表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/755

対面、そして

オレが連れて行かれた所は立派な館。ルーシ王国のリューブ様のお館ほどではないけれど、これはこれで立派です。

 馬車を降りてギレイ様に連れられ、どんどん奥に入って行き、ドアの前に立つ。ギレイ様がノックすると中から「入れ」と声があった。

 ギレイ様が先に入り、オレを中に招き入れる。部屋の中には大きなテーブルがあり、その奥に1人の男性が座っていた。見るからに、この世界の人たちとは違う、どう見ても日本人!これが「太田」さんか?すごいイケメンです。オールバックで目元がキリリとして、オレでも惚れそうなくらい。これはモテるんだろうな。身体中からできる人のオーラが出ているし。


「よく来たな、マモル。待っていたぞ」

 その人は立ち上がって、オレに笑いかける。ここは営業スキルの見せ所だ!

「初めまして、太田様。私はタチバナ・マモルと申します。よろしくお願いいたします」

 黒目黒髪で背は160cmほどかな?日本人特有の平べったい顔つきだけど、イケメンである。目が大きく、鼻は高い。この人は日本にいたときはモテただろう。


「?太田?違うぞ、私の名前は、織田信忠だ。誰ぞ、聞き間違え伝えたな。この世界では私の名前を正しく言える者はほとんどいないのだ。いつのまにか馴れてしまってな。とにかく、こちらこそ、よろしく頼むぞ」

 ......織田、信忠。とんでもないビッグネームの人が出て来た、声も出ない。時間が止まります、フリーズ。


「どうした、マモル。そこに座れ」

 示された椅子に座るが、驚いて声も出ない。

「どうした、何かあったか?」

 やっと喉の奥から、ひねり出すように声を出す。

「申し訳ありません。あまりに有名な方なので、驚いて声が出ませんでした」

「ほう、私を知っているのか?それは、嬉しいな。私が『降り人』に会うのは、ここに来て初めてだ。それに加えて、私を知っている者と会うというのは、さらに喜ばしいことだな」

「はい、私は織田信忠様より500年ほど後の世界の者ですが、私の生きていた世界でも織田信忠様の名前は広く知られています」

「ははは、それは父上の名前が知られているのであろう。まあいい、とにかくよく来てくれた。歓迎するぞ。私はここに来て10年ほど経つが、やはり同じ日本に住んでいた者と会うのは嬉しいものだな」

「はい、私も初めて『降り人』と会いました、とても嬉しいです」

 と話していて、話が尽きないかと思っていたら、ギレイ様から横やりが入った。


「オダ様(オータからオダに脳内変換されています。この世界の人が織田様を言うときはオダ様と聞こえます。以下略)、そろそろ本題の話をしないといけません」

「あぁ、そうであったな。マモルの将来の道筋をどうしようと考えているのか、伝えておく必要があったのだった。嬉しくてすっかり忘れておったよ。

 まず、マモルには準騎士爵は渡してあるな?これで、マモルはヤロスラフ王国の貴族の一員ということだ。それで、何かしら手柄を上げると、自然と上に上がれる。この国で誰もが認めるような手柄を上げ、早く上に上がってくれ。

 私は、ルーシ王国から移住してきた者たちを、一ヶ所にまとめて住まわせようと思っている。そしてマモルが手柄を上げ、準男爵くらいになれば小さいながらも領主にすることができる。そのために、戦いに出て手柄を挙げよ。もちろん、農業で成果を上げるのも良いが、それでは時間がかかるであろう?そうなると、他から横やりが入り、都合の悪いことが生じることもある。だから、戦いで手柄を挙げるのだ」

「戦場ですか?」

「そうだ、戦場だ。私がこの町に来ているのは、マモルに会うためでなく、実は賊を討伐するために来ている。この町から3日ほど行ったところに山賊のねぐらがある。そこを始末するために、来ているのだ。その討伐にマモルも同行して手柄を挙げよ。そうすると騎士爵にすることができる。

 もちろん、戦えば死ぬかも知れぬ。しかし、それも運だ。それごときで死ぬようであれば、マモルはそれだけの男であったということだ。だから、私に同行し戦い、手柄を挙げよ」

「分かりました。同行致します。それで出発はいつでしょうか?もし、あの村の者で戦える者がいれば、同行させてもよろしいでしょうか?」

「良い、同行させよ。武器や防具はこちらで用意させる。2日後の朝に出発する。準備しておけ」

「分かりました。ありがとうございます」

 と言うことで、さっそく討伐隊に加わることになった。


 ギレイ様に連れられ宿舎に戻った。そこで、みんなを集められ、ギレイ様から信忠様の意図を伝える。みんなで一緒に暮らせること、オレが準騎士爵になったこと、ゆくゆくはオレが領主として治めることになること。そのためには、まず手柄を上げ、この国の人たちに認めてもらうこと。

 オレが準騎士爵になったと聞かされて、微妙な顔になった人もいたが、とにかくみんな一緒に暮らせ、オレが治めるという道筋が見えたことで、納得したようだ。

 それで明後日、山賊の討伐隊にオレが加わるという話を聞いてバゥも加わると言い、もう1人名乗りを上げた。確かミコラさんだったと思うけど、聞けば昔は騎士で剣と弓が使えるという。ギレイ様にお願いして、オレ、バゥ、ミコラの3名で討伐隊に加わることにした。

  

 夕ごはんは、久しぶりにちゃんとした暖かい食事だ。村の人たちは、元は領都などの、あの村以外に住んでいた人ばかりだそうで、本当に嬉しそうに食べている。中には泣きながら、嗚咽を上げながら食べている。「生きてまた、まともな食事が取れるとは思わなかった」と言っている人もいるし。みんな最低一度は死線をくぐってきたんだろうね、今晩の食事は格別なんだろう。

 

 部屋に入り、魔法の練習をしていると、ノンとミンがこっそりとやってきた。オレが信忠様に会っているときに、村のみんなが丸ごと、町の銭湯に連れて行ってもらったそうだ。オレが宿場に連れて行ったとき『Clean』をかけたけど、風呂は初めての経験で、驚きもしつつ、大喜びだったらしい。銭湯の人は、とんでもなく汚れるかと思ったけど、大して汚れなくて、感謝されたって。

 それでどうしてオレの部屋に来たのか聞いたら、みんなに行けって言われたって。村の人たちはオレに何もできないから、せめてノンと夜は一緒にさせて過ごさせようと思ったそうだ。

 ありがたいような、悪いような、気を遣っていただいて、まぁ好意はそのまま頂いておくことにします。

 ノンからオレが領都に行ってから、宿場に行くまでのことを聞く。アン、ジン、婆さま、残してきた人たちのことは気になるけど、とにかくここで暮らして行くしかないんだから。

 話をしているうちに、ミンが寝てしまった。ノンが、2人っきりだね、っと笑う。でも聞いてる人がいるかもしれないよ、って。そりゃ、今夜は何もしないよ、宿舎の人も聞こえたら、呆れるだろうし。でも、ノンを抱きしめると、女の香りに包まれる。あれ、前は匂いしなかったよ?なんで?もしかして『Clean』って、匂いも臭いもみんな消しちゃうのかな?あれれ、功罪半ばだよ、魔法の呪文って。

「マモル、ありがと。マモルのお陰で、アタシたち、ここまでこれたよ。アタシはこぶ付きだし、マモルが領主様になったら、きっとお貴族様から奥様を貰うだろうけど、それまでアタシで良ければ、マモルの相手をさせてもらうから。あ?もう、マモルはお貴族様だったから、アタシみたいなものが、一緒に寝たらいけないよね?」

 ここまで来て何を言うやら。でも、久しぶりに女の香りが鼻を抜けると、脳から下半身に信号が伝わり、息子がムクムクと自己主張をしてきた。ずっとずっと溜まっていたんですよ、息子の我が儘を、ずっとガマンさせていたんですよ、ノンさん。

「あはは、大きくなっちゃったね。今日はしないんだよね、マモル。だからアタシが慰めてあげるよ。ベッドに横になって」

 と言って、寝っころがったオ上で上でノンはズリズリと頭を下半身に移動させ、息子を和ませてくれた。で、でも、口に咥えてもらったら自然と手が伸びるじゃないですか、ノンの胸が見えるのに、それを触らないって無理な話でしょう?胸を触ると自然に頂きに指が伸びますがな。頂きが指に触れるとごくごく自然に指が動く。すりすりしていると、咥えたままのノンの口から「あん♡」なんて声が聞こえて来る。それだけで最初の噴火を迎えてしまった......。


 ゴクンゴクン飲み込まれても、息子は元気なままで起立を止めない。ちょっと柔らかくなっているかも知れないけど、自分では分からない。ダメだ、このままでは収まりが付かない。ノンの腰を誘導してオレの顔に持ってくる。ほら、シミができてるって。匂いがしているんだもの。ちょこっとパンツを除けて中を見ると、ほらね、温泉が湧いてきているでしょ?ね、ノンも待っているんでしょ?ガマンしているだけでしょ?ほらほら、始めますよ♡



 朝起きるとノンはおらず、ナゼかミンが添い寝していた。この世界に来て初めて、幸せな朝を迎えたような気がする。

 食堂に行くと、みんな朝食を取っていた。ノンはメイド服のようなものを着て、まかないの手伝いをしている。なんか新鮮ですな。他の人も村の弥生時代の服装でなく、普通の洋服着ていて、何か違うなぁ。


 朝食の後は、オレとバゥとミコラは討伐隊に行き、他の人はこれからの生活のプレゼンテーションがあるとのこと。どうやって生活していくかの役割分担と職業訓練も必要なんだろうし、この先は問題だらけなんだけど、ここにいれば希望は持てるから前向きだよね。

 

 ギレイ様から迎えが来て、3人で討伐隊に向かう。考えてみると、村のみんなみたいに、これからどうやって仕事を見つけるか考えるより、オレたちみたいにやることが決まっている方が楽でいいや。

 馬車の中で、ミコラさんの話を聞く。ミコラさんは領都では子爵の部下で騎士を勤めていたそうだ。騎士だから、下の名前?があって、その時はミコラ・レオンという、かっこいい名前だったそうだけど

「あの村に着いたときから、レオンという名前は捨てましたが、このようにまた名乗る日が来るとは、夢にも思いませんでした。あの村で1度死に、ここに来てよみがえりました。マモル様、本当にありがとうございます」

 って言う。そして

「マモル様が引っ張ってきて頂いたお陰で、このようにまた人並みの生活ができようとしています。私はこれから、マモル様の家来として仕えさせて頂きます。よろしくお願い致します」

 と頭を下げて挨拶された。イヤイヤ、オレみたいな若造に頭を下げたらいけませんよ、と思っていたらバゥも頭を下げて

「ミコラの言う通りだ。オレもマモルのお陰で、イヤ、マモル様のお陰でここまで来た。これからは家来として仕えさせて頂く。よろしくお願い致します。これまでの、恨み辛みはあるかも知れないけれど、それは水に流して頂きたい」

と言われてしまった。

「こちらこそ、よろしくお願い致します」

 前の世界では、人に使われるばかりで、使ったことなかったけど、とにかくやっていくしかないから。


 討伐隊に着いて、バゥとミコラの武器を見繕ってもらう。それとオレも防具を合わせろって言われた。そう言われれば、鎧兜って着けるんだよね。鎧って言っても革鎧でした。兜はヘルメットもどきだったし、なんか新鮮だ。これなら動きもあまりさまたげられないと思う。

 まず、馴れることが必要だと思ったから、3人で剣の練習を始める。ミコラさんは、さすがにブランクが感じられるけど、騎士として剣をならい、使ったことのある人の動きらしい。ミコラさんはあの村では騎士だったことを言ってなかったから、ほとんど剣は持たずにいたそうだ。バゥもミコラさんの剣さばきを見るのは初めてだそうで「オレより上手いな」と呟いた。バゥの専門は弓矢だから大丈夫ですよ。

 オレが剣の素振りを始めると、討伐隊の人たちが集まってきた。ギレイ様から聞いてる人もいるようで黙って見ている。

 中から、少し年とった人が出て来て

「マモル、オマエの剣は独学だろう。今のままでも、十分強いだろうが、正式な剣の使い方を学べばもっと強くなる。今はまだ無駄な動きが多すぎる。オレで良ければ教えるがどうだ?」

 と言ってくる人がいるけど、そう言われれば教えて貰うに限るでしょ?

「お願いします」

 と言うことで、さっそく先生に教えてもらう。その人のいうには、オレはまだ変なクセが付いていないので、指摘した所がすぐに直るし、教えるのが楽しいと言う。それはそうです。だって、この世界に来て剣を使い始めたんだし、まだ2ヶ月弱ほどしか経ってないんだから。

 鬼コーチの指導よろしく、汗だくになりながら練習した。相手の剣を巻き上げて、跳ね上げるっていう技を教えてもらった。ただ、コーチの言うには剣と剣を合わせるのは極力行ってはいけないと。剣を相手と合わせると、刃が欠けたり、折れたりすることもあるから。高価な剣だったり、よく斬れる剣だとそんなことで剣が痛むことは避けたいから、まず1刀で相手を斬ることを考えよ、だそうです。1対1の決闘ならともかく、多人数の戦闘の場合、1度剣にダメージを受けると、剣が切れなくなったり、早く振れなかったりするので、剣で受けず、流す、躱す、そして斬る、ということだそうだ。


 オレの剣の早さなら、まず受けることのできる相手はいないらしく、よく踏み込んで斬る、ということが大事なんだと。剣を持って相対していると、相手の剣の間合いの範囲に入ると、斬られるのが怖くて、どうしても腰が引けて、自分の間合いの外から剣を振ってしまい、相手に届かず、そこを斬られてしまうことが多いそうだ。だから、恐怖心をおさえ、相手の間合いに入りすぎる気持ちで踏み込まないと後の先を取られて斬られてしまうぞ、と教えられる。んんん、意識したことがなかった。

そして、振りかぶって斬るより、オレみたいに剣先を後ろに隠すようにして振り上げる斬り方は、剣の長さが相手に分かりにくいので間合いが伝わりにくく、相手から見て、オレが間合いに入っていないと思っても、実際は踏み込んでいて剣先が届くだろうから、このままの構えで練習して速く斬り上げることを目指しなさいって。

 普通は剣が重くて、下から斬り上げるのは、剣の早さが伴わなくて、躱されていましそうだが、オレの剣の早さはきっと相手が思う以上なので、必ず何かダメージを与えるだろう、と。最初の1刀で相手に1㎝でも5㎜でも傷を負わせることができれば、相手は必ず動揺するから、振り上げた剣を間合いを置かず、斬り下げることで、2刀目は必ず相手に深手を負わすことができるから、倒せると言ってた。


 オレはマモルの味方で良かったよ、オレが初見でマモルの相手をしたら必ず殺られるな、と言って笑ってた。先生がそれを言っちゃあ、ダメでしょうが、あははは。


読んでいただき、ありがとうございます。

ビッグネームを出しましたが、人物像などなど、すべて私の創作ですのでご了解願います。皆さまの思い入れがあるとは思いますが、これは個人差ということで、こういう解釈をするヤツもいるんだ、くらいの思いで笑い飛ばしていただけるとありがたいです。個人的には、織田信忠という人はもっと評価されても良いのでないか?と思います。本能寺の変で信長が急死して、もしそこで死なずに明智光秀から逃げおおせて、信忠がそのまま政権を受け継いだとしても、問題なく運営できたのでないかと思います。もし?ということがよく言われますが、少なくとも豊富政権はなかったろうなと想像しますが、いかがでしょう。

さて、新しい国でマモルたちの生活が動き始めます。マモルの地味な活動が少し、派手になります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ