収穫の夜の宴
いや、よく思いつくものだ。
その運搬能力を超えるモノの持ち帰りに、彼女はこう提案した。
「ヤシマンバの伸びる大きな胃袋をひっくり返して、肉を全部詰め込みましょう」
……。
「それでも、移動できないほどの重量になるぞ?」
「私の付与魔術、明日にはだいぶ回復しますから、それで重量を軽減しましょう」
「それならさっきここまで運ぶまでにも多少なりと使えたのでは?」
「残念ながら…今思いつきました」
「疲れ損じゃないか!」
終始彼女のペースだ。
……。
「それで、さっきはいだ皮を被せれば…」
なるほど、大きな蛇が歩いているように見せられるかもな。
……。
「その皮も、街では大金になりますよ」
「確かに、見事な柄が浮き出て、いくつもりバッグや靴ができそうだ」
なるほど、身も使い、皮も使い、余すところなく利用できるわけだ。
だがひとつ問題があった。
今晩は寝られない。間違いない。
だが…
「……。」
ステラはもはや起きているのも限界で、しゃべるために目を覚ましては、一言話すとまた寝てしまうほど疲れていた。
ステラを抱き抱え、テントに運び込むと、ものの数秒で寝息が聞こえてきた。
今日に限っては、炎を切らすことはない。索敵範囲を最大限に広げて警戒に努める。
「ほら、満を辞して役者が現れるぞ」
独り言を呟き、支度を始めた。
まずは、先ほど溜め込んだ大蛇の余分な部位を湖に投げ込む。
しばらくすると、湖に大きくゆったり、波紋が立ち始めた。
『マーブル』だ。水棲の巨大な野獣で性格は凶暴、体の一部が水から出ない範囲で水面から飛び出してくる。
陸の方でも、数十はいるであろう野獣どもが、血の匂いに当てられて集まっている。
俺も、ここでは遠慮することもない。
口の中で呪文を唱え、まずは地を這って斬撃を巡らせる。
ーーぎゃいん!
何匹かに当たった音がする。
それを皮切りに、一匹、又一匹と明かりの範囲に姿を現す。
「俺はもともと獣は専門じゃないんだわ」
言いながらも走り、確実に仕留める一撃を放っていく。
秘策はこれだ。
噛みついてくる獣を湖に落とす。
ーーガァぁぁ!
マーブルが襲い掛かり、水面に大きな飛沫が上がる。
頼むぜマーブルたち。俺とお前たちの共同戦線だ。
何があっても、この先のテントには行かせない。
そこにいく奴は生かさない。
そのために使えるものはなんでも活かしてやる。
月がやけに赤みがかって、月夜のショーを照らしていた。
赤い石が、俺に力を与えてくれたのかもしれない。三刻は優に暴れ回ったが、思念の力が切れることはなかった。
一通りの獣を切り伏せ湖に落とした後、やっとのことで口をつけた水筒から口に流れ込んだただの水は、これまで飲んできた飲み物の中で最上の味がした。




