スティーヴィー!!
マモルがかけた『Die』がどれほど効いたのか定かでないが、ケルベロス全体がビクン!とし、一瞬止まった。
まだマモルにヘビは巻き付いたままだ。ということは、もう一度かけることができるはずだ。
『Die』
今度は溜めを作り唱える。ヘビが硬直し動きを止めた。頭を上げスティーヴィーを見る。スティーヴィーの動きが速すぎて、残像しか捉えられない。が、スティーヴィーの腹から血しぶきが上がった!
まずい!!スティーヴィーと二正面作戦で戦っているから、ケルベロスに対抗できている。剣を振り上げ、ヘビを斬り落とそうとしたが、ケルベロスは硬直したヘビを巻き付けたまま腰を振って、マモルを投げた。しかしさすがに威力は落ちており、宙に舞い上がったマモルは余裕がある。横目で見たスティーヴィーの腹に炎が当たるのが見えた。そして地面に転がる。
まずい!まずい!まずい!!
一か八か!剣をケルベロスのヘビの付け根めがけて投げる。すでにヘビは動きを止めていた。剣が深々と刺さり、地面に固定したようだ。マモルは着地してすぐスティーヴィーを見る。その時、レイピアが宙を舞い、スティーヴィーはケルベロスに咥えられて地面に叩きつけられようとしていた。
「スティーービィーーー!!」
なりふり構わずマモルは、スティーヴィーが落ちて来る地点に走りこんだ。レイピアが輝きながらケルベロスの上に落ちて来る。レイピアとスティーヴィーの動きがゆっくりとなる。スティーヴィーの身体に触ったとき、レイピアがケルベロスの身体に刺さり始めたのが見えた。レイピアがまっすぐにケルベロスの身体に吸い込まれて行く。スティーヴィーの身体の重さを徐々に腕に感じる。しかしスティーヴィーの身体があまりに華奢で驚いた。細いとは思っていたが、こんなにも細かったのか!?
ケルベロスの目に憤怒の色が見える。口を開け、何かしようとする。しかしケルベロスの頭の後ろにレイピアが深く入り柄まで入って止まったのが見えた。そしてケルベロスの目から色が消えた。赤い頭、青い頭が黒く変色する。ケルベロスがグラリと傾き、その姿勢で止まる。マモルの剣とスティーヴィーのレイピアがケルベロスを地面に刺し止めている。
マモルは血だらけのスティーヴィーの身体を抱えてケルベロスから離れる。腹の傷は焼かれて血が止まったかに見えたが、また傷口が破れて血が噴き出した。
『Cure』
傷口に手を当て、呪文を唱える。スティーヴィーの顔が真っ白だ。血の気がなくなってきている。
『Cure』
もう一度唱える。傷口が塞がってくる。
『Cure』
さらに魔力を込めて唱える。なんとか傷口が塞がった。しかし失われた血が戻ったわけではない。これ以上は自分では治せない。これはミワさんに診せるしかない!そう判断したマモルはスティーヴィーをお姫さま抱っこしたまま走り出す。
「タ、タチバナさまぁぁーーーー!」
後ろで名前を呼ばれるが気にしない。とにかく早く戻らないといけない!
廃墟の中を走る!とにかく走る!途中で狼の群れに会うが、蹴とばして走り抜ける!




