二人の買い物デート
滞在二日目。宿の洗濯サービスをお願いして、衣服を綺麗にしつつ、セルテさんと買い物へ。
やっぱり、旅先の買い物って素敵!
自分が普段着られない衣服、見たことのないアクセサリー。
会ったことのない動物、そして食べたことのない食事。
セルテさんと二人で、思い切り楽しもう!
…気配はまた近くにいる。というか、だんだん存在感が強くなってくる。
セルテさんと、そこは相手しないって事で、警戒だけしながら様子を見る。
「あ、ほら!あそこの服屋!」
「良いですね。深い緑ってセルテさん普段着ないから…着てみましょうよー!」
「緑か…良いわね、着てみましょ」
お店の中に入り、試着をお願いする。
「あ、近くで見ると胸元に草の紋章が入ってる!かわいい!」
「へー…腰の絞りが結構タイト…かなぁ、ステラ、着てみたら?」
「へっ?いやいや、私にはこんな上等なワンピース、無理ですよー!」
「そんな事ないって。ほらほら!似合うよ絶対!」
セルテさんに押し切られ、私は仕方なく試着室に入る。
ほら、これも深いスリットが入ってて、えっちな感じだよ。
ほら、セルテさんたら。こんな大人っぽいの似合わな…くもない?
「んー。思ったより、良いかも」
独り言を呟き、ポーズなんてとってみる。私、こんなに頭小さかったっけ?
「どう?思ったより自分が大人っぽくなってて驚いたんじゃない?」
「…はい。絶対似合わないと思ったのに…」
「この一年、大人の女性として成長してきているんだから当然でしょ」
そっか、私、ママやセルテさんみたいな大人の女性に近づいているんだね。
…ママは年齢とか全く関係ない、美しさだからなぁ。セルテさんも彫刻かと思う顔立ちだし、全然比較対象にならないけどさ。
服を脱ぐために、また試着室に入ろうとすると、セルテさんに止められた。
「もうその服買ったわよ。似合うんだから堂々とその服で街中を歩きなさいな」
「ぶえぇ、なんかごめんなさい!」
「いいからいいから」
結局言われるまま、いつもの服はしまっちゃって、この緑のワンピースに合わせて靴も羽織着もコーディネートしてみる。
鏡の向こうに、なんだか見覚えある顔立ちの大人っぽい誰かさんが微笑んでいた。
くるりとターン。裾がひらめき、とっても美しい。私がじゃないよ?
ふふ、いいな、この服、気に入ったかも!
「ほら、まだまだいっぱい用意してるんだから!」
そう言ってセルテさんがごっそりと抱え込んだ服を、私に押し付けてくる。
「きゃー、こんなに着てたら終わらないよ!セルテさん、三着に絞りましょ!三着!」
二人でうんうん唸りながら、なんとか絞り込みをすることができた。
逆に、セルテさんにも似合いそうな服を検討してみる。
セルテさんはだいたい、鮮やかな原色系かシックなモノトーン、もしくは暗色系。私としては白との中間色のパステルっぽい色合いを試してみたかったんだよねー!
淡いピンクのカジュアルなジャケットに少しゴワッとしたパンツルック。可愛い男の子みたいな感じの帽子を被せて。ポケットに手を突っ込んでみたら完璧!
「ふふ!やっぱりセルテさん、可愛いー!」
「ちょっと!やめなさいよ」
いいの。この言い方しているセルテさんはまんざらでもないはず。
また着替えて、今度は黄色のロングドレス。
なるべく肩と腕を出して、片耳に髪を掛ける。
「ふわぁ、えっちっぽい超美人お姉さんの誕生…!」
「こんなドレスなんていつ着るのよ」
「今ですよ、今!」
ふふ、これは私の奢り。
見ていないうちに会計しちゃうんだから。
それで、他にも何着か、お互いの買い物をしてから宿に戻る。
まだ夕方にもなっていないけど、なんだかとっても眠たいの。
きっといっぱい買い物して疲れてきちゃったんだよね。
ベッドに入ってすぐ、私の瞳は重く閉じていくのだった。