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オーガの町に着いて、村に向かう

 オーガの街は変わっていないけれど、やはり勝ち戦のニュースが伝わっていて信忠様が門を入ると、沿道には人垣ができていて大騒ぎになっていた。さすがに、村の人たちの顔は見えない。


 広場に到着して信忠様は、集まった街の人たちに演説して解散ということになった。オレたち3人は村のみんなが待つ宿舎にやっと帰れる。

 宿舎の玄関には、みんな待っていてくれた。バゥとミコラの家族は心配だったんだろうね、涙ぐんでるし。戦いに行って、五体満足で帰ってくる事の方が少ないらしいし当然なんだろうな。バゥが嬉しくて、カゴから土産を出そうとしてミコラに窘められてる。良い機会だから、今後のことを説明しよう。外ではなんだし、中に入ろう。


 タチバナ村のこと、オレが村主になったことを伝えると、みんな安心してくれたようで、頭を下げてきた。やっぱり心配なんだよね。見ず知らずの街で、根無し草みたいに生活するより、どこかの土地で苦労はしても自分たちで開拓し、住む所を作っていくというのが良いようだ。それで若造だけどオレが村主(むらぬし)だから、より安心してくれたようだ。大変なことも多いと思うけれど、頑張りましょうというとウンウンと同意してくれた。出発日は後で連絡すると言うことで、バゥとミコラがお土産を配る。みんな、戦いに行った者がお土産持って帰るとは思わないから、大喜びで貰ってくれる。いいなぁ、こんな笑顔を見られるなんて思いもよらなかったよ。


 夜になって、いつも通りのメニューだけど、和気あいあいの暖かい空気に包まれ夕ごはんを食べる。もう席は暗黙の了解で決まっていて、オレの横にミン、その隣がノンと3人1家族認定されている。イヤじゃないけど、オレは25にして一児の父になったのか、とちょっとだけ、ほんとにちょっとだけ複雑な思いをするけど、この世界では当たり前のようだし、空気の読めるオレはぐっと飲み込み、ニコニコと夕ごはんを食べる。オレたちの両側はバゥとミコラの家族が座っていて、オレが村主でバゥとミコラが副村主ということなんだろうね。ふと、ジンはどうしているのかな?と考える。

 村に残ったけれど、オレたちと違って、遙かに劣悪な境遇にいるんだろうな。もしかしたら死んでるのかも知れないな、明日、ギレイさんに聞いてみよう。


 部屋に入ると、ノンとミンが待っていた。2人ともほんのちょっとしか離れていなかったのに、とても可愛い。思わず、2人を抱きしめてしまった。

「なによう、どうしたの?」

「痛い~~」

 クレームが入ったので、力を緩めた。

「離れて、寂しかったんだよ。無事戻れて嬉しかった。初めての戦争は怖かった。夢中だったけど」

「アタシも嬉しい」

 うんうん、ミンは素直だね!

「マモル、お帰り。今晩からアタシたちはマモルと一緒に寝るけど、出て行けって言わないでね」

「あれ、いいのか?」

「うん、みんな、いいんだって。うるさいのはガマンするって言われたよ」

「それは、みんなに感謝しないといけないな」

「ねぇ、アタシとミンに魔力を通してみてよ。実はね、アタシは村にいるとき、女みんなに魔力を通してみたの。でも、反応したのはミンと婆さまの2人だけだった。それで、婆さまが魔力持ちは向こうの国に行ったら、きっと役に立つから、魔力を流す練習をしておきなさい、って言ってさ、ずっと2人で練習していたんだよ。呪文は『Cure』しか使えないけど、魔力を流すのは上手になったんだよ。試してみて!」

「へぇー、それはスゴいね。じゃあ、やってみよう」


 3人で手を繋いで、オレから魔力を流してみる。すぐにミンがクネクネしだして、くすぐったそうにする。キャッキャ、キャッキャ言ってノンも身もだえし始めた。

「ダメダメダメ、強いぃ、強いってマモルぅ。もう少し弱くしてぇ、あははは」

 もし外で聞いてる人がいたら、ノンとミンをオレが相手にして致しているように思うんだろうな。でも、違いますから。

 流しているうち、だんだんと流れがスムーズになり、詰まりがなくなってきた感じがしてきた。そうすると2人とも、落ち着いてきて、騒がなくなる。でも顔が紅潮してきて、体温も上がってきているように思う。はい、これから毎日これをやろうね。


 それから、戦の話をしていると、いつの間にかミンは寝てしまった。なんて、親孝行の子なんだろう?

「マモル、やっぱりアタシは心配だったよ。いくらマモルが強くても、絶対ということはないしね」

「そうか、そうだよな。とにかく無事帰ってこられて良かったよ。でも、これからも戦いに行くことはあると思うから、そこは納得してくれ」

「分かってる。それは仕方ないことだし、村のためにもなることだから。それでも無事に帰ってきてくれるか、ずっと心配しているんだと思うな。いつかマモルに捨てられてもね」

 え、いつからそういう話になっているんですか?


「アタシね、マモルに奥様が来ても大丈夫だから。ミンと2人で暮らすから、邪魔はしないから安心してね」

「は、何のこと?」

「何のことって、マモルは知らないの?マモルは貴族様になったから、きっとお偉い様から縁談の話があると聞いているよ。そういうときにアタシみたいのがいると面倒だと思うし、気を使うかも知れないから、今のうちに言ったの。ゴメンね、帰ってきた夜にこんなこと言って」

「そうか、悪いな、気を使わせて」

 そんなことない、オレはノンとずっと一緒だから、と言えない弱いスケベなオレ。異世界ノベルのハーレム展開はこういうところから始まるのかなぁ?

「ゴメンね、さあアタシを抱いてね、マモル」

 夜は更けて行きます。手を伸ばさなくてもノンの方からもたれ掛かって来てくれる。唇を上げてキスを求めてくる。誘われるままにキスを入れると、すぐに舌が入ってくる。オレの舌を求めてオレの口の中でノンの舌が動く。

 今日はどうしたんだろう、えらく積極的で。胸を触るともう乳首が硬くなっている。ノンはオレの手を取って下の方にいざなう。あら!?下は何もはいていないのね!スッポンポンのジョリっとした感触が手に触れ、さらに奥の方はすでに熱い液が垂れている。準備万端なんだ。ミンが起きないよう、目一杯楽しみましょうね!


 次の日、宿の人に教えられて、ギレイさんの役所に行った。ちなみに織田様はすでに領都ギーブに向かって出発されたということだった。

 ギレイさんは町主?町長?代官?町領主?ということで、戦いに行っている間に政務が堪っているので、とても忙しそうで、しばらく、いやだいぶ待って、会ってもらえた。

「マモル、待たせて済まなかったな。おっと、騎士爵授爵おめでとう。ハルキフの戦いの英雄さまの今後の活躍を願ってるぞ」

「ありがとうございます。でも英雄ってのは何ですか、もう止めてください」

「ああ、分かった。それで、今日は何の用だ?」

「ギレイ様に伺って良いのかどうか分からないのですが、タチバナ村への移住のことです。いつぐらいに移住するのでしょうか?」

「そのことか。それは、マモルたちがこちらに来るという話が来た時点で用意が始まっている。正確に言うと、ここに到着してからだがな。あと2,3日で出発することになると思う。さすがにすべてを1度で運べないが、最初に住居などの施設を運ぼうと考えている。あまり、十分でもないが住むことはできると思うぞ。どうする、第1陣の輸送部隊と一緒に向こうに行くか?」

「おぉ、そんなに早くですか?みんなに聞いてみます」

「そうしてくれ。それで返事をくれ。他に何かあるか?」

「はい、実は移住してきた者の中に、私を含めて3名の魔力持ちがいます。ですが、魔力の使い方を教えてもらったことがないので、どなたか先生を紹介して欲しいのです」

「魔力持ちが3名か、たった30人ほどの中に3名もか?」

「はい、私と妻と娘です」

「マモルは分かるが、妻と娘?マモルはこの世界に来て、半年も経っていないのに娘がいるのか?いくらマモルでも早すぎるであろうが?」

「はい、妻とその連れ子が魔力持ちです」

「それはスゴいな。ルーシ王国からマモルの他に魔力持ちが2名来るとは。とんだ拾い物であったな」

「魔力持ちというのは、そんなにスゴいものですか?」

「そうだな、ヤロスラフ王国では千人に1人くらい、魔力持ちがいると言われているのだ。母娘というのは、遺伝したということか?その母の親はこちらに来ていないのか?」

「いえ、母の方は捨て子で孤児院の前に置かれていたそうで、両親の顔も名前も知らないそうです」

「そうか、もしかしたらその母を産んだ女は自分が魔力持ちだったが、ルーシ王国の魔女狩りに直面していたのかも知れない。それで、せめて子どもを助けようと、孤児院の前に置いたのかも知れないな」

「そうですか。そう言われると、そう思えてきました。なるほど魔女狩りの犠牲者ということですか」

「もしかしたら、違うかも知れんがな。それはともかく、魔力を持っている者を、教えられる者はここにはいないのだ。また、そういう文献のことも聞いたことがない。そういうことだから、オダ様に相談してみよう。これは王国にとっても重要な話であるから、悪いようにはならないと思う。連絡を待っていてくれ」

「分かりました。それでは、出発の日をお知らせください。なるべく、私たちも一緒に行けるよう話をしてみます。ありがとうございました」

 一礼して、部屋を出た。

 もしかして、ジンも魔力持ちだったんだろうな。天気が読めるというのも、それが100%当たるというのも異能だし、魔力持ちだからできたんだろうし、どうしているんだろう?聞けば良かったかなぁ。ジンの笑顔が目に浮かぶよ。


 宿に戻り、バゥとミコラに話をして、みんなの意見を聞いてもらうことにした。戦に行った3人は骨休めしていればいいから、他の皆さんは手に職をつけようと、習いに行ったりしているからね。バゥとミコラは体の良い保父さんと化していたけど、本人たちは嫌がっていないんだし、それはそれでいいんだ。

 ノンの親については黙っていようと思う。言ったところで、なんの役にも立たないし。


 バゥがみんなの意見をまとめて、施設運び隊第1陣と一緒に移動することとなった。


 今日が出発することになるけれど、晴れて気持ちいい日になった。村の旅立ちの日が快晴で嬉しい。ギレイ様も見送りに来てくれているし、忙しいのに。

「ギレイ様、ありがとうございます」

「なんの、これからタチバナ村で香辛料が作られると思うと安い物だ。成果を期待しているぞ」

「はい、期待に応えられるよう頑張りますので、ご支援をよろしくお願いいたします。それで、一つお願いしたいことがあるのですが」

「なんだ、難しいことはできないぞ」

「いえ、もしあの村の噂を聞くことがあれば、教えてくださいませんか?」

「そのくらいは大丈夫だ。もう2ヶ月ほどしたら、ルーシ王国から商隊が来るはずだから、それとなく聞いてみよう」

「はい、お願いします。それでは、出発します」

「あぁ。気を付けて行け。それとオダ様からの伝言を思い出した。マモルに早く馬に乗れるようになれ、ということだ。いくらマモルが早く走れるとしても、馬に乗ることは貴族として必要だぞ」

「はい、練習します。ではまた」

 と言って出発した。


 良い天気の下、タチバナ村には昼過ぎには着いた。村のみんなは、ど田舎に住んでいたから健脚を越える健脚で、それに自分の「名前のついた」村に住みたい、というので、ろくに休まず歩いたからだろう。

 途中、バゥが「もうそろそろ、何か獣が出ないかなぁ」とフラグを上げたものだから、お約束で熊が、デカい熊が出て来て、オレが倒すという見せ場があった。

 倒して振り返ると、みんなあっけに取られている。村のみんなも運送業者の人たちも。あ、そう言えば、オレが熊と戦うのを見たことあるのって、ほとんどいないんだ。獲って来て食う、というのはあったけど。

 それでも、村の男たちは笑顔になって、解体を始めた。その間、小休止になってしまった。オレも座って解体を見ていると、輸送隊の隊長?らしい人が話かけてきた。


「最初、荷物を運ぶのにギレイ様が護衛はいらないって言われたんでさ。でもさ、あっしらにすりゃ、こんな何がいるか分からない道を通るんだから、なんとしても護衛を付けてください、ってお願いしたんですけど、聞いてくださらなくて、何を言っても「マモルがいるから大丈夫だ。あいつなら1人で10頭くらい殺れるから」と言われて、結局あっしらだけで来たんですが、もし獣が襲ってきたら、逃げようかと思ってましたよ。

 でも、さっきの熊退治を見りゃあ、ギレイ様の言った通りだったって納得しましたぜ。それにしてもスゴいもんですぜ。あっしも長い間こういう仕事してますが、こんなに強いお人を見たのは初めてです。もし、良かったら、あっしらの護衛をずっとやってもらえませんかね?そりゃぁ、これだけの腕前だ、手当ははずみますぜ!」

 とリクルートされたけど、丁重にお断りした。


 オレが村主だと伝えると、てっきりバゥが村主かと思ってた、と率直な感想を頂いたし。


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