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オーガを出発しました

 あくる日、信忠様に率いられて討伐隊がオーガの町を出発した。討伐隊というから千とか二千とか思っていたら、思いのほか少なく300人だって。300人と言っても、軍隊というのは必ず、工兵や衛生兵、ごはん作る人、馬の世話をする人が含まれるから、純粋に戦う人というのは半分くらいだそうだ、知らなかった。

 オレは本来、1番の下っ端とは言え、貴族なんだから馬に乗らないといけないそうだが、来たばかり というのと馬に乗れないという致命的な欠点があるので、テクテク歩いて移動する。

 たった300人の部隊だから、遠目に信忠様が見える。さすがに馬に乗るのも様になっていて、おまけに織田家という家系のせいか、後ろ姿もオーラが出ているような気がする。ギレイ様がオレの横で馬に乗っているので、信忠様のことを聞いてみた。おっと、馬のうんこを踏まないようにしないといけない、ひょい!


「オダ様のことを一言で言うと『スゴい人』だな」

「そうなんですか?(同じ『降り人』として、いや日本人として嬉しい!)」

「そうだ、オダ様ほど何でもできる人は、まず、いないな。攻めて良し、守って良し、それでいて内政も間違えず、領地を豊かにする。

 オレの知るところでは、この国で1番であろう。まず戦で負けたということがないというのが、何よりもスゴいぞ」

 こういう自慢話が始まると、必ず横から入ってくる人がいるんですけど、やっぱりここにもいた笑。

「オレもそう思うな。負けそうな退却戦でも、兵をまとめて上手く駆け引きをして崩れそうなところを、なんとか保たせて引き上げられる。オレは、タンネの戦いのときにオダ様に従ったのだが、あのときは見事だった。軍監も驚いていたくらいだぞ、殿を務めて、誰もが死を覚悟していたのに、ほとんど兵を損なわず、逆に敵に打撃を与えて王都に帰ることができたって、言うくらいだったもんな」

「あぁ、タンネの戦いは見事だったって聞いたな。あのときの総司令官だったゼレス公爵様から、直々にオダ様に感謝状が送られたそうだしな」

「オダ様はいったい、誰に教えられたんだろうな?戦も治政も上手いなんて、普通の貴族ではありえんよ」

「そうだよな、オレもそう思うよ。オダ領では前の領主のときの税が六公四民だったのによ、オダ様になって四公六民に少なくされたさ。それなのによ、人は増えて町はでかくなるし、暮らし向きは良くなるし、不思議だよな。オレの家では給料上げてもらったから、かみさんが内職しなくて済むようになったし」

「そうだよな、オレの家もそうだよ。かみさんが、暮らし向きが楽になったって言ってるから、ずっとオダ様の治世が続けばいいって、神さまにお願いしているさ。キーエフ正教のお陰じゃなくて、オダ教のおかげだって言ってるけどな、ハハハハハ」

 こういう話は尽きないんですね、暮らし向きが良くなっているから、尚更だし。

「それにだ、オダ様はかみさんたちに人気あるもんな、いい男だし」

 それは織田家の美男の家系だからでしょう?この世界に来ても、信忠様は美男だと思うし。

「そうよ、年の最後に、お館にかみさんたちをみんな集めて、ブレイコウと言って心行くまで飲ませて食わせてくれるんだから、あれは好かれるさ」

「それにだよ、オダ様はかみさんたち1人1人に声をかけて、酒を注いでくれるんだそうだから、オレにはマネできないよな。ちゃんと名前を呼んでくれるんだそうだ。だから、かみさんからオダ様のために身を粉にして働きなさいよ!と言われているんだよ。まったく、かみさんに人気があるってのも困ったもんだよ、なぁ」

 あーー、それ、聞いたことがある。信長が岐阜城でやってたやつだ。父親の良いことはマネしてるんだね。でも、信長って、あんまり戦が強いって印象がないんだけど?織田家って美男美女の家系だったと思うけど、信忠様はここでも美男だと思うし、部下の奥さんたちには人気あるんだろうな。

「ただな~~これで、跡継ぎさえ、いらっしゃればいいのに、1人もできないからなぁ」

「そうだよな、奥様も、側室様(変換されて聞こえたんだと思う)もいらっしゃるのになぁ、種がないのかなぁ」

「こればっかりは仕方ないよなぁ」


 あれ?確か信忠様の子どもっていたよね?三法師とか(はっきりしないけど)いう名前で、秀吉と柴田勝家の権力闘争の道具に使われたとか?だから、この世界で子どもいないのはたまたまか、それとも『降り人』は子どもができないのか?

 その後は、信忠様の話からだんだん、離れていって夕方前に宿泊地に着いた。さらにもう1日進軍して、いよいよ山賊の根拠地の近くの宿泊地に着き、作戦会議があるということで、オレも呼ばれた。


 会議には全部で20名ほどが集まっていた。

 参謀らしき人から、山賊の説明があった。

「山賊は100から200人ほどがいると思われるが、はっきりしない。それ以上としても、場所から考えて300人というところが限度だろう。

 それで、我々は山賊と言っているが、実はゴダイ帝国の部隊でないかと考えている。ゴダイ帝国が前線基地を作り、近い将来の侵攻の足がかりにしようとしているのでないかと推定される。

そのため、ここで十分に叩いておいて、オダ様の領地から攻め入ることはできない、ということを認識させておきたい。そのためには、単に追い返すだけでなく、イヤと言うほどの打撃を与えておきたい。

 作戦はいつも通りである。先鋒は〇×△(よく聞こえない)が務め、オダ様が本隊を指揮される。分かったな?」

「「「「「「「「「「オウ!!」」」」」」」」」」

 え、分からないんですけど?

「そこでだ、今回初めて参加したマモルに偵察として敵の様子を見てきてもらおう、と思う。マモルら3名だけでは道が不案内であるから、地元のヒューイを付ける。我々はここで1泊し、明日は敵の近くにまで進軍するが、マモルは先行して敵を見て来てくれ。その報告を聞き、改めて明日の夜に打ち会わせる。頼んだぞ」

「分かりました」

 と言うしかない。オレは戦争も戦闘も経験ないけど、バゥやミコラに頼るしかない。と思ったら、オレたちを案内してくれる人がやってきた。

「マモルさん、ヒューイと言います。敵陣地まで案内させて頂きます。よろしくお願い致します」

 とフランクに挨拶されたので、思わず

「こちらこそ、よろしくお願い致します。なにぶん、未熟者で、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します」

 とサラリーマン時代の教え込まれたスキルで挨拶を返してしまった。

 ヒューイさんは笑いながら

「ご丁寧な挨拶ありがとうございます。この後、真夜中に出発したいと思いますので、準備してください。移動は村人の格好をして、荷車を押して行きます。この上にカッパを羽織って行きますから、そのまま集合場所にいらしてください」

 と言うことを言われ、解散した。

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