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潰されてしまえ!

 剣を男に向かって投げつける!受け取れ!剣はオレ以外の人間には、持つことができない重さになるはず。受け取ればそのまま剣の重みに、身動き取れなくなるはず。巨人族?大男?どんなに身体が大きくても、これは効くだろう?何回も通用してきている!


 その大男は剣を見て、一瞬目を細めた。ありがたく受け取るはずの剣を、ナゼか剣で跳ね飛ばそうとした。が、剣の重さに負け、跳ね飛ばせず、身体を滑らせて剣を避けた。剣よりわずかに遅れ、オレが大男に飛びこむ。手に武器は持っておらず、大男は不審げな顔をする。大男は両手持ちの剣ではオレを斬るのに間に合わないので、片手でオレを横殴りにしようとする。そのままでは大男のゲンコツがオレの腹を直撃する!そのゲンコツを両手で抱え込む。そして、

『Die』

 と唱えたが、ナゼか『Die』は、はね除けられた感じがした。効いていない?通じない?反射された?もしかしてリフレク?こんな図体しているのに、魔法も使えるなんて反則じゃないのか?コイツは魔法も使えるって変じゃないか?そんな不公平はないだろう?どこかで魔法を掛けているヤツがいるんじゃないのか?ラノベに飛ぶヒールとかあったぞ。アレと同じようなことをしているヤツがいるんじゃないのか?


 頭の中で疑問がグルグル回っている。そんなオレに横薙ぎの剣が襲ってくる。

『Defend』『Defend』『Defend』『Defend』

 早口で唱える。これが破られたら『死』だろう。いいのをもらいそうだ!?


 大男の剣がバリヤに入り、一枚目のバリヤが割れる。実際に音はするはずもないのだが、オレの耳にはバリッ!!という音が聞こえた。すぐに2枚目のバリヤが割れ、3枚目まで割れる。頭の中に絶望のファンファーレが鳴り響く。4枚目、最後のバリヤに剣が届く。さすがに剣の勢いが落ちている。ふっと大男の顔を見ると、勝ち誇った顔で笑っている。剣に割られるのでなく、バリヤに弾力性を持たせて厚みを持たせた気になる。バリヤが剣を滑らせるようにすれば、剣のの勢いに押され、オレの身体が持って行かれ、吹っ飛ばされた。宙を舞って、地面に落ちてゴロゴロっと転がった。


 こいつ強いわ!ケルベロスが強いと思ったけど、やっぱりあっちは獣でこっちは人間?って差だけでも大きいんだと思う。オレが転がって起きようとしたとき、瓦礫の陰に隠れている人影が一つ見えた。全身を黒い外套に包んで、目が光ってオレを見ている。コイツ、何?コイツ、大男の味方だろう?魔法使いか?呪術師?そんなことはどうでもいい!


 地面に落ちてた石を掴んで、そいつに向けて身体を回転させて投げる!ビュッ!と音がして、そいつの足下に石が当たり、跳ね上がった。その石はそいつの顔に当たる。

「ガッ!?」

 そいつが石のエネルギーに負けたように伸び上がった!


「野郎!!」

 大男がそれを見て、慌てた声を出した。やっぱり、アイツが仲間か?それもかなりの重要人物か?オレは大男の相手をせず、石の当たったヤツの所に走る。石の当たったヤツは、石の勢いを受けてスローモーションで浮かんで、落ちて来る。そいつは背は高いが線が細い。落ちて来るときにフードが脱げた。長いボサボサの黒髪、細い目、痩けた頰、無精髭の長い顔、どうみても転移者だろう?こんなところに日本人?いやモンゴロイドか?どっちにしろ、そういうヤツってことか?そいつに向かってもう1度、地面に落ちていた石を掴んで投げた!喉の辺りに命中した!


「グワッ!?」

 そいつが悲鳴を上げた。もう1個と思って石を掴んだところに、オレの足首が掴まれた。振り向くと大男がオレの足首を掴んでいた。グイッと足首を持ち上げられると、一気にオレは大男の頭上にまで上がった。空が見える、このまま地面に叩きつけられてオレは死ぬのか?ミワさんに蘇生してもらえるのか?とふと思ったとき、ガツン!という衝撃があって、足首を掴む力が弱まった。振り向いて下と向くと、スティーヴィーが血まみれになって弓を構えていた。さらに身体を捻り大男を見ると、大男の背中に矢が刺さっている。スティーヴィーの放ったモノなんだろう。スティーヴィーがすぐに2射目を放った。大男の肩に矢が刺さり、ついに大男の手がオレの足首から離れた。


 自由落下しそうなオレ。大男の頭を蹴って自由落下から逃れ、宙に跳ぶ。が、オレが蹴った大男の頭の横をスティーヴィーの矢が通り過ぎた!......ということはオレが頭を蹴らなければ、スティーヴィーの矢が男の頭に刺さっていたのか?申し訳なくて、チラッとスティーヴィーを見ると、スティーヴィーは弓を捨て、剣を握って大男に向かって飛びこんで行く。今度こそスティーヴィーの邪魔をしないようにしないといけない。転移者?の男は倒れている。たったあれだけのことで気を失ったのか?いくらなんでも弱すぎるだろう?


 大男は振り向いて矢が刺さったままスティーヴィーの方を向いた。剣を振り上げて、飛び込んで来るスティーヴィーに降り下ろそうとした。オレままだ着地していない。大男の剣の前に、大岩を魔力袋の中から放り出した。しかし、男は岩をモノともせず斬る!が、ほんの少しだけ降り下ろすスピードが遅くなったと感じた。その一瞬の間にスティーヴィーが大男の脇を剣とともに抜けた。大男の服が斬れ、下の鎖帷子が見えた!

 なんと!卑怯だろう、そんなの着ているなんて!(後で考えると卑怯でもなんでもないのだが)でも、さっきまでの攻撃が何も通らない状態ではない。あの転移者の男が倒れてしまったからか?防御の魔法が切れたからか?


「スティーヴィー!攻撃効いてる!」

 と叫んだがスティーヴィーからは何も反応ない。クルッと向きを変え、大男の背中に向けて斬り掛かる。大男の背中がオレに向く!剣はないが何かぶつけよう!着地して大男に向けて、

『Fire』

 咄嗟なので、ショボい火の玉が生まれた。攻撃力は全然足りてないことは分かっていたけど、やらないよりはマシだろうと思って大男に投げつけた!が背中に当たって消える火の玉。背中に火傷の痕が残ったが、大男はスティーヴィーの攻撃を防ぐのに集中しているので気にしていないようだ。一瞬、大男から離れたスティーヴィーが見える。髪の毛を振り乱し、顔に血が付いている。歯を食いしばって大男に飛びかかる。


 オレはスティーヴィーと向き合う大男の後ろに飛びこむ。そのまま背中に手を当てる。大男がオレに気づき身体をひねる。しかし、さっきのスティーヴィーの矢が邪魔になったのか、スムーズに回らない。その分だけ魔力を溜め、

『Boil』

 と唱えた。普通の人間なら血液が沸騰して死ぬはず。だが大男は身をよじって跳び上がっただけだった。

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