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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第十一章 イグジの章 死者との戦い
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生還の洞窟

洞窟に入る。


反射する水はとても美しい、乳白色の入った明るい青。一見して、仄暗い伝説に繋がるような場所には到底思えない。


『死者に魅入られ、直前で戻ってくる人々が最後の砦にするのがこの場所だ。ここを超えちまったらもう、戻ってこれやしない。

アンタらの大切な仲間は死者に魅入られちまって、死者の道を通って“向こう”にいっちまってるんだろ?

なら、アンタらがこの場所から呼びかけて引き戻すしかねぇ。奥に入っちゃいけねぇぞ、アンタらも戻れなくなっちまうからな』


ランバは詳しく、死者の海の伝説への対応方法を教えてくれた。


「いい出会いだったわね」

「ステラに残された時間はおそらく今日一日がそこらだろう。本当に幸運だった」

「バーカ、感謝するのはアンタら全員が無事で、かつステラ嬢を完璧に救出できた時だろうが」

「それは確かにそうね」


ふと、目の前の水中に、とても美しく泳ぐ何かが現れた。


「…くっそ、マーブルかよ!」

「チッ!」


いの一番にコロネが飛び出して、三人が武器を構えた瞬間、マーブルはゆったりと顔を水面に出した。


「…お…おい!」

「そんなことってあるの?」


ーそのマーブルは…美しい女の顔をしていた。


「お前、俺たちの言葉がわかるのか!?」


返事はない。ただ、じっとこちらを見つめたあと、そっと体の向きを変えて、俺たちの前を扇動するように奥に向かっていった。


「ついてこいって言ってるようだったな」

「そうね…でも、マーブルと意思疎通できるなんて、学会に発表したら驚かれるわよ」


俺たちは改めて、水辺の石を飛び移るように奥へ向かっていく。


不思議と敵が襲ってくる気はしなかった。


洞窟に入り、半刻ほど進むと、いよいよそれっぽい暗闇が狭く深く繋がっていた。


次第に水が多くなってきた。

これ以上は、体を濡らすのは困難、体温も奪われるが、そんな事は言っていられない。

意を決して、俺たちは水に体を漬けた。


「ぐうぅ、冷てぇぇぇ…」

「外は昼間はすごく暑いのに。半刻もつ気がしないわね…」

「行くぞ」


ザブザブと水面をかき分けて進む。


「砂漠の真ん中のこの地で、水で凍えそうになるなんて思いもしなかったぜ」

「そうですか?」


「…?」


俺たちの後ろから、聞きたかった声が、だが決して望んでいなかった形で姿を見せた。



全員が振り返って姿を探す。


見つけた。ステラだ!


…だが、その姿は透き通っていた。

明らかに、体を失ったまま、残り少ない力で出てきた様子だった。



ーもういいです。この先はみんな死んじゃう世界みたいだから、ここで引き返して。


「馬鹿なこと言わないで!」

ステラを抱こうとするセルテのの手が空を切る。


物悲しい表情をするステラ。

ーいいんです。みんなと一年も楽しく旅できた。もう、いいですよ。


「俺たちが良くないんだ。ステラなしでの旅は考えられん」

「場面が違えば告白なんだがなぁ、嬢ちゃんよ」


ーふふ…

悲しそうな顔で少し笑みを浮かべるステラ。


ーああ、もうすぐわたし、飲み込まれそう。考えがまとまらないんです…


「まって…ダメよ?ダメ!絶対駄目!」

セルテの目からは涙が溢れていた。




「あら?みんな来ていたの?」



不思議なことに、今聞いたのと同じ声が、全く別の方から聞こえてきた。

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