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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第十二章 イグジの章 消えた王国と隠された世界
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セルテの対策

「セルテ、さっきの件だが…」

「まだダメ、追跡がいるんじゃない?」

「その通りだ」

俺たちは小声で話しながら、四人と一匹がのんびりできそうなカフェを探す。


「あそこはどうだ?」

「オープンカフェですけどどうですか?」

「いいわ、あなたの認識阻害を使いましょ。なるべく薄く、ほんの少しでいいわ」

「はい」


席につきオーダーを出した後、ステラはごく軽く、泡の膜のような術式を展開した。


「いいわ、無職で透明。光も反射しない。これがいい」


オーダーの到着まで、各々がもらった規定の書に目を通す。


「問題点を上げていきましょう。一つ目、『禁止区域への立ち入りを制限』」

「二つ目はこれか。『観光目的でも滞在はひと月以上、必要に応じて働くこと』」

「三つ目は…『武芸者は必要に応じて隊役に着く。期間は滞在王が定める』、ですね」

「最大の問題点はコイツだろ。『出国には王の許可が必要』だと」

他にも細かい規定を、セルテとイグジが目を皿にして確認していく。


「じゃ、整理するわね。この国には秘密の区画がある、軍事力の増強に努めていて、わたしたちも徴兵の対象になる。そして、最低ひと月はここに止まらねばならず、出国には王の許可が必要、と」


「昔小説で読んだ話にこんな国があったな」

「偶然ね、私もそう思ってた。そしてその国がやっていたことといえば…」

「『戦争』だな」


「どうしよう、戦いなんてしたくないです…!」

「まだセルテとステラはいい、武器を見られていないからな。だが俺たちは…」

腰に目をやる。チャラチャラと音を立てて持ち歩く自前の武器は、いやがおうにも人目につく。


きな臭いと思ったのよ、と語るセルテ。さっきの対策は何だったのか尋ねる。


「あの術式、私も師匠に教わってるのよ。だから部屋に入る前にわかっちゃったの、その意図が」

「意図っていうと?」

「真名縛り。相手に真名を渡すと、こちらの行動を制限する、ある程度操ることができる。だから真名を出さなかった」

「ファーストネームでなくてファミリーネームだったが、よかったのか?」

「いいわ。名前はその全てで人物を表す。真名を隠して会話するのにお互いに名前を間違える方が怪しいでしょ」

「なるほど、言われるままに隠蔽と認識阻害を薄く重ねましたが、そういうことですか」


「だが、偽名とばれたら追及されないか?」

「嘘をついたのではなく、『真名を隠した』の。認識の違いよ。気づかない方が悪いわ」

「水晶にも細工したのか?」

「私の合図でステラに認識を阻害させて、必要な場面だけ、イエス・ノー反対の色を出したの。だから大丈夫」

「ふえぇ、さすがです」


一定距離離れたところで私服の隊士が見守っているようだが、それ以上近寄りはしない。

変に姿を眩ませると、より怪しまれるだろう。なるべくオープンに、そういう方針だった。


この外界から閉ざされた世界で、一体どこと戦争をするというのだろうか。

しばらく茶飲み話を装いながら今後の行動について話し合い、昼を待ってこの店でそのまま食事をする。


「じゃ、しばらくは普通に観光だな?」

「それが一番ね。胡散臭いことに首を突っ込まず。いいわねステラ」「は、はい!」

「それからなるべく護衛を雇うそぶりを見せる。私たちは強くないのよってね。はい、サイト、弱いフリ」「この剣重くて持ち上げられないんだ…はぁ…」

「バカ、わざとらしすぎるだろ」

なんだかんだ、こんな環境でも俺たちは楽しんでいる。


「それから、公衆の面前での鍛錬禁止。いい?イグジ!」「なっ……!」

酒を断つよりも何百倍も苦しいぞ、それは。


「ちなみに、今俺たちの話はどんなふうに阻害されているんだ?」

「そうですね、すごく弱いから多少聞き取りづらくなっていて、頑張って聴こうとすると空耳するような感じです」

へえ、そういうもんか。


「多分サイトさん弱いフリ、は『サイトさん趣味育児』とか…イグジさん鍛錬禁止、は『イグジさん洗濯禁止』とか、そんな感じです」


「まだ独身だよ」「まて、洗濯禁止も遠慮いただきたい!」

また笑い合う。



ボロを出さないように、気をつけていかないとな。

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