プロデューサー・ステラ①
「これでいいか?」
「はい、大丈夫です」
驚いたことに、この街はまさに、砂漠との境目にある。
ハンクスたちは、もうこの砂漠に挑んだのだろうか?
ハンクスの一団を懐かしみながら同行する私とイグジを尻目に、今ステラがしていること。それは…
ーヒット!かかりましたよー!
釣りだった。
と言っても、釣るのは魚ではなくて、かなり大きな蛇。大蛇なのだけど。
糸というにはいささかゴツい、紐の先に鳥一羽の肉を仕掛けて放置。すると、砂の中から奴らが現れて食いつく。
タレスタナスという、模様の綺麗な大蛇。人の倍ほどの大きさで、人を襲うほどではないけど家畜を攫う厄介者。
それをイグジが狩っていく。
効率よく狩っては肉を問屋ギルドに納め、皮は引き取ってくる。
繰り返すこと三十匹。
まる三日かけて集めた蛇の皮を、ステラは丁寧になめして乾かしていた。
「で?説明もなく蛇の討伐にお付き合いしたわけだけど、この蛇どうするわけ?」
「はい、これがジットの店の目玉になります」
「へえ?」
まあ、また何かするんでしょうね。
いきなり借り家の裏庭に現れた蛇の皮たちは、最初こそ周囲を驚かせながらも次第に受け入れられていった。
蛇の皮は伸縮性に富み、革加工に適している。ということらしい。
せっせとジットの店の横に併設された工房に運び込み、何か悪巧みをしてきている様子だった。
こういう時のステラはとても輝いている。
最初はステラをライバル視していたニーナも、少しずつその辺は受け入れつつあるようだった。
…とはいえ、まだステラが手を出してから一組も客はきていないようだったけど。
「お店、一度閉めましょう」
次のアドバイスもなかなかぶっ飛んでいた。
ジットは最後のチャンスと捉えているからか、とても素直に指示に従う。
「わかった。いつから閉めるのがいい?」
「来月末の支払いまで50日割ってますからね。今週いっぱい告知してセールを来週実施、少しでも在庫を削ってから来月中旬まで閉めます」
「え?たった半月で1000アンブ稼げるの?」
正直、私も半信半疑だっての。
「高く跳ぶためには助走も必要です。その間に色々やりますからね」
そう言うステラは自信満々だった。
そう言うと、派手な看板で『改装閉店』と言う看板の設計図を下書きし始める。
ニーナが顔を出して、また心配そうにステラに詰め寄っていた。
イグジはそんなやりとりすら、楽しそうに眺めていた。
最近相手してもらえない私とコロネはお互いに慰め合う。
ま、やる気を出したステラを止めるなんてどうせできないからね。
私たちは私たちで、ステラにお呼ばれする以外は砂漠に出て色々と食材を探す。
砂漠って、砂の海だと思っていたけど、そんな砂丘は多くなくて、粒の大きな石混じりの砂利と乾いた土が延々と続いているような印象だった。
昼はとんでもなく暑くなる代わり、夜は北の真冬よりも冷えてしまう。だから、狩りをするには朝から出て夕方には帰ってくる。
夜になると人間の何倍もある虫が人を襲うとも聞くので、尚更注意しながらね。
そんな生活がさらに半月。
ジットのお店はあっという間に営業を止めて、改装に入った。
ニーナの心配顔はまさに最高潮。
ちゃんとどうにかしないと、刺されるんじゃないかしら。
改装中の店内は、イグジと私も協力して色々とやっていく。
なんだか、私まで楽しくなってきた。




