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さぁて、こいつらをどうしてくれよう?

 さぁて、襲ってきた凶賊を回収しに行きましょう。


 たぶん、死んだのはあんまりいないんじゃないのかな?あ~ぁ、生死に対してオレはだいぶ鈍感になってしまってるわ、こういう感覚が普通になってきたというのは、オレもこの世界に馴染んできたということか。隔世の感があるわぁ。


 凶賊たちは転がったまま、矢を抜くこともせず、うめいていた。致命傷になったのも、虫の息のもいるけど、そういのはバゥが手際よくとどめを刺していく。さすがにそういうのは、見るのも刺すのも慣れないのでバゥとミコラにお任せする。いつかきっと、オレもやらなければいけないときが来るんだろうけど。

 ざっと3分の2くらいの凶賊は軽傷でしたね。軽傷といっても、矢が3本、4本と刺されば心が折れるんですね。少ないヤツで3本、多いヤツは7本矢が刺さっているのがいる。ハリネズミと言った感じがぴったりだね、痛いでしょう?でも矢は貴重品だし、使える物はリサイクルして使うんだから、エイ!と抜いておく、と。お、抜けない、グリグリグリ、叫ばない泣かない、自業自得だろうが?みんな泣いているもんな~~泣くくらいなら、襲わなきゃいいんだよね。反省せーーーよ。しても許さないけど。

 18人縛り上げて、7人とどめを刺した。親分らしいヤツも生き残ったし、「こんなはずじゃなかった」と申しておられますけど。傷が痛いようで、歩くのもままならない。このままじゃ、オーガまで歩いていけないから、治せるなら治してしまおうと思い魔法を掛けてみる。

『Cure』

 あ、結構治る。表面上は傷がなくなった。傷のあった所を揉んでみると

「痛!」

 と言ったので、根本的に治るようではなさそう。せいぜい血止め草の上位版くらいかな?ふと、思いついたことがあったので、

「すみませんが、ノンとミンを呼んで来てもらえませんか?」

 と言って、呼び寄せた。


 ノンとミンに『Cure』掛けてみて、というと

「こんな悪人たちにどうして掛けるの?」

 と頬を膨らませて言うから

「何でも試しておくんだよ。使ってみて、どのくらい傷が治るのか確認しておけば、いざというとき便利だろ?」

「そっか」

 と言って、先にミンが『Cure』と唱えた。その瞬間、ミンが倒れた。おりょーーーー、アブねーよ。ノンも焦って、ミンを抱っこして家に駆けて行ったので、実験は終わってしまった。『Cure』は他の呪文に比べて魔力使うんだろうか?ひょっとしたら、ケガの程度によって魔力を使う量が違うんだろうか?


 バゥが言うには

「治療の魔法ってやつは、マモル様は簡単そうにやっておられますが、実は大変なことなんでしょう。ノンでもミンと同じように、魔法を掛けると倒れてしまうんでしょうか?」

「うん、たぶん魔法の呪文にもよるんだろうと思うけど。植物を育てるような呪文はあまり負担かからないようだけど、人を治すのは大変なんだろう、きっと。もしかしたら、自分の命と引き替えになるくらいのものかも知れないし。これは、うかつに頼めないですね」

 と言うと、なるほど、という顔をするから

「婆さまも滅多に魔法使わなかったようだし、治療の魔法は使えないということで、お願いします。オレでも赤チン災害の傷を治すくらいのことしかできないけど」

「分かりました」

 赤チン災害って何ですか?と聞かれない。バゥも学習してきたわ。


 しばらくバゥが黙っていたのだけれども、爆弾発言を投下!

「マモル様、治す魔法があるなら、一発で殺す魔法もあるんじゃないですか?」

「え、そうか?そうだね、あるかも知れない。呪文はたぶんこれだろう、というのが今思いついた」

 その場にいた全員、凶賊も含めてどーーーーんと引いた。

「知ってるんですか?」

 って聞いたおまえがいうなよ、バゥさんよ。たぶん『Die』だよね。『Death』は名詞だから、この世界の呪文は動詞だからたぶん『Die』。

「うん、たぶんこれかなぁ、っていうのがあるけど、どうしよう?」

 凶賊たちはみんな、首を振っていやいやしてるし、親分はオレがやられそうか?と考えているのか、真っ青な顔をしている。いや、あんたはきっと死罪だから、ここで死んでも変わらないと思うけどな。バゥが煽ってくるし、みんな見たそうな顔でキラキラの笑顔ですがな。


「どうしますか?試してみますか?」

 ワクワク感が透けて見えますがな。

「う~~ん、どうしようか、考えるね」

 いくら人の命の軽いこの世界でも、呪文を唱えて殺すのはどうかなぁ?それをやっちゃうと、この世界にどっぷり染まって首まで浸かったことになるんじゃないのかな?村のみんなの顔を見ると、是非やってみてくれ、というような顔をしてる。期待しているなぁ。そうか、この世界で死刑なんて広場の真ん中で、見物人をいっぱい集めて首を斧で落としていたもんな、人が死ぬのを見るのも娯楽なんだもん、と考えているけど、前の世界の心というか倫理観というものが1%ほど残っていて、止めることにした。牛は殺せるけど、象さんは殺せないという、ちょっと訳の分からない倫理観ですけど。


「やっぱり止めるよ」

「え、やらないんですか?」

「そんな残念がるなよ」

「だって、見てみたいじゃないですか。呪文一発で悪人が死ぬのは、たぶん誰も見たことないです。どうせこいつら、首を落とされるし、何人死んだって、誰も困りゃしないんだから、やっちまいましょうよ。なんだったら、夕飯食べる前に広場でやってみればいいのに......」

 え、そんなの?夕ごはんの前に人の死ぬのを見て、ごはん食べれるの?この世界の人たちはグロ耐性強いなぁ......染まりつつあるけど、それは勘弁だわ。


 凶賊たちを門の中にバゥが蹴り飛ばしながら歩かせて入れると、輸送隊の隊長さんから手紙が渡された。

「ギレイ様からです。読まれて、帰りの輸送隊と一緒に来るように言われております」

「あ、そうですか?なら、準備します。こんなことあったし、出発は明日ですね、分かりました」

と話していると、護衛の人が

「こいつら、懸賞金がかかってるやつらじゃねえか?確か、暗闇の黒狼、とか自称しているヤツかな?」

「ほんとに?」

「たぶん、そうだと思いまさ。まあ、オーガに連れて行きゃ分かりますがね」

「そりゃ、楽しみだね」

「ただ、あんまり期待しないでくださいよ。オレが間違ってっかも知れないですし」

「まぁ、期待だけしておきますから」


 暗闇の黒狼、って昼に来るからやられるんだって。

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