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弩を作らせる

 しばらくして、今度は輸送隊が鍛冶屋と大工を載せて来た。用件は弩をここで作るということで、オレを呼ぶより、タチバナ村で作らせた方が良いであろうというのと、ついでに村で使っている農具の修理ということでギレイ様が派遣してくださった。


 オレが設計図を書ければいいのだけど、CADはないしPCもないし、手書きではどこかの歌のお姉さんより少し上手いくらいだから、伝わるとは思ってなかったので、来てもらって良かったわ!

 さっそく、弓を持ってきて、こんな感じでこういう様にと説明すると、さすがプロ!オレの説明で理解してくれて、作り始めた。あとはできあがりを待つだけだし、せっかくのお客様だから肉を食べてもらおうと思って、バゥと狩りに出た。バゥにフラグを上げてもらうと、確率が上がるからね。


 で、予定通り大鹿を2頭倒して、その夜は鹿肉パーティーで喜んでもらえました。大工の方は「こんな肉が食えるんなら、オレはこっちで生活しようかな?」と言ってたけど、歓迎するよ。できれば嫁さんを連れてきてくれればなおさら良いけどな。少しでも人口増やしたいし。


 プロフェッショナルの仕事というものはスゴいもので、3日経つと弩の試作1号機ができた。さすがの職人の手際の良さで、ひと目見た感じは完全にできている、と言える。手に持つと結構重い感じがするけど、この世界の人はどうなのだろう?


 バゥとミコラに来てもらい、持ってもらうと、こんなもんか?と言われた。それと、これは弓と違って、立ったまま打つんじゃないのでしょう、と。確かにこれって、何かに乗せて打つもんだったよな。そっか、何も台の無いところだったら、3脚でも1脚でも置いて打てばいいのか。


 それで早速、打ってみる。あの村とは違って、この村にはムシロのようなものがある。穀物を運んでくるのに米俵(実物は見たことないけど)のような物に入れてくるから緩衝材にするものはたっぷりあるし、的として使える物は結構あるので、矢が無駄になりません。


 バゥに言わせると、お貴族様の趣味で小弓というものがあって、それは弓を横にして打つそうで、それの感じに似ているそうだ。ただ、小弓はクレー射撃のような感じで、放鳥した鳥を射るので、さほど強くしていない弓だそう。これは、長射程の敵を射ることを前提に考えているので、矢をセットするときは、バゥのような強弓の引ける者なら片手で引けるが、力の弱い人、女の人なら弓に脚を掛けて、弦を引くことを前提にしている。

 オレが考えたのは、引く人がいて、射る人は上手い人に任せようと。いくら弩が誰でも使えると言っても、きっと射程を付けるのが上手い人、下手な人がいるはずだから、専門化してしまおうと考えたのだ。長篠の戦いの鉄砲3千丁の止むことのない発射のイメージです。ちょっと違う?いいんです、イメージですから。


 試打ちしてみると、当たり前というかバゥ、ミコラとオレははっきりと明暗が分かれた。オレはからっきし、的に当たらない。バゥにいろいろアドバイスを受けるけれど、言われた通りやっているつもりだけど、バゥやミコラみたいに的の近くに集中して当たらない。せいぜい20mしか離れていない的で、こんなにバラつくということは、味方に当ててしまうかも知れないし、オレに向いていないということだけははっきりした。バゥはニヤニヤしながら指導するから、コイツ面白がってるな、と思うし、「まぁ、人には向き不向きがありますから」ってニヤニヤしながら言いやがるし。その通りですよ、オレには向いていませんから、う、う、う。


 テレビなんかで、弓を引いてバシッと静止し、パッと放すのって、やってたし、それが普通の弓では難しくても弩で台の上に載せれば上手くいくだろうと思ってたんだけど、どうもそうじゃないらしい。静止しているつもりでも、矢の先が停止せず、常に動いていて、いつ発射すればいいんじゃ?と思うんだけど、これはオレだけだろうか?

 横で見ていた、製作者の2人はバゥの腕前に驚いていて「弓でも、こんなに当てる人はいませんよ」と話している。弓は狙ってもなかなか当たるものじゃないそうで、戦場では数打ちゃ当たる方式で乱打するらしい。


 バゥが褒めてもらったところで、バゥの自慢顔をこれ以上見たくないので、村のみんなにも試してもらいましょう。もちろん、女の人にも。輸送隊の警備に付いてきた人たちも、輸送隊の人たちも。

 驚いたことに、ほとんどの人が弓さえ引いたことがなかった。オレの印象じゃ、男女問わず辺境では戦闘員、だと思っていたけど、弓を練習できるのは一握りの男で、ほとんどの人は剣を使うくらいのようだ。あの村で山賊と戦うときは、女の人は柵の上から大きい石を投げたって。だから、オレが石を投げるというと、みんな微妙な顔つきになって苦笑いしたんだ。


 それで、ただ射ってみても、面白味がないというか上手くならないだろうし、アーチェリーのように的の円を作って点数を付けた的を作った。高得点だから賞品があるということはないけれど、娯楽のない世界で、他よりもっと娯楽のないこの村ではウケた。やらせてみると、男女問わず、上手い人下手な人が出て、意外なことに製作者の2人も上手かった、オレよりずっと。

 やっぱり弓経験者は上手いようで、引き金を引く瞬間を見極める能力のようだ。バゥが偉そうに言うには「矢の先が止まるということはないから、絶えず揺れる中で、的に来た!と思った瞬間にトリガーを引く」んだそうで、そうですか、ありがとうございます。どうせオレには、理解できても、行動に移すことはできませんよ、フン。


 制作者チームから、弩はいくつ要りますか?と聞かれたので40丁にしてもらった。ほぼ村の人数分だけど、壊れたりしても、この人たちがいなくなると修理できないかも知れないんだから、多めに作ってもらうことにした。織田様に献上するのは10丁もあれば良いようで、次の次の輸送隊が来たら持って帰ると言うことで、量産にかかってもらう。矢はできるだけ、たくさん作ってください、とお願いしたら「作りますけど、オレたちが帰るまでですよ」と言われたし。


 バゥさん、製作者チームのお2人に頑張ってもらうために、狩りに行きますか?

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