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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第二章 イグジの章 新しい日常
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ヤシマンバ遠征⑤

二日目。


昨日一日木の上でギシギシ揺すられていたデコイに、今日もまた酒と石を仕込む。

あと何度、これを繰り返すとヤシマンバがやってくるのだろうか。


昨日と同じように飛ばされてはかなわないので、俺も少し時間はかかったが、木を登ってみた。足場さえこしらえて行けば、意外になんとかなる物だ。


昨日の反省として、ステラが起きてから構えるまで時間がかかりそうなので弓と矢を事前に用意している。

俺の方も、最初こそステラに密着することに狼狽えはしたが、今はどちらかというと、冷たい等身大人形を半日抱き抱えることと、姿勢を直せないことに負担を感じていた。つまり、腰が痛い。


それと地味に、排泄が我慢できない事が困る。 いかんせん、腹が冷えるのだ…。






さて、またステラが冷たくなって数刻。街では昼や食事の片付けでもしているだろう頃、事は動いた。


ーーカシュルルルル…


耳を澄まして方向を確認する。


ーーカシュルルルル…


間違いなく、こちらに向かっている。というか見えている。

警戒しているのか、獲物に勘付かれないようになのか、蛇は左右に見切れながら少しずつ距離を詰めてくる。


「ステラ、来たぞ」

耳元で囁くと、夜の寝起きとは異なりスッと目を開く。

「ありがとうです。湯沸かし時間、引きつけます」


まだ手足の動きが鈍いのだろう、俺から離れようとしてもなかなか思い通りに体が動かないようだ。


俺の方も、ステラが退いた分姿勢を整えて、まず腰を捻る。体の中心からボリボリと気持ちよく音が響く。


ーーカシュー


しまった、その後で勘づいたか、蛇が動きを止めてしまった。




2人ともピクリとも動かず、奴の様子を見る。


ーーカシルルル…クルル…


よし、デコイの前まで来たぞ…。


いけ、よしよし、酒のついた鳥の下半身に鼻を擦り付ける。



気がつくとステラが弓を2本、つがえて構えていた。

俺も剣に手をかけ。口の中で呪文を詠唱する。


2人で見合わせて頷くと、ステラが早速動いた。


ーーキリキリ…ッ

音もなく放物線を描く矢は、風の動きとは考えられない軌道を描き、二対の目に突き刺さった。


ーーキイイイイ!

蛇が鎌首を広げ警戒感を露わにする。

口を開き、毒牙を立てた瞬間を狙い、俺も斬撃を飛ばす。

まず2つ、目の横にある、耳に当たる箇所。


暴れる蛇。そのパワーはデコイのあった木をへし折ってしまった。

蛇は頭を振って毒を撒き散らしている。

どれほど強い毒なのか、周囲からは強烈に鼻をつく刺激臭と湯気が出ている。


「イグジさん、眉間狙ってください!」

「任せろ!」

二撃目で注文通りの眉間に深い袈裟斬りの斬撃を放つ。


ステラが立ち上がる。俺は走り出す。


隙を見て間合いを詰めて、風を纏わせた刃で首から後ろを切ろうとするが、皮膚が硬く刃が通らない。

毒液が身を掠める。


「あぶねぇ!」

達人の剣なら太刀筋も読めるというものだが、野生の獣だとそうもいかない。


「指示をくれ!」

「口の端の筋肉を切ってください。口が閉まらなくなります!毒もそこの筋肉使って出しています!」


注文に応える事にする。

とはいえ、毒牙のすぐ横だ。間合いも遠い。緊張する。


ステラが正面で囮になっている。

目を抜かれ、感覚器をやられた蛇が最後に使う感知器が舌だ。

舌を伸ばす瞬間、俺が切り落とす。俺は地面に落ちる。受け身を取って起き上がると、蛇が背走を仕掛けるところだった。


「イグジさん急いで!」

「おう!」


全速で蛇を追い抜き、口の端を切り裂く。のたうつ獲物にとどめを入れる。矢の刺さった既に見えていないだろう右目から、その向こうにある脳に目がけて、全力の突きを射出した。


おそらくそれが決め手になったのだろう、手負いの大蛇はそのまま臥せて動かなくなった。

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