買い物?買わされ物?
「私、ジットの家の隣にいたから、いっつもジットに遊んでもらってて…彼の方が三つ年上なんだけど、全然年上ぶらなくて、私に合わせて遊んでくれたわ…お父さんもお母さんも素敵な人たちで。だから、亡くなったって聞かされて驚いたの。彼、お店を継ぐために十四で修行に出るはずだったのに…それもやめてお店を継いで…」
目から涙がこぼれる。
「ジットの両親が亡くなってから、彼、どんどん追い込まれていくの…でも、食堂と小売じゃ商売が違いすぎて何もしてあげられないし、私みたいな小娘じゃ、もうどうしたらいいか…!」
…ははーん。
「私も一度関わったからには、ちゃんと結果が出るまでお供しますよ」
「…」
「ニーナ?」
「あなたには別に…」
ふーん?
「ねえ、あんた、あいつの何?ただの幼馴染?」
「ただのって何!?」
「?」
ニーナもだけど、ステラもまるきり理解せず首を捻っている。そういうところだぞ。っと。
「…ま、いいわ。ねえイグジ。ここまできたらちゃんと協力しましょ?」
「今更だな」
「ねえ、ニーナ?この街で、今私たちは二つのものを探してるの。一つは私たちみたいな冒険をする人が仕事を求める場所。斡旋所みたいのがあるのかしら?」
「そうですね、この街だと問屋組合がギルドを運営してるわ」
「ありがとう。じゃあ、もう一つ」
「はい?」
「ジットの問題に首突っ込んじゃったから、街にある程度長期である必要が出てきたの。一ヶ月単位で家を借りられるようなところや安い宿屋ってあるかしら?」
「それなら、うちの母に聞いてみるわ」
「お願いね」
ニーナは早速カウンターから一度姿を消す。
「いくつくらいかしら?」
「多分、私と大差ないですね」
「そうよね。でも、あれでちゃんと女してたわよ?」
「失礼な!私もですよう」
「あんたはまだまだお子ちゃまなのよ」
私が言っている意味、わかるかしら?解らないわよねー。
しばらくすると、ニーナがまたやってくる。
「知り合いのおうちが持ってる空き家を紹介するって!お金も安くしてくれるからいいって!」
「ホント!?」
とんとん拍子すぎて怖いわね。
「私たちはこれからまたジットのところに行って、もう少し今できる事を詰めてるわ。だから…」
「わかった、母の手が空いたら一緒に行くね。ジットのこと、お願いします」
ニーナは私たちに向かって、深々と礼をする。
でも、ステラに対してはそれができないようだった。
店を出て、とぼとぼと歩くステラ。
「私、ニーナに嫌われてます?よね…」
「あんた人に嫌われるって事がほとんどないもんね。でも、嫌ってるんじゃないわよ、アレは」
「じゃあなんだっていうんですか?」
「自分で考えなさいな。そしたら少しは大人の女に近づけるかもね」
「だから私は十五の立派なレディですってば!」
話しているうちに、ジットの店に戻ってきた。
「ただいま戻りました!」
「美味しかったわよ、あの食堂」
「おかえりなさい。それは良かった!」
ジットはその間にいくつかプランを作っていた。
「こんなのどうかな?」
「えーと?『タスクル工房製品ご購入特典以下のサービスが受けられます。①虫除け加工②防腐処理③メンテナンス一年フリー』すごいじゃない!これならお客さん来るわよね!」
と振り返ると、ステラはまた渋い顔をしていた。
「サービスが良すぎます。これからの収入源のメンテナンスもフリーにすると利益にならず、イチャモンばかりつけられちゃう」
「…あ、そうか!」
「だから、特典は『他に手に入らない限定品』とか『今だけプラス一品何かをプレゼント』とか、『メンテナンスパック同時購入で本体割引』みたいな方がいいと思うんです」
ほぇー、確かにそうね。
私はただ感嘆するばかりだった。
ものを買ってもらうのに、そういう意図があってサービスってするもんだったんだ。
私は深く考えず買っていたけど、私の買い物も、もしかしたら販売者の意図にうまくコントロールされていたのかも…。
「ありがとうステラ!君のアイディア使わせてもらうよ!」
そう言って手を取るジット。
ちょうど、母を連れてきたニーナの目の前だった。