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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第二章 イグジの章 新しい日常
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保護者の承諾

街に戻ると辺りは暗かった。


牙兎の肉、マルカの魔力石を2人で納品し、広場のボードのお互いの枠を取り外し、新しい依頼紙『イグジ&ステラの食材調達、護衛・高難度も検討します』を貼り出した頃には、すっかり死神が獲物を探す時間になってしまっていた。


もう酒場でもオーダーストップに近いだろうに、山猫の酒場は煌々と明かりが灯っていた。


ーーキイッ


「ただいま戻りま…」

「ステラ!大丈夫だった!?」


ステラがものを言い終わる間も無く、セルテが出迎える。


ーーきゅっ


ステラのマントのフードから、例のマルカが顔を出した。


「なに?なになに?ひえっ!」

セルテが少し驚いて引き下がる。


「ああ、この子、今回の依頼で訳あって連れてきたんですよー」


セルテは何やら固まってしまった。ステラは意に介さず説明を続ける。

少し間があって、なんとか事情を飲み込んだらしく、やっといつものセルテに戻ったようだった。


「まぁ、あんたのすることに驚いていたらきりがないからね」

溜息と共に、セルテから目線を外し、俺に視線を向けてくる。


「…ちゃんと約束、守ってくれたんだ。ありがとう」

これまでと違い、笑顔(初めてじゃなかろうか)を向けて礼を寄越した。


「守るも何も、こちらに拒否権はなかったがな」

苦笑いだ。


「あの守りを見てみてくれる?」


そう言われて、例の石を取り出すと、黒の斑は消え失せ、燃えんばかりの深い赤い光がぼんやりと灯っていた。


「この守り、持ってれば即死レベルでも身代わりになってくれるから。ちゃんと約束を守ってくれた代金」


そう言うと、ランタンに照らされ美しい笑顔を見せた。


「ちなみに、俺が約束を守らなかったら?」


「そうね、今あなたの胸に穴が開いていなくて、両目が見えていて、耳がとれていなくて、指がもげていなくて、足が揃って前を向いていて、口から黒い毒を噴き出していなくて、肘の曲がる向きが正しくて、首が2周捻れていなくて、つまりまともに生きているってことは、あなたが一回もステラを裏切らなかったって事かしら」


サラリととんでもないことを言う。


「…君には絶対に真名を打ち明けられないな」

「もう知っているかもよ?」

妖艶な微笑みを浮かべるその目は冗談とも本気とも読み取らせてくれなかった。


そんなやり取りをしている間、ステラは常連のオヤジどもにマルカと共にもみくちゃにされていた。


で、肝心な報告だ。自称保護者の2人には、ちゃんと説明をしておくべきだろう。


「すまない、報告が遅れたが…」

「正式にパーティを組んだんでしょ?」


2人とも、仕事の手を止めず顔も向けず、まるで知っているかの様子だ。


「ステラは誰でもなついちまう奴だがな、人を見る目は人一倍確かだ」

「そうそう。ここに連れてきたの、あんたしかいないんだよ」

「だから『実力は折り紙付き』で『人格も確か』なら、ステラの相棒になっても認めてやるしかねぇやな」


まるで竜に娘をとられたかのように、諦めのついた顔をむける店主に、笑顔を向けるセルテ。

いや、あんたら赤の他人だろう、とは言えない雰囲気に、言葉を紡ぐことができなかった。




「で? ボードの告知も連名に直して、しばらくはここで活動するんでしょ?」

一息ついたセルテが問う。


「そうなの!イグジさんはイグジさんの探し物、私は私の探し物があるからね。ある程度余裕ができて、この町で見つからなかったら、後々はここを出ていく…でもやだなぁ」

マルカと戯れるのをやめ、急に萎むステラ。


常連のオヤジどもを追い出した店主が戻ってきた。

「お前たち、お互いの探し物はちゃんと教えたのか?いざ見つかった時に、相方が知らずに素通りってわけにゃいかないだろ?」


「そうだよね。私の探し物は[私の正体]だよ。私が拾われる前、どこで生まれて、どうして捨てられて、どんな両親がいて…とにかく、そんな感じ」

「俺は…[竜の正体]を求めている。実在は間違いない。あいつらが一体何なのか。その真理を求めていきたい」


「ふーん、イグジ、それなら正解かもしれないよ」

カウンターチェアに腰掛けていたセルテが口を開いた。


だが、それ以降の続きは語ってはくれなかった。

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