エバフの流行りの酒場にて
魔王も勇者もいない世界で、自分の出生の秘密を探る少女の、そこそこ危ない割に呑気な冒険の記録。
ある星の、筒型の地図の基準点から西に2目盛。
ほぼ東方の極地と言われる「東方の栄都エバフ」の北側の裏路地に、その少女はいた。
少女?だろうか?
旅には軽装じゃない?と言いたくなる、白い太ももの見えるやや大きめのショートパンツ。真っ白な髪の毛はむしろ青みがかり、一見して老人とは違う生命感を醸し出していた。
多少大きめのバックを背負い、その両手で肩紐を掴んで、一生懸命に歩いている。
どれほど遠くから歩いてきたのだろうか。少しおでこが広いのを気にしているのか、おろした前髪が汗でしっとりと額に張り付いていた。
「んん、やっと帰ってこれたぁ…」
そう呟くと、少女?は見た目に合わない酒屋の扉に手をかけた。
ドアが開くと、中からムワッとした酒の香りと共に腸詰めや肉野菜炒めの湯気、そして一日の労働を終えた労働者たちの喧騒が溢れた。
「ステラ!心配してたんだよ!」
女将だろうか?艶やかでハリのある声がカウンターから飛んできた。
「セルテさん、遅くなりました!」
返事をしながらバッグをカウンターに置くと、彼女の体格には少し高い椅子に登るように座った。
周りの男どもが数人、そわそわとしだした。ある者は髪を弄り、ある者は酒を口に含むと喉の調子を気にしているようだ。
そんな男どもを一瞥して、セルテは彼女の前に丸椅子を置き、腰を下ろした。
「シロムクの森でカエンドリの卵を摂るって息巻いていったけど、アンタの体力じゃ無理だったでしょ。うちのマスターも近いからってそんな難しい食材取りに行かさなくてもねぇ…」
奥で鍋を振る男に睨みを効かせつつ、頬杖をつく。
「それが、カエンドリって無精卵の確率が高くて、あの子たち、私の顔を見たら無精卵分けてくれたんですよ!」
言うが早いか、カウンターの上に20個ほど、極上の卵を並べる。
「ちょっとちょっと!待って待ってこんなの並べたら大変!」
どうやら高級食材らしいその卵を渡し、にっこりと微笑む。
彼女の名前はステラ。白髪に紫の瞳が印象的だった。
こんにちは。
小説家になろうで書くのは初めてです。
のんびりと更新していきたいと思いますので、よろしくお願いします。