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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第二章 イグジの章 新しい日常
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ヤシマンバ遠征②

それは、世の中では『精霊の悪戯』と言われるもので、純粋で清廉な少年、少女の枕元に精霊がやってきては夢見に立ち、一時の交流を楽しむとされる事象であった。


もちろん自分自身受けた記憶はない。


周りで受けた話を聞いたこともない。


特に悪いこともないので何ともない話ではあるが、まあ、15の少女(世間一般では成人の儀が14なので、一応成人とはされるが)が受けるくらい、ステラは純粋な奴だということだろう。


しかし、深夜に寝ぼけ眼で起き上がる、透けるほど白く美しい肌を出して寝入る娘の個別の空間に入り込むという罪悪感は恐ろしいほどのものである。


大丈夫だよな?

何度か赤い石に尋ねるが、一応お許しは得られたようだった。


10分ほど頭をくらくらさせながら、少女は着替えを行ったようだ。

もちろん覗いたりなどしない。


しばらくすると、意識が覚醒したステラが着替えを終えて出てきた。


「すみません、遅くなりました」

「いや、いいんだ。よく寝られたか?」

「いい夢は見てた気がします。私寝相が悪くて木から落ちないか心配してましたけど、意外にいけるものですね!」

…自覚はないようだ。


「さ、私、代わりますね」

「頼む。俺も一休みしよう」


テントに入らず、その横で枝に座り、幹に寄りかかると程よい眠気がやってきた。


ー夢をみた。

セルテが大鋏を持ち、笑って近寄ってくる夢だった。


「はっ!」

冷や汗がものすごく出ていた。


たった一瞬の夢だった気がするが、気がつくと周囲は明るくなり、ステラの姿はなかった。


一瞬の緊張が走る。



まさか…と周囲を索敵するが、近くに危うい気配は感じられない。

少し遠くでバシャバシャと水を叩く音がする。


ステラが襲われて応戦しているのか?


少し緊張して身を隠しながら距離を詰める。


…いや、問題ない。ステラが身体を洗っているようだ。

問題ないとわかれば、近くにあることの方が大問題だ。信頼を失う前にテントに戻る。


朝露で少し湿った倒木を椅子にして、消えかけた火を起こす。

俺の魔術は風属性なだけに、こういう時は便利だ。


「風の精よ、力を貸してほしい。我、其方に礼を尽くさん。一巻きの風にて炎をくすぐり、水の精の息吹を拭いたまえ。我が身の魔力を糧に、我が身を通り道に、我が手の先に、奇跡を求めん。いざ」


心の臓からめぐる血と共に体の隅々から思念の力を手に集める。


右肩から右肘、そして指の先へ、風が吹き抜けるのを感じ、威力を調整する。そよ風の一つ上の力で、効果範囲に絞りをかけ、新たにくべた薪の下の炎に充てる。


ーーフォォォ


風と共に、炎が湧き上がり、しばらくすると薪に炎が燃え移った。




ステラが戻ってきた。

なぜか半裸だった。


セルテよ、これでどう理性を保てというのだ。

呆れながら目を隠してステラに服を着るように頼む。


「すみません、うっかりしてました!」

「本当に勘弁してくれ」

自分でも心の臓の早打ちがしんどい。相方にも早く常識を身につけてもらわないと、俺の心臓が壊れるか、セルテに壊されるかどちらかの未来しかない。




朝食の後は、いよいよ作戦を始める。

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