表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第十一章 イグジの章 死者との戦い
253/294

あるべき姿

残るはステラの心と身体を再び結びつける事だった。


しかし、ここで大きな問題が発生した。




「足りない…だいぶ心の隙間が空いている。どこかに飛んでいってしまったのかしら?」


ステラから引き剥がされたアリヤの心は、ステラの体と大して変わらない大きさだった。

しかし、ステラに還ってきたステラの心は、どう見てもその半分、いや、三分の一程度しかないのだ。



だが、セルテも俺も、何ならサイトもそれほどの心配はしていない。


「きっと、世話になった人々のところへ顔を出しているんだろう。あいつのことだから」

「そうよね、自分は生きてる、本物だ!なんて主張する暇があったら、どんな冒険をしてるのか、美味しいものがあった、そんな話ばかりして帰ってくる。そんな気がするわ」


「へへ、信頼が厚いというか、ひでぇ解釈だというか…」

サイトも半分あきれている。


だが、体の方は既に寝息を取り戻し、血色も取り戻していた。あとは残りの心の帰還を待ち、目を覚ますだけだ。


白んだ空に太陽が降り注ぐまでのわずかな間に、俺たちは休息をとる。

丸二晩不眠不休で動き続けた俺たちの疲れは、今まさにピークを迎えていた。


多少なりとも回復を感じたところで、コロネが警戒を担当し、俺たちはランバの船宿へ向かった。

既にセルテも限界が近い。船に乗ると、雨水に溶けるキノコのように、グダッととろけて寝息を立て始めた。


ランバに事の顛末を話し終えると、サイトも俺も船上で少し休んだ。街までの三刻ほどの間は、記憶が全く残っていない。


街に着くとランバに感謝の酒を買って持たせる。

同じく、もう一つ買った酒は、こちらの船宿のオヤジに渡す。


「…そうか、カカァの心と体奪った奴をやっつけて、報いを受けさせたのか…」

オヤジは湖に向けて酒を煽り、少し零した。


「ほれ、久々の酒だ、美味いだろ?カカァよ、仇、取ってくれたってよ」


一刻も早く休みたい気持ちもあったが、オヤジの話を聞いてやりたい気持ちが勝った。

俺たちはしばらく思い出話の聞き手になり、それから宿に戻った。


まだ昼過ぎだと言うのに、三人とも一部屋でソファどころか床に寝転がり、そのまま眠りについた。




どれくらい寝ていたのだろう。寒いと思う瞬間もあった気がするので、そのまま夜を越して朝まで寝ただろうか。






天井が見える。明るい。

次第に意識がはっきりしてくる。

まず、固い床と俺との間に、布団が挟まっている。手を動かそうとすると、分厚い毛布と寝袋が布団代わりに掛けられていた。


寝違えたのか(まあ寝た場所が場所だからな)痛む首を動かして寝返りをしながら周囲を見ると、サイトも同じように、床に下ろした布団の上で、毛布と寝袋をかけられていた。


セルテだけは、奥のベッドで姿勢正しく寝息を立てていた。



何か、いい香りがする。


…そういえば、この二日、碌に食事を取った記憶がない。

一度空腹を自覚すると、我慢ができるものではない。


俺は身体を起こして、匂いの元を探す。




…そこには、ステラが味見をする姿があった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ