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アビルお姉さんの視点

今回は、サイドストーリーです。たまには、こういうのを入れたくなる気持ちは、書いてみて分かりました。

 アタシはハルキフの近くの、近くと言っても結構離れている山の麓の村で生まれた。その村は本当に貧しくて、食事が1日1度ということも珍しくなくて、みんな痩せ細っていた。


 アタシがたぶん8才の頃、売られてハルキフに来て、この娼館に買われて来た。娼館なんて、大変だとか汚らわしいとか言われるけど、村にいたら大人になる前に死んでいたと思う。餓死したり、病死したり、間引かれたり、獣に襲われて死ぬなんて日常のことだから、ここにいたらそんな心配しなくていいから、ここの方がよほど幸せだよ。


 15才から客を取り始めた。男に抱かれることなんて、周りのお姉さんがみんなやってるんだし、当たり前のことだと思っていたし、今もそう思っている。幸運なことに、館主のお母さんがいい人だから、折檻されたりすることもないし、病気になったときに客を取らされることもない。よほどの変態ならイヤということもできる。


 落ちぶれて金がなくて、道ばたで客引きするよりは、よほど今の生活の方が安定していると思う。将来のことなんて、わかんないけれどね、少しずつお金を貯めているから、ここを辞めるときに、何か小さい店を持てるくらいにはなると思うし。18のときに子どもができたんだけど、1才過ぎて流行病で死んじゃった。これも良くあることだから、泣いても仕方ないよ。誰もが経験していることだから。


 そんなある日、変な客が来たの。背が高くてひょろっとして平べったい顔で、ここでは珍しいことに黒髪黒目だったから、ちょっと驚いた。ちょうどハルキフの戦いのあった日で、お母さんが「今日は勝ち戦だったから忙しいよ!」って騒いでいたんだけど、アタシは具合が悪くてどうしようかと思ってたとこに来たの。

 その日は朝から頭が痛くて、たぶんこれって明日天気が悪くなる前兆だなって思ってた。今までも、天気が悪くなるときは、必ず頭が痛くなってたから。

 そういうときは、じっと寝ているのに限るんだけど、その日はたくさん客が来るから、大もうけするよ!ってお母さんの気合いが違ってたし。女の子が足りなきゃ、アタシも相手するから、ってお母さんが言うくらいだから、きっとえらいことになるんだろうね、ってみんなで話をしていたんだよ。


 それで、店を開けたらすぐに3人組のスケベが入ってきた。その中にさっき言った黒髪黒目のお兄さんがいたんだ。アタシは具合悪いし、指名されないように隠れていたのに、ナゼかお兄さんがアタシを指名したのさ。どうしてかなぁ、他にも可愛くて胸の大きい女の子もいて、アタシみたいな凸凹の少ない身体の女はあまり人気がないはずなのに、ナゼか指名されたんだよ。まぁ、アタシでもひいきのお客さんがいるから、指名されても不思議じゃないけどね。


 そんでさ、仕方なく部屋に連れて行ったんだけど、このお兄さんは不思議なことに、汗臭い臭いがしなかったの。たいてい、1番に来る男はギンギンでさ、女が抱きたくて抱きたくて仕方ない雰囲気で、身体もろくに洗わずにやってくるヤツが多いから、たいてい汗臭かったり、欲情の臭いがプンプンするんだけど、お兄さんはなぜか臭いがなかったし、少し好感度が上がったね。


 部屋に入った途端、お兄さんはアタシをそっと抱いて「※〇□×△」と小さく呟いたんだよ。そしたらさ、お兄さんの手から、アタシに何か流れ込んでくるような気がして、その瞬間に頭の痛みが消えたんだ!それで、ついでに身体のだるさもなくなったし、昨日のしつこい客のお陰でヒリヒリしているあそこも治って、気持ちも身体も最高になったの。たぶん、ここに来て1番、もしかして生まれて1番の気分かも知れないくらい。


 そうなると、アタシも乗っちゃってさ!お兄さんにサービスしちゃったわけ。ま、サービスして悪い訳もないんだけど、最初のお客さんにあんまりサービスしちゃうと、後のお客さんで疲れちゃうから、ほどほどにして済ませておくんだけど、なぜかイっちゃったし。マズいなぁと思ったけど、のってたから(気持ちがね)いいかと思ったしね。だって、いつもはアタシ、大銅貨10枚なのにお兄さんは銀貨1枚くれたんだよ?悪いなぁ、倍もらっちゃってさ。


 お兄さんは終わってすぐ帰ったけど、アタシはその後も調子良くてさ、その日は絶好調でお客さんを取ったね。なぜか、お客さんたち、すぐ終わってさ、回転率が早いのなんのって、お母さんも驚いていたのは内輪の話だけど。お母さん、出番なくて残念だったね。


 次の日にその不思議なお兄さんのしたことをお母さんにしたら、なんと街の領主様の耳に入ったらしくて、領主様の部下という人がお兄さんのことを聞きに来たんだから、驚いたのなんのって。


 そんで、だいぶ経ってお兄さんのことを忘れた頃、またお呼びがかかったの。お兄さんがこの街に来ているから、お兄さんの宿に行って、1晩相手をして欲しいって。

 たった1晩(と言えないくらいの短い時間)だったけど、お兄さんはアタシのテクニックが忘れられなくて、指名してきたのかなぁ?

 お兄さんは変なことはしないけど、なんでも言うことを聞いて欲しい、って言われたの。お兄さんの宿(聞いたら、この町の1番2番の宿の1番いい部屋だってさ)に泊まっていいし、朝ごはんも食べて来て良いから、朝ごはんも美味しいのが出るよ、って言われたし、そこまで言われちゃ乗らない話じゃないよね。


 そんで、普通に街を歩いても目立たない地味な1着しか持ってない服を着て、言われた宿に行って、お兄さんの名前(マモルと言うんだって、変わった名前)を告げると、話がついてて勝手に部屋に行くように言われた。前払いでお金はもらってるし、アタシは気楽なもんだね。


 ドアをノックするとお兄さんが出てきた。部屋の中はそれはそれは豪勢で、娼館みたいな派手派手でなく、落ち着いているけど高そうな家具が並んでいるのがアタシでも分かったし。


 すぐに始めるのかと思ったら、お兄さんはそこまで飢えてなかったようで(なにカッコ付けてんの?と一瞬思ったけど、そうでもなかったみたい)、アタシに椅子に座れと言ったの。何を始めるんだと思ってたら、手を握らせてくれって言うし、何か新しい変態プレイが始まるのかと幻滅したけど、前金もらってるからガマンするしかないね、と腹をくくったね。

 それで、お兄さんが向かいの席に座り、アタシの手をお兄さんの両手で包むようにしたの。それで、何もしないんだけど、お兄さんの手からアタシの手に何か伝わって来たような感じがしたの。何か、暖かい何か。何だろ、よくわかんないけど、どろっとしたようなものか何かが。


 アタシの表情が変わったのかも知れないけど、お兄さんがニマニマし始めて、それからもっと何が流れてきた!その流れてきたのが、アタシの身体を流れてきて、巡り始めたのが分かった。それで量がだんだん、多くなってきたの。でも、途中でアタシの身体の中のどこか詰まってるなぁ、と思ってたら、お兄さんから流れるのが強弱付けられて、これって何なの?どうなってるの?これってあれとおんなじじゃない?ダメだって、もう止めて?って、訳わかんないうちにイっちゃって、一瞬飛んでしまったし。


 もう、頭にきたね、アタシは。普段、温厚なアタシでも怒る時は怒るよ!何か、変なことをしたでしょーーーーー!!

 でもお兄さんに言ったら「何もしてないでしょ?」って言われて、確かに手を握られているだけで、アタシが1人で感じて、1人でイって、1人で気を失っただけだったから、お兄さんに文句言うのもおかしい。別にひどいことされたわけじゃないし、気持ち良かったんだから、文句言える筋合いじゃないわね。でもさぁ、すっごい濡れてたんだって!何もしてないのに、どうしてこんなに感じて、濡れちゃって、イッちゃうの?おかしいって!?


 それから、お兄さんの言うには、それが魔力だって。それでさ、使い方を教えてもらって、呪文も教えてもらったの。途中、小休憩を入れたけど、アタシにはちっとも休憩じゃなかったけど、こんなに気持ちいいのは生まれて初めてだと思ったもの。


 お兄さんに『Cure』と『Clean』を教えてもらって、こっそりと練習することにしたんだ。でもねー、お兄さん、ちゃんとすることはするんだよ。それも2回も♪


 朝目が覚めると、お兄さんがアタシを見てた。

「幼い顔をしてるんだね?」

 って言うけど、大きなお世話だって!でも

「可愛い寝顔だったよ。素顔なのに」

 って、お兄さん、まぁ女殺しだわ。だから「今夜どう?」って誘ったら、「いいよ」って言うし、お口でサービスしちゃった。今晩は夕ごはんも一緒に食べれるというから、そのくらいはお安いものよ♪夕べはお兄さんの好きなようにされたけど、今夜は本職の腕前を見せて上げるわ!


 あ、アタシの名前はアビルって言うの。お兄さんは「アヒルお姉さん」って言って喜んでいたけど、何が面白いんだろう?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 90話までの感想ですがとても面白く読ませて頂いています。 現代知識の活用がフィクション話、胡椒、グローブ、弩と限定的なのが好印象。 [一言] R18の作品を先に読ませていただいて、追い…
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