ヒューイ様にいじられる(止めてください、メンタル弱いんだから)
結局、解体は日が傾いてまで続き、ハルキフの町にはとうてい着くことなんてできないことになり、かと言って、いくらなんでも血だまりがある所で野宿すると危ないし、おまけに生肉積んでいるから、親方同士で協議して、少し進んで、ここなら大丈夫という所で野宿した。後ろから来た馬車には女性も2名乗ってらしたけど、いいんですかね?
当然のことながら、夜は牛肉食べ放題で、こいつらこんなに食えるんかい?と思うくらい食べやがった。不思議なことに、獣は寄ってこず、何事もなく夜が明けて。
親方の言うには、解体したところに内蔵とか残してきたから、狼や熊や野犬はそっちの方に行って、争いながら食ってるだろうから、わざわざこっちに来ないだろうって。あっちも肉祭りなってるだろうしな、ということでした。レバーは美味しいのにもったいなくない?と聞いたら、あんまり欲張るといけませんよ、と言われたけど。
次の日の昼にやっと着きましたよ、ハルキフに。
いきなりヒューイ様にご対面しました、門の所で待ってるんですもん!
「やあ、マモル、良く来てくれたね。待ってたよ」
はぁ、無駄に元気なような?
「ヒューイ様、お久しぶりです。あのときは、お世話になりました」
「何を改まっているんだい。私とキミの仲じゃないか、ははは」
肩をバンバン叩かれる。
「いえいえ、私のような騎士爵になったばかりの者で、おまけにヒューイ様に連れて行ってもらったお陰で功績を挙げることができましたので、どれだけお礼を申し上げても足りません」
「まあまあ、そんなに気を使わなくていいよ。私だって、キミのお陰でこの街の領主になれたんだから、お互い様だよ。それで、今回は胡椒の木をさがしてくれるそうだね。前に山に登ったときに見つけたと言ってたけど、本当なのかい?」
「はい、見つけました。前と同じ道筋で連れて行ってもらえば見つけることができると思います」
「分かった。じゃあ、明日の朝、一緒に行こう。今回は1回テント泊があるから、心がけておいてね。それから絹織物だって?」
「はい。聞けばハルキフは蚕の産地とか?」
「そうだよ。あれは美味しいから、ここから各地に出荷しているんだ。キミも好きだろう?」
「いや、いえ、申し訳ありません。私は虫が苦手で食べれません」
「えーーーーー!!本当かい。あれが嫌いな人は初めて見たよ。あ、オダ様もこの世界に来たときは、なかなか食べれなかったと言っておられたなぁ」
「そうでしょう!そうなんですよ。いや、食べる人もいるんですが、申し訳ないですが私は無理です」
「残念だね~~今度、蚕のフルコースを食べさせようと思ってたのに......」
「いや、気持ちだけ頂戴致します。それで、あの虫が絹糸の原料ということですが」
「おお、そうだったね。あれが、あの虫から絹糸が出るんだって?」
「はい、あの虫は白い糸を吐いて繭を作るでしょう?あの糸が絹糸になるのです。綿糸を作っている方もおられると聞いているので、これはちょっと説明すれば分かって頂けると思います」
「分かったよ、そこにも連れて行こう。あとは何かあるかい?」
「それくらいしか、今は思いつきませんね」
「そうかい。それで、今回はキレイなお姉さんのところに行かなくていいのかい?」
「え?」
「いや、何が「え?」なんだい。前にこの街に泊まったとき、キミと部下の3人で、キレイなお姉さんのところに1番乗りしたって聞いてるよ」
「そんなこと、どこから?」
「何を言っているんだい。お店が開店したばかりに入って来た、ルーシ訛りの3人組だって、評判になったから私の耳にまで聞こえてきたさ」
「はぁ......」
「その中で、1人背の高くて黒髪黒目の男がお姉さんに変なことした、っていう話も聞こえてきたよ」
「はぁ......」
「それで一体何をしたのか、聞きたかったのさ」
「はぁ......」
「教えてくれるね?」
「教えてもよろしいのですが、もしかしたら?と思うので、もう1度、彼女に会って試したいことがあるのですが?」
これを聞いて、ヒューイ様は喜色満面になって、
「なんと、あの子を呼べと言うのかい?そんなにあの子が気に入ったのかい?
う~~ん、私が呼ぶと、噂が噂を呼んで家庭不和の原因になりそうだなぁ。それに何か試すのなら、あの店じゃない方がいいんだろう?まさか、マモルは変態趣味じゃないよね?そういうことを試すんじゃないのかい?
そりゃ、金を出せば、1晩自由にできるし、呼ぶことはできるけどなぁ?キミがあの子をあんなに気に入るとは思わなかったなぁ」
「いいえ、そ、そんなことはないんですが、と、とにかく試してみたいと思いまして」
「マモルが1人の女に、それも娼婦にそんなにこだわるとは怪しいですねぇ、フフフ。何があったのか、私に言ってみなさい。ほら、言えば、気持ちが軽くなりますよ?ほら、言ってみなさい」
うぅぅ~~~、誘導尋問されている気持ちです。なんも悪いことしていないのに、悪いことしたような気持ちにされて、自白を強要されているような?
「あの~方法は言えないのですが、私の相手の子に魔力があるのでないかと思ったのです。あのときは、1度だけだからいいか?と思って呪文を使ったのですが、こういうように追求されるなら確認したいのです」
「ほう!それは面白い話を聞きました。では、呼びましょう。でも、タダというわけにはいかないですし、今はマモルは無一文でしょう?(いえ、お姉さんと1晩遊ぶくらいの金は持ってます)う~~~ん、それでは、明日山に行き、胡椒の木を1本見つけると銀貨1枚渡すというのでは、どうですか?私は、それでマモルがどんどん胡椒の木を見つけてくれると、最終的には儲かるのでよろしいですよ。それなら公費でマモルがお姉さんとイチャイチャするお金がまかなえるという不思議現象が発生するんです」
「分かりました。それでお願い致します」
って言うしかないじゃない。
「では、お姉さんはマモル名義で、しあさっての夜、予約しておきますから。ここに来てもらいますよ」
「はい、結構です」
やっとヒューイ様が帰っていかれた。
その後食べた夕ごはんは、味がしなかった。オレは神経戦には弱いなぁ。疲れ果てて寝てしまった。
日は飛んで、翌々日の夜、胡椒の木捜しはまぁ、なんとか終わり宿に帰ってきました。
フロントでチェックインすると、なぜか部屋が変わっているという、理由はヒューイ様から指示がされ最上級の部屋になったそうで。せっかく、ヒューイ様持ち(交際費かしらん?)でアップしたのだから、ありがたく泊まらせてもらった。
部屋に入って、なんとルームサービスの夕食を頂いて、ゆったりまったりしていると、ドアをノックする音がしたので開けると、前にお世話になったお姉さんがいらした。
「こんばんは、マモル様の部屋はここでよろしいですか?」
「はい、合ってます。中へどうぞ」
お姉さんはそっち系の印象はまったくなく、いたって普通の露出の少ない町の女の人の感じの服を着て、普通の女の人の化粧で来てくれました。宿の人もみんな知っているんだろうけど、外面を気にする典型的は日本人のオレとしては、呼んだにしても、せめて上っ面だけでも、普通の人が来たよって方がありがたい。と言ってもすることは同じだけど。
ほら、いいオヤジがキャバクラ行って、女子大生が出てきたら「こんな所でバイトしてんじゃないよ」とか言いながら、身体をさわりまくるのとは違う、と思いたい。
それはともかく、お姉さんを椅子に座らせる。
「よく来てくれました、ありがとうございます」
「いえ、アタシはお金さえ払ってくれれば、どこにても行くんだけど。今晩は、ここに泊まってきてもいいと言われているし、明日の朝ごはんを食べてから帰って来ていいよ、と言われているから、変なことさえされなければ、こんな良い話ないから大歓迎よ!」
「そういうことになっているのか?」
「うん、そう。それに前払いでもらっているから、取りっぱぐれもないしね。前に来た時は、どこから来たのか分からない、変な男3人組だったからすごく警戒されてたけど、値切りもしなかったし、終わったらすぐに帰っていったから上客だったけど。
でも、こんないい所に止まっているなんて、お兄さんはお金持ちなのね♪」
「いや、そんなお金持ってないけど(今は)、理由あってここに泊まっているんだ」
「そうなの?ま、アタシはどっちでもいいけど」
「じゃあ、始めたいけど......」
「服脱げばいいの?」
「あ、え、いや、そのままでいいから、手を出してくれるか?握らせてくれ」
「え、うん。お兄さん、何か新しいプレイかしら?」
......
「そうだね、プロのお姉さんとの経験は、これが2度目なんだけどね」
「まぁ!じゃあ、前が初めてだったの(プロの)。どうりで、何も知らないと思ったもの。でも、あっちの方は上手だったし、驚いちゃった」
「イヤイヤ、別ニ上手ジャナイデスカラ」
「なにを謙遜してんのよ、ふふふ。アタシが保証してあげるからね。あれじゃあ、今までに女をたくさん、泣かせてきたなぁ、と思ったもの」
話が全然進まない。
「とにかく手を出してください」
「ハイハイ」
と出された手を、両方の手で握る。
「何か感じる?」
「うん、暖かい手だなぁ、って感じる」
あ、なるほど。
「えっと、これから何か感じたら教えてくれるかい?」
「分かったわ」
手に魔力を集中させ、お姉さんの方に少しずつ流す。少しだけ流したのに、お姉さんはむずむずし始めた。
「あれぇ、手から何か来ているような気がするんだけど?」
「あ、分かるのか?」
「うん、ちょっとだけど、お兄さんの手からアタシの方に何か暖かい物が流れてきているような気がするんだけど?」
「そうか。それなら、ちょっと強くするけど、どう?」
「あ、分かる。はっきり分かるよ。お兄さんの手から何か来ている。不思議、今までこんな経験、したことない。コレ何?何してるの?」
「うん、まだちょっと言えない......」
ノンと同じように、何か引っかかるような、詰まっているような所を感じるな。
「ちょっと、強くしたり、弱くしたりするけど、ガマンして、手を放さないで」
魔力の流れに強弱付けて、詰まっている所を通るようにしてみる。
「分かった。 けど、 何これ? お兄さん、何しているの? 変、変だよ? 何か、身体を流れ始めているような気がする あ、ダメ ダメだよ、ダメ なに、これ! 変 変になっちゃう
あ あ あ あ 〇△※×□ 」
お姉さんは、どこかにいってしまったようで、ぐったりして机に突っ伏した。そのまま、動かないので手から弱く魔力を流したまま、復活を待つ。
しばらくして、ピクっとしてすぐ、顔をガバッと上げ睨んできた、真っ赤な顔をして!
「お兄さん、いったい何したのよぉ!何をどうしたら、こんなんになるのぉ!こんなことされたら、アタシ、壊れちゃうじゃないの!」
って怒鳴ってくるんだけど
「でも、何もしてないよ。手を握っているだけでしょうが?」
「あれ?そう言われればそう。てへへへへ」
「実は、オレからお姉さんに魔力を流したんだ」
「魔力?」
「そう、魔力」
「魔力って何?」
「えっと、魔力を持つ人が、呪文を唱えると魔法が使えるという話なんだけど、知ってる?」
「よくわかんないけど、魔法を使えるの、アタシ?」
「うん、使えるかも知れない。魔力を持ってることだけは分かったけど、あとはどのくらい強く魔力を持っているのか、オレには分からないし」
「へぇーーーー。でも、どうしてアタシが魔力持っていると分かったの?」
「実は、前にお姉さんとする前、お姉さんがなんとなく具合悪そうに見えたから、呪文を唱えたんだ」
「そうなんだ!ずっとおかしいと思ってたんだ。
前にお兄さんが来た時、ずっと頭が痛くて調子悪くてさ、休みにしようかどうしようか思ってるときにお兄さんが来たんだよ。それでさ、お兄さんがアタシを呼んで、抱きしめたとき何か言ったでしょ?そのとき、さっきみたいに何か流れ込んできて、その途端、頭痛いのとか調子悪いのが、全部なくなったんだよ。その日は本当に調子良くてさ、不思議でならなかったから、お店のお母さんに相談したんだけど、お母さんも分からないって言ってたんだよ。
あのときってさ、これだったんだね!」
「や、ちょっと違うんだけど、調子悪そうだったから『Cure』って呪文唱えたら聞いたんだね」
「え、『Cure』、アタシもやってみよ!『Cure』、あれ?なんにもならないよ?」
「そりゃ、言うだけで呪文は効かないから、ちょっとしたコツがあるんだよ。たぶん練習すればできるようになると思うから、やってみるか?」
「うん、やってみるよ。でも、アタシはいいけど、お兄さんはいいの?アタシはお金もらってるから、まずお金の分だけ、お仕事はしないといけないし。
ほら、アタシってプロだから、テヘヘヘ」
お姉さん、男前!そうですね、まず、致すことを致してからにしましょう。こんな魅力的なお姉さんが目の前にいて、何もせず一晩明けるなんて、異世界ノベルのあるある展開なんて、飛んで行け!ですよ。
閑話休題。え、意味が違う?本題に戻るという意味です。
お姉さんと親密交際した後は、より一層親しくなったので、疲れてしまったお姉さんに『Cure』を掛けると「これよ、これ!」と騒がれる。
身体の魔力の流し方、集め方を教えるとノンより早く(今頃、何してんだろう?ゴメンねとは言いませんから。これも仕事のうちですし)お姉さんはできるようになった。
驚いた、個人差あるとは思うんだけど、こんなに早いとは!指先が、ボッと白くなっているのが分かるもん。と、言っても1分も経つと「もう無理ぃ」と言ってベッドに倒れるんだけど。
それでもお姉さんは10分も経つと復活し、部屋にあったお酒とお菓子を(こんな高級品、初めて飲んだよ!食べたよ!お土産に持って帰っていい?と騒ぎながら)消費して、しまいには「何か役に立つの、教えて!」というもんだから、『Clean』を教える。
さっそく試してみると、ほんのちょっとだけ、酒の匂いが消えた気がした。
「できた?」
と聞いてくるもんで
「たぶん、できたと思うよ。でもさっきの『Cure』も今の『Clean』も魔力の枯渇に気をつけるんだよ。えーーと、血圧が低くて、頭から血が下がった気分になったら、魔力がなくなってきている感じだから、注意して。ひどいときは倒れちゃうから」
「そうなのか。なら、あんまり人に言わない方がいいね。でもさ、『Clean』っていいよね。客でさ、口が臭いのとか、汗臭いのとか、あそこがすっごい臭いのとか、いるんだよ。逆にアタシの汗の臭いが好きな変態もいるし(え、女の人の汗の匂いが好き、って変態ですか?)、そういうときこれを使えばガマンしなくていいから」
お姉さん、ニマニマと満足顔でおっしゃいます。
「お兄さん、とってもいいこと教えてもらったから、今度はアタシがサービスしてあげるよ。とっておきの技を使っちゃうから、楽しみにしてね。
でもねぇ、アタシはいつもイったふりしてるんだけど、さっきはホントにイっちゃったから、またイかされちゃうかなぁ。まぁ、いいや。今夜はアタシも楽しんじゃおっと♪」
いつものイったふりって、客に言ったらだめでしょう?まぁ、いいか褒めてもらったようだし、ね。
朝、眼が覚めてふかふかのベッドと白い清潔なシーツに包まれ、お姉さんの寝顔を見た。意外と幼い顔だったけど、素顔は可愛いかった。あぁ、幸せな朝だ。
と、お姉さん、目をパチって開けた。
オレにキスして、
「ねえ、お兄さん。魔力の流れって、続けないといけないんじゃない?今夜も呼んでくれないかな?銀貨3枚で、もう1晩どう?テヘ♪」
商売上手のお姉さん、そりゃイエスって言うしかないでしょ。




