)いを彼に授けたが、今のところ、私の呪術が発動する兆しはない。それで十分証拠になる。
『誓約に偽りがあれば、
肺の臓に穴を開けてやる
誓約に対して心変わりがあれば、
両の目をくり抜いて酸に漬けてくれる
誓約を破ろうと思えば、
耳を切り取り猫にくれてやる
大切な娘に邪な手を伸ばせば、
指を腐らせもぎ取ってしまおう
大切な娘を置いて逃げ出せば、
足を捻り折って目の前の脅威の生贄に捧げてやろう
大切な娘を口説こうとすれば、
その口に即死の毒が溢れ出るだろう
大切な娘の手を振り払えば、
そんな腕は肘から捻り切ってやろう
そして、大切な娘に嘘をつくなら、
首を2周捻って折り曲げてやろう
だが、
全て誠意で守るなら、呪者の命と引き換えに、
全ての厄災からあなたを守ろう』
「あーあ、私も過保護だなぁ」
ーーきゅ?
あの子の置き土産が膝の上で月を見上げていた。