サイトさんとの旅
「ご無沙汰してました!」
「結構早い再会だったな」
「全くだ」
イグジさんとサイトさんは、何か男臭い再会のハイタッチをしていた。
「てっきりもっと遠くに行ったもんだと思ってたけどな」
「色々あってね、このあたりをぐるりと周回する羽目になってたのよ」
「へー、じゃあ、この先のエル・ブランコの街にも?」
「私たち、そこでしばらく滞在してましたからね」
「…この辺、色々大変だったらしいな」
そう言って、橋を見上げるサイトさん。
この橋、私たちが掛けたんだよ、って言いたい。声を大にして言いたい。
「だいたいその『大変』の大半に関わっていたと思うぞ」
「そうね、本当に…」
「サイトは街道の北西にある森が霧だらけなの知ってるか?
「ああ、『迷いの森』だろ?みんな入らないって有名だぞ」
「そうなのか、俺たちは知らなかったからな、入ったらワヌルだらけだぞ、あの森」
ふふ、やっぱり、イグジさんはサイトさんと絡むとお喋りになるよね。
「で、アンタは何でこっちにいるの?西の方に商隊キャラバン捕まえに行くって言ってなかった?」
「いや、それが、ちょうど捕まえたのがハンドの街向かう集団でな、出戻りになっちまって。まあ、良い稼ぎになったんだけどな」
そう言って、腰元の曲刀を自慢げに見せてくれる。
「…そういや、イグジ、アンタの武器はどうなったんだ?」
「…見るか?」
あ、イグジさん、自慢したそうな顔してる!
イグジさんは長刀を渡す。
「そうか、剣、辞めちまったのか…」
「その刀身よく見てくれ」
「…なるほど、剣士より剣にこだわったんだな」
「これが存外、俺にあっているようでな。手合わせするか?」
「いや、俺の剣の技術じゃ瞬殺されちまうだろ?」
子犬のようにしょぼんとするイグジさん。可愛い!
「で。ハンドの街に戻ったら、南に突然大河ができた、今度は噴火だ、ってな。見送った仲間の行き先にそんな事が起こってるんだ、びびるだろ?」
「じゃあ、私たちを心配してくれて?」
「…悪いか」
「いや、いい。あんた最高だよ!」
照れるサイトさんに飛びつくセルテさん。サイトさんたら、顔が真っ赤だよ!
「てことで!無事が確認できた訳だが…さっきから気になってたんだが、この橋の名前…」
「気づいちゃいました!?」
思わず飛びついた。
もう、すぐ語り始めたね。一刻半ほど語ってやったね。
エル・ブランコの街に、共に向かいながら、私たちは話す。
「ハードな旅だなー。そんで、あの橋を完成させたってか」
「もうね、みんな泥だらけよ。色気も何もあったもんじゃなかったわ」
「そうだな、セルテもステラも、真っ黒になってな」
「イグジさんだってひどかったですよ!」
私たちの冒険を、楽しそうに聞いてくれる。
飄々としている割には、とても人懐こくて、優しい。
私たち三人とも、すっかりサイトさんのことが大好きになっちゃったね。
快適なテントにも入れてあげて、美味しくご飯もご馳走してあげて、一緒にエル・ブランコの街に向かうこと数日。
この前、みんなで水浴びした川を渡り、もう少しで街に着く。
「あのさ、アンタら、この先はどこに行くか決めてるか?」
「いや?」
セルテさんが答える。
「まだ特に決めてないわ。こんなにとんとん拍子に進むと思ってなかったのよ、今回の旅。しばらくのんびりしようかと思っていたんだけど」
「じゃ、早めに次に行ったほうがいいぜ?この街から南の砂漠は、向こう三ヶ月はひたすら光が照りつけて雨が降らない時期になる。まだ辛うじて雨が降るうちに抜けちまったほうがいい」
「ええ!そうなんですか?」
「それに、今なら俺がついてくるぜ?」
そう言って、サイトさんは笑顔を浮かべた。