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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第十一章 イグジの章 死者との戦い
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違和感

「ねえ、ステラ、どうしたのかしら」

「どうした?」


それは、死者の海を見てきた翌日の朝のこと。


「この数日、寝不足っぽい感じはして声はかけてたんだけど。今日はどこかぼーっとしているというか…」


確かに、昨日は朝食を珍しく食べなかった。

彼女が食べたいものを作って振る舞うのが、我々の朝の定番だったので、体調が悪いのかと少し心配したのだが、昨日は落ち着いたというか、観光を楽しんでいたように思う。


「純粋なステラだ、『引き剥がしの岬』で聞いた物語の内容がショッキングだった、とか?」

「それはあり得る」

「だろう?」

「けどね…何かこう…違うのよ」

「…わかった、気にかけてみよう」


パーティを組む前から仲良く連んできたセルテの言うことだ、多分何かある。


「それなら、サイトにも話して様子を見てもらうか?」

「いや、サイトはまだパーティメンバーってわけでもないし、どっちかっていうと外から見ててほしいの。私たち以外の目線で何か感じるものがないか、気づいたら教えてもらおうと思って」

「何か役割があるんだな」

「ええ、まあ」

「それならそれでいこう」


次の目的地、死者の海の対岸を目指すための支度をしながら、ステラの様子をチラリの見る。

小気味よく、彼女の故郷の鼻歌を口ずさむ様子は特に変わりなく思う。


「あはは」

「うお、急にどうした?」

「あ、いえ、とっても嬉しいことがあったんです」

にっこりと笑顔を向けるステラ。

「…そう、とっても。ね」



支度を整えて、サイトと合流する。

「今日は対岸か。任せな!船と陸路どっちがいい?」

「マーブルがいるからな…陸」「船がいいです」

「あら?船はしばらく懲りたって言ってたじゃない?」

「そうでしたっけ?」


…確かに、いつもと少し様子が違うようにも思う。


「マーブルはどうする」

「きっと大丈夫です」

少し冷たい笑顔が引っかかる。だが、何か考えがあるようだし、彼女の敏感な何かでこれまで何度か危機を回避してきた実績もある。

セルテと顔を見合わせる。


「まあ、あんたがそう言うなら船で行きましょう」

「はい!楽しみです!」

「よし決まり。じゃ、この辺りで有名な腕利きの船宿に行くぜ」

「あんた色々詳しいわね」

「興味あることは調べないと気が済まないタチでな」

「…納得」


船宿までは徒歩だ。街の中からすこし外れ、湖沿いを少し歩く。

青と白が混じったような明るい色合いの湖面は、生命感のかけらも感じられない。


「マーブル以外の生物がいないのに、ここの船宿はどうやって生計を立てているんだろうな」

「そりゃ車両や漁業しゃなくて運搬の方だろうよ。何もこの湖の観光だけでこの街は食ってるわけじゃない。むしろ商業の方が盛んだからな」

「そうか、言われればそうだったな」

「この湖の向こうに交易があるってわけね」


対岸を指差しながら、サイトがいう。

「あっちの方面にはまた全然違った、雨の豊富な地域がある。食い物はそっちから来るぜ。アンタの好きなコーヒーもそっちが生産地だ」

「あら、コーヒーってこっちの方で作られてるのね」

「野蛮な国です」

「ん?」

「ほら、あちらは文明のぶの字もない国でしょう?みんな農耕具もなく森の中で果物や芋を掘り出して素焼きで食べるっていうし。ある意味興味が湧きますけど」


その一言で、セルテの投げかけた疑問が確証に変わる。

ステラがそんなことを言うはずがない。

だが、しばらくは見守ろう。

そうセルテと打ち合わせをしたからだ。



「そうか。この伝説の謎解きがひと段落したら、行ってみてもいいかもな」

「そうだな、向こうに行くとカワイイ服もあるみたいだぜ?男にゃ刺激が強いけどな」

「ちょっと!何着せる気よ!」

「ビキニアーマーつってな、軽さの限界を突き詰めた女の最強武器が…いってぇ!」

「ステラに何着せる気よ!」

「セルテが着るって線も…」

「バカ!アンタらバカっ!」



いつもみたいに楽しそうに笑うステラ。いつも通りなのに、何かが違う違和感。

一度気づくとどこか気色悪く、どうしようもなく不気味に感じる。パーティメンバーにこんな気持ちを向けている自分にも嫌悪しながら、様子見を続けるのだった。

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