表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート12月~

大変スピーディーな、年末

作者: たかさば

「ねえ、この瓶全然あかない!!あけて!!」

「あかない。」


年末のクソ忙しい中、娘と息子がてってけてってけやってきたぞ!!ちょ!!あんたら大掃除どうしたんだ!!!


「何それ、あんたら掃除してたんじゃなかったの!!終わってからにしてよ!」

「もう終わったよ!!瓶の中に五百円玉入ってるからさあ!!!肉まんでも買ってこようと思ったんだけどあかなくて!!」

「肉まん食べたい。」


むむ。私が一心不乱に冷蔵庫の掃除をしているすきに…片づけただと?!


…首を伸ばしてリビングをのぞくと、確かにキレイになっている!普段全く片づけないくせになかなかのいい仕事っぷりじゃないか、そうとう仕事が早いじゃないか、なぜそのクオリティを普段から発揮しないのか!


「早っ!!だったらこっちも手伝ってよ!!」

「手伝うよ!でもおなか空いちゃってさあ!!満腹になったらやるから!!はい、あけて!!」

「あとで手伝う。」


賞味期限切れの調味料のチューブや瓶食いかけのお菓子に謎の物体その他もろもろ…足元に山積みになってて身動きの取れない私に大きな瓶が手渡された。


お徳用サイズのジャムの空き瓶の中に、五百円玉が五枚?入っている。誰だこんな所に入れたのは。…旦那っぽいな、多分旦那だな、よしもらってしまおう。


「もー、仕方ないな…。」


私は、ビンの蓋をパカリとあけた。


「うわ!!!びくともしなかったのにすごい!!火事場のバカ力だね!!!」

「平常運転の普通の力だよ!!」


別にピンチにも陥っておらず普通に平常心で開けましたけど!!…まあね!!多少は冷蔵庫の中の惨状に中てられて怒りがこもってはいたかもですけどね!!!


「ありがとー!!」

「ありがとう。」


娘と息子は意気揚々とキッチンを出ていった。私はもくもくと掃除を続ける、続ける、続ける、続ける…。



「ねーねーこれ腐ってる?」

「…表面に白いもん浮いてるな、うん腐ってる。」

「洗う。」


近所のコンビニで販売中の中華まんをすべて買い占めてきた娘と息子は、やけにテキパキと掃除を手伝ってくれている。…そりゃね、腹いっぱいになったからね、動いてもらわねば困りますよ。


八個も買ってくるとかさあ…まあ、いろんな味食べることができてちょっとうれしかったけどさあ…。自分もちゃっかり腹ごしらえをしたわけですが。今年の餃子まんはクオリティが違うってね。そのうまさに食べ進める手は止まらず、あっという間に完食ですがな。まあいいや。


ずいぶん難航していた冷蔵庫の掃除が、さっくさっくとすすんでゆく。やっぱさあ、三人いるとスピードが違うんだよね~。


一人だと一回一回瓶の中身見て確認してって大変だけど、作業分担することで大幅なスピードアップが可能となるのですよ!私が冷蔵庫の中からいらないと思われるものを取りだし、娘がそれを分別し、息子が洗わねばならないものを洗う。瓶ってさ、洗ってごみに出さないといけないんだよね。


賞味期限が切れてるのはもちろん、買ったはいいけど食べ切れてないやつだとかもどんどん捨てていく。娘が食べたいものは別途ケースに入れて、年内に消費を目指すシステム。


「もうさあ、ジャムは小さい瓶で買えって言ってんじゃん、食べ切った方がお得なんだよ!こんな大きい瓶の買って、半分以上残ってんのにカビ!!」

「だってお父さんがどうせ食べるなら大きいのが良いっていうんだもん!!」


こういうところで小金がかさんで食費を圧迫するんだよ!!!


「練乳なんて三本もあるよ、何であるのに買ってきて、あるのに開いてるのを使わず新しいのを開けるのか…!!!」

「新しい方が新鮮だってお父さんが!!!」

「クッキー作る。」


どうせまた新しいのを買ってくるに違いない、私は息子に三本の練乳を渡した。砂糖の代わりに練乳使うクッキーはさ、私のレシピなんだけどね、今や完全に息子に委譲されておりまして…いやもう移譲か。時のたつのははやいものだ、卵を割るのに難航していた息子が、一人でクッキーを焼けるようになるとかさ…。


「…よし、おおかた終わった、あとは野菜室だけだ。ええと、飲み物の賞味期限チェック…。」


うちの冷蔵庫の野菜室は、野菜室とは名ばかりで飲み物ばかりが入っていたりするのだな。あんまり野菜を冷やす習慣がないってていうか。夏はスイカが入ったりブドウが入ったりするんだけど、基本ペットボトルや缶飲料ばかりが入っている。飲み物は案外サクサク消費していくからか、期限が近いものはほとんどない。


「…あれ、何これ!!変な封筒が入ってる!!!」


六缶パックの野菜ジュースの下から、何やら茶封筒が一枚出てきて…わ!!何これ、一万円入ってる!!!旦那のへそくりか?!ヒャッホウ!!今日はこれでいい牛肉買っちゃお!!!


「ねえねえ!一万円入ってた!!今日これですき焼きやろ!!!」


大喜びで娘と息子をふり返ると。あれ、なんか二人とも変な顔をしているぞ。これはいったい。


「それお母さんがひどいことになってへそくりしたやつじゃん!覚えてないの?!」

「ひどかった。」


・・・うそーん。

・・・全然、覚えてねぇ~!!!!


「ねぇ!その手に持ってるの、なに!!!向こう側に並んでる缶、何!!!」

「なにか持っている。」


げげ!!!避けておこうとした缶を目敏く見つけた、善良な家族が二人!


「いや、これは賞味期限が近いのが出てきたからね、早く飲まないといけないやーつで―――!」

「リビングに貼ってある紙、見えないの!!!」

「禁酒って書いてある。」


先週少々やらかしてしまった私はですね、二日酔いの覚めぬまま、家族全員の前で書をですね、うふふ、したためさせて頂きましてですね、あはは。


「でもさあ、飲まないで捨てたらもったいないじゃん!賞味期限近いから誰にもあげられないじゃん!…私が飲むしか!」

「バイト先の人に聞いてみる!!!ラインでも聞いてみる!!」


娘は何やらスマホをポチポチやっているっ!!


「…ゆいのお母さんがもらってくれるって!!はい、全部没収ね!!」

「もらっておく。」


ああー!酒が息子に持って行かれたー!娘はお買い物袋に手際よく缶を五本詰め込んでっ!!ちょ、なにこの手際のよさ!


「じゃあ、今から!!ごみを玄関横に移動させて!お酒を届けて!最高級の牛肉を買いに行こー!!!」

「行こう!」


きちんと分別されたごみ袋を持って!!酒の入った袋を持って!一万円の入った封筒を持って!!!娘と息子がキッチンを出ていくー!!


何この連携、行動の速さ!!いつもののんびりのほほん適当ばんざいが嘘のようにスピーディーだとぅ…?!


「お母さん遅いよ!」

「ずいぶん遅い。」


行動の鈍さを指摘されてしまった私はですね、すごすごと、しっかりものの皆さんのあとを追ったという、お話、ですよ…(。>д<)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大掃除、大変ですよねー。冷蔵庫の整理とか、ほんと大変そう。子供達が手伝ってくれると、助かりますよねー。はい。子供は素早いですからね。
[良い点] なんじゃこりゃあ! すごいスピード感 [気になる点] カビわかる。練乳3本わかる。 ウチのはラップかけた皿の中にカビ生えた食べ残しですよ。ぶわっ [一言] さーけー、のめめめっめえっめめ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ