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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第二章 イグジの章 新しい日常
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ヤシマンバ遠征①

山猫のマスター(ステラに「店主でなくマスターとちゃんと呼ぶように」と指導を受けた)とセルテに数日戻らないかもしれない旨を伝えて、俺たちは街を出た。


マスター(アレは第二の父だ。間違いない)を引き剥がし、セルテも非常に心配そうにしていたが、どこかサラッと送り出してくれた。

結局時刻は朝十の刻を過ぎ、昼近くからの出発となってしまった。


俺の装備はあえて仰々しい鎧から身軽な革鎧へ変えておいた。元々の装備は一旦セルテの部屋に預けてある。

それはそれで、護衛の仕事を受ける可能性もあるからな。


そして、背中には大きなリュック。バックパックというもので、行商を護衛した時に下働きが身につけていた。


ステラが付与魔術をかけてくれているため、重量は8割減。耐久や自分の防御にも何倍もの効果をかけてくれた。


現場までは五刻とのことだったが、とんでもない。

道のない森の中を彼女は重力がないように音もなく進んでゆく。

ついていく俺は死に物狂いだ。


だが、彼女も体力があるわけではないため、安全が確保されたポイントポイントで休憩をして進む。

1人ならこの中を三刻半で藪漕ぎできるのか…。

早速彼女を尊敬するポイントが増えた。


ほぼ道程を終える最後の休憩場所は、突然目の前に広がった湖のほとりだ。

索敵と警戒を広範囲に広げるが特に問題はなさそうだ。


湖から多少距離をとり、地面から離れたところに拠点を設置する。


「私の弓、こういう時に重宝するんですよねー」

「威力だけではないからな」


現場調達の植物の蔓で作った紐を結んだ矢を、上に向けて緩やかに放てば、枝を越えてまた落下する。こうして木の太枝にかけた紐を、太い蔓へと結び変え、手繰っていく。そこに布をかけ、幹の分かれ目を足場にテントを作っていくわけだ。


狭いテントを二つ構え、今日はここで作業を打ち止めた。




火を焚き、付近の野獣に存在を知らせる。

しばらくすると、日が落ちてきてあっという間に暗闇の世界だ。


今日は特に何かを狩った訳ではない。簡素な食事を予想していたが…

「途中シャクセン見つけたんですよ」

と、ステラがナイフで器用に薄くスライスすると例の甘辛いタレをつけて渡してくる。


「美味いな」

程よい辛みと複雑な味わい。

乾パンに合うかはさておき、即席スープとおかずまで揃い、なかなか充実した食事になった。




「じゃ、お先に失礼します!」

2人パーティだと、不寝番が辛いところだ。

特に危うかろう、宵の口から夜半過ぎまでは俺が受け持つ。

ステラはその辺の割り切りが見事で、寝ると決めたら速やかにテントに向かった。


火は落とさない。だが、明かりに慣れると視野が極端に下がるため、火から少し離れ、木の裏で暗闇に目を慣らしながら索敵し続ける。


遠巻きから四つ足の群れの目がこちらに向けて輝いているが、近寄るでもなく様子を見ているようだ。


幸い特に何事もなく、深夜三の刻を迎える。

テントに入ることを躊躇うが、意を決してステラを起こしにいく。


そこにはーー





見えないものにほっぺをむにむにされつつ、クスクス笑いながら寝ぼける少女の姿があったのだった。

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