プロデューサー・ステラ④
「よう、テント下取りして買い替えできるって話聞いたけど本当か?」
…ついに、本職の冒険家が現れた!
「ステラ、何やったの!?」
「えへへ、問屋ギルドに通い込んで、張り紙と案内をしながら、出入りする業者さんや冒険家の人、旅人にできるだけ声をかけたんです」
とんでもない努力をサラリと言ってのける。
それがあの外出の理由だったのね…!
「で?俺も下取りってのはよくわからねえんだが…」
「今持っているテントを買い取るってことです」
使えるテントが壊れるのを待つんじゃなくて、買い取って次のテントを売る。
これも今まで聞いたことのないやり方だった。
「そして、買い取ったものの中で使える部品や素材を取り出して再利用することで次の仕入れを抑えるんです」
ジットとお客のやり取りを見守りながら、ステラは私にそっと耳打ちする。
「確かに、魔力素材なんかそんなに消耗してなければ捨てる必要ないもんね…頭良いわね」
「当店の基本の売価はこれです。オプションとして、追加費用をいただくことで素材を強いものにしたり、虫除けを付加したり、防腐、防カビなどの防水処理したりできます」
なるほど、料金のシンプルな設定って分かりやすいわ。
「へえ?じゃあこの金額の中で買うなら?」
「用途に合わせておすすめプランを用意しています。どんな使い方をしていますか?」
「砂漠には行かねえ。北の森と南の草原がメインだな。期間は大体数日」
「でしたら郊外探索パックがおすすめです。認識阻害と軽量化、耐久強化、それに防水処理をして、160アンブになります」
ここで客の顔が曇る。
「…予算超えちまうな。この街でその金額あれば一ヶ月食っていける。思い切れねえな」
「ですが、開店特典で『メンテナンスパック』を同時購入の場合、本体は150アンブで購入できます」
「なんだそのパックってのは?」
「はい。この町での新しいサービスで、ご存知の通り、付与の効果は長くても一ヶ月くらいで切れちゃいますから、10アンブのパックを購入してもらうと、通常オプションと同額の追加施工費を半額で再度付与したり、壊れたところを一定割引で修繕します」
「なんだそれ!?めちゃくちゃ得じゃねぇか!」
「さらに…パッと見たところ、このテントなら5アンブで買い取れますから160-10+10-5=155アンブ、いかがですか?」
もう驚くほどの即決で、私が客役をやった練習の通りにテントが売れていった。
テントの購入特典として革のバッグも渡して客を見送る。
客が見えなくなると、ジットとニーナは喜びを爆発させた。
そりゃ嬉しいよね…!私だって泣きそうよ。
でも、それに止まらなかった。初日だけで8セット。金額にして1500アンブ。それに細かい売り上げを合わせると、2000アンブに迫る売れ行きだった。
「やったじゃない!これだけ売れれば月末、クリアできるんじゃない!?」
私も少しは協力できたと思うと嬉しい。
そう思ってステラを見ると、ステラは予想外に暗い顔をしていた。
「ダメなんです、これじゃ…。初日の売り上げとしては低すぎる」
驚く私たちに、ステラは説明をする。
「開店効果が一番高いのは初日です。二日目以降はだんだん街の景色に馴染んでいき、気を引かなくなっていきます。今日の時点で月末の予算をクリアできればよかったんだけど…そうは行かないですね」
「目標が高いわね…ジット、溜まった返済額と生活費合わせてどれだけ必要なの?」
「それは2500アンブくらいは…」
「毎月の返済額は?」
「毎月300アンブを十年の約束で、うちあと八年残っています…ひと月に三つテントが売れれば、と思って契約したんですが現実は厳しくて…
さっきまでの喜びはどこへやら、しょぼんとするジット。
「なるほど。あんたの生活費が100アンブとして、八ヶ月も支払い待ってもらえていたのが良心的ね…」
「そうなんです。できれば滞納を払い切って、さらには繰上げて月の負担額を下げておきたいんですよ」
「繰上げなくても手元にお金があれば余裕にもつながるわよね」
「…はい」
ジットが頷く。
「まあ、そこで次の手が私たちにかかってくるんですけどね」
そう言うと、またステラは悪戯っぽく笑顔を見せた。




