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マウリポリに着く

 ありがたいことに馬が3頭も手に入ってしまったので、1頭にはマリヤ様とミワさんを乗せ、もう1頭にはおばさん2人を乗せる。が、苦しいか?いや、大丈夫だろう、きっと。カタリナ様はまだ馬に乗るだけの体力が戻っていないので荷車に乗せて運ぶ。荷車に乗っているっていうのも、結構疲れると思うんだけど、仕方ない。それでゆるゆると進む。もう領都から脱出しようとする人はいなくなったのか、移動するだけの体力や財力持っている者はいなくなったのか、街道には人影は見られなくなった。しかし道端には白骨が至る所に転がっている。


 時折、ずっと遠く獣が見えて、種類を問わず、鹿でも牛でも狼でも虎でもオレをめがけて襲ってくるので、スティーヴィーがホイホイと退治してくれ、魔力袋に収納していける。もう遠めに見える獣というモノは、食い物にしか見えなくなってきた。ありがたや。


 道半ばで日が暮れたので、草原の真ん中で野営する。野営の準備はちゃんとしてきているので、何も困ることはない。問題があるとしたら雨だけなのだが、今夜はそれを心配するような空ではない。


 夜番をヤコブたちと交代でする。ヤコブたちは、思った以上に腕が立つということがだんだんと分かってきた。おかげで久しぶりに安心して眠ることができた。


 何事もなく、と言ってもミワさんがカタリナ様を母親と兄の魂に面会させていた夜が明けた。マリヤ様が同じ経験を先に済ませていたことはとても大事なことで、カタリナ様に寄り添って慰めていた。


 夜明けとともに野営をたたみ、出発する。昼前にはチェルシに到着した。前にこの街に来た時もゴーストタウンだと思ったのだが、今はさらにひどい有様で、家がかなり朽ちてきている。人の住まなくなった家はあっという間に朽ちて行くものだが、こんなに早く朽ちるものかと驚いた。

 でもオレたち以上に、支店長とヤコブたちは驚いている。事前にオレが前に来た時のことを説明してあったのだが、それでももう少しマシだと思っていたらしい。黒死病前にはあんなに栄えていた町がこんなことになるとは誰も想像できなかっただろう。もしかしたらブラウンさんたちが、この町まで来ているかと期待していたのだが、それはなかった。両帝国の侵攻を警戒してなのか、それともオーガの街からの補給線が長くなりすぎるので、ここまで進出しなかったのか?


「まだ早いけど、この街に泊まるか?」

 スティーヴィーに訊くと、首を振り、

「ここは止めた方が良いと思う。まだ野営の方が安全な気がする」

 と言う。そうだな、前はヌエがいたもんな。あれだけとは限らない。他にもいるかも知れない。その時にオレとスティーヴィーだけで、マリヤ様たちを守りきれるかどうか分からない。ヤコブたちがいるが、コイツらはきっと獣よりも人相手の方が力を発揮すると思う。いくら索敵が使えると言っても、こんな障害物だらけの街の中よりは、だだっ広い草原の真ん中で野営する方がよっぽど安全だ。


 マリヤ様とカタリナ様は屋根の下で寝たいような顔をしていたが、そのまま出発することにした。支店長だけは、

「この街のロマノウ商会の者たちは、どうしたかご存じでしょうか?」

 律儀に訊いて来た。

「店のあったと言われる所に行ったのだが、廃墟があるだけだった。オーガから領都まで、街道沿いの街をみんな見てきたが、この街が1番荒れていた。ヌエがいたんでそれにみんな食われてしまったのかも知れない」

 と答えると、支店長はうなだれていたがヤコブたちは、ヌエって伝説かと思ってたよ、と会話している。

「ヌエを見たかったら見せようか?まだ魔力袋に入っているし」

 そういうと、ギョッとしてたが、

「いや、結構です。夢に出たら困ります」

 遠慮する3人。


 馬の鞍がないかね?と言ったら、貴族街か運送業者の所に行けばあるでしょう、と支店長に言われ、門の周りを捜すとすぐに見つかった。宿屋の隅に空の厩舎があって、そこに鞍など馬の道具一式が残っていた。蹄鉄やらなんやら残っていて、ヤコブたちは馬の世話をやり慣れていると言っている。というか旅行者に馬の世話は付きもので、オレのようにロクに馬に乗れず世話もできないという者の方が珍しいと言われてしまった。スティーヴィーだってそういう顔をしている。


 井戸で水を確保して、街を出る。そのまま飲めるとは思わないが、煮沸するから大丈夫だろう。いつも思うんだが、重金属とかが入っていたら分からんな。誰が発明したのか鉛白なんてどの世界にもあるし、気にしたらキリがないだろう。コバルトブルーとかカドミウムレッドなんてのもあったよなぁ。健康被害はかなりあると思うんだが、世間を見る目が狭くて、知らないことが多すぎる。

「お風呂に入りたかったなぁ」

 マリヤ様がこぼしていたが、それは贅沢というモノですから。


 途中、野営をして、翌々日にはついにマウリポリに到着した。マルリポリは普通の街だった。門の前に守衛が立ち、入場しようとする者をチェックしている。門から覗く街は人が歩いている。普通の街の風景がマウリポリで見られた。前はかなり荒廃していたのに、見違えるように復興していた。

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