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スティーヴィー 語る

 マモルが1人で走って行き、村には5人の女と娘が残った。後は迎えが来るのを待つだけである。待つだけと言っても、敵や獣が来たら撃退しないといけない。


 朝の片付けをして、寝床をたたみしまう。それでもうすることはなくなってしまった。夕べ、獣の襲来騒ぎがあったので、みんな眠い。


「順番に見張りに立って、少し眠りましょうか?」

 ミワさんの提案にみんな頷く。

「私が最初に見張りに立ちます」

 スティーヴィーが言うから、

「じゃあお願い」

「スティーヴィー、気をつけてね」

 モァ、ユィが声を掛けた後、スーフィリアも声を掛けようとしたところ、

「人が来る」

 とスティーヴィーが言い出した。


「街道を通る人じゃないの?通行人がいたとしても不思議じゃないし」

 モァが言うと、スティーヴィーはコクンと頷きながら、

「そうかも知れない。でも何か捜しているようにして7人がばらけてこっちに向かっている」

 声を少し抑えて言う。

「ここを目がけて来ているのかしら?」

 ユィが聞けば、

「そうかも知れない。近づくにつれて遅くなった」

「先にこちらから攻撃しましょう」

 スーフィリアが提案するも、

「相手はバラバラになっている。それに結構離れているから居場所が分かるのは私だけ」

 スティーヴィーが答えると、

「確かにそうね。じゃあ、ここを移動しましょう。そして私たちが逃げるのを追わせるようにしましょうよ。草原に出れば向こうはまとまるのじゃないかしら?」

 ミワが提案する。そうすると、

「それがいい」「そうしましょう」「賛成です」「わかった」

 賛同が得られ、5人はスティーヴィーが示す、相手がまだいない方向に進む。


 5人は村を抜け、草むらに身を隠す。ミワのおかげで虫が来ない。4人はこれが当たり前になっているが、スティーヴィーにとっては草むらに身を潜めていて、虫が寄って来ないのは不思議でならない。だが快適なので黙っている。


 7人のうちの1人が見えた。手に剣を持って、慎重に屈みながら歩いている。身ぎれいなので盗賊のようには見えないが、だからと言って敵意がないと決めつけるわけにはいかない。


「殺す」

 スティーヴィーが言うと、4人は、

「ダメよ!」

「捕まえましょう!」

「呪文を使ってなんとかしましょう!」

「あまり手荒なことをしない方が?」

 などというがスティーヴィーは、

「変に生かして捕まえようとすると、戦い方が中途半端になって、逆にやられることがある。そういうのをたくさん見て来た。魔法を使うのは必ず音が出る。だから他のヤツに知られないように片づけるのは、私に任せて欲しい。誰か剣か弓が使える方がいらっしゃれば手伝って欲しいが?」

 と聞いてきたが4人とも首を振る。誰も剣も弓矢もろくに使えないのだ。

「では行ってくる」

 スティーヴィーは青い髪をたなびかせて、剣を持つ男に近づいていく。


「ねぇ、スティーヴィーって話すようになったと思わない?」

「そう、たくさん話すようになってきた」

「私たちに意見を言うようになりましたね」

「やっと馴染んでくれたみたい」

 4人がそれぞれ感想を言っている中、スティーヴィーはあっという間に男の背中に到達して、剣を抜いて一気に首を斬る。男は血しぶきを上げながら、声を上げること無く倒れた。


「スゴい!」

「躊躇なく斬った」

「一気ですね」

「怖いくらい」

 と言っているうちに、スティーヴィーは視界から消えた。


「スティーヴィーがいなくなった?」

「どこに行ったの?」

「違う相手のところです」

「もう?」

 スーフィリアだけがスティーヴィーの行方を追えている。


 しばらくして

「みんなーーーー!こっちにきてぇぇぇーーーー!!」

 スティーヴィーの声が聞こえてきた。

「呼んでるね?」

「うん、呼んでる」

「私たちのコトです。行きましょうか?」

「まさかと思うけど、もう全部倒したのかな?いくらなんでも早くない?でも行こうか?」

 ためらいながらも4人は声のする方に行った。


 夜を明かした家の周りに、息絶えた男たちが倒れていた。スティーヴィーが立っている足元にも1人倒れている。よく見ると男は腹を斬られて、肩でゼイゼイと息をしている。周りに血が広がっている。


「スティーヴィー、コレは何?」

 モァが聞くと、

「1人だけ生かしておいた。腹を斬られると治療のしようがないと聞く。2日3日経つとものすごい痛みが出て来て、狂ったように転げ回るようになる。そして苦しみながら死んで行く。だから腹を斬られた者は、早く死にたいと願う。こいつは、後で死んだ方がマシ、と思うくらいの痛みを味わうはず」

 顔色1つ変えずにスティーヴィーが言う。モァユィスーフィリアの3人は、悪人ならそんなの当たり前、と考えているが、ミワは、そこまでしなくても、と思っている。


「オマエ、早く死にたいか?」

 スティーヴィーが聞くと男は、

「はぁ、はぁ、あぁ、早く死なせてくれ。あんな痛みは味わいたくない......」 肩で息をしながら言う。腹からの出血を見れば、そんな長く生きられず、半日も経たないうちに死ぬかも知れないが。


「オマエはどこから来た?どうして私たちがここにいるのを知った?正直に言えば殺してやる」

 スティーヴィーの問いに男は、

「はぁはぁ、オマエたちのことを、仲間が見ていた......はぁはぁ、極上の女たちがいるって......護衛の男1人がいて、そいつがかなり強いと聞いていた。はぁはぁ、でも、今朝、その男がいなくなった......なら女だけが残ったし、頂いてしまおう、って話になった。はぁはぁ、うまく行くはず......だったのに、どうして、こ、こんなこと、なったのか......はぁはぁ、早く死なせて、くれ......」

男の言葉を聞いてスティーヴィーは4人を見て、

「分かった?もしかしたら、コイツはウソを言ってるかも知れない。ただまともなヤツではないということだけは、はっきりした。こいつも始末していいか?」

 と言うからみんな首を縦に振る。

「分かった。では殺す」

 一言言って、スティーヴィーは剣を光らせる。男の首から血が噴き出す。噴出した血もだんだんと勢いを失い、男はコト切れた。


「コイツは本当のコト、言ったと思うけど?」

 モァが言えばユィも、

「そうね、いまさら助けれるはずもないし」

 と答える。

「でも、まだ仲間がいるかどうか言いませんでしたよ?

 スーフィリアの疑問に、

「あっ!?」

 スティーヴィーがしまった、という顔をする。

「スティーヴィー、仕方ないです。もし襲って来ても戦って倒すだけですから」

 ミワさんが言うと、

「すみません。功を焦りました」

 スティーヴィーが素直に謝罪する。

「イイよ、仕方ない。でもスティーヴィーはどこでこんな自白のさせ方、知ったの?」

 モァが聞けばスティーヴィーは、

「ロビィ様がしているのを見て知った」

 ちょっと顔を赤らめながら言う。さっきまでの、なんのためらいもなく人を殺すスティーヴィーとは同一人物とは思えないと4人が思いつつ、ユィが、

「ロビィ様って何でも知っているのね?」

 と問えばスティーヴィーは嬉しそうに、

「うん。ロビィ様は子どもだけど何でも知っている」

 と答えるからスーフィリアが、

「でも子どものロビィ様にスティーヴィーは抱かれたのでしょう?」

 改めて聞くとスティーヴィーは顔を真っ赤にして、

「は、はい。そ、そう......」

 と答える。

「その時のコトを思い出したんでしょ?」

 ミワが聞くと、スティーヴィーは首を振り、

「そ、そんなこと、ない。ロビィ様は優しかった。とっても優しく愛してくれた」

 聞いてもいないことを語りだすスティーヴィー。

「へぇーーそれで?ロビィ様はどうやってスティーヴィーを口説いたの?」

 モァが聞くと、スティーヴィーは顔を手で覆いながら、

「く、くどいた、なんてコト、ない。夜伽に来いと、言われた」

「「「「えーーーーー!!よとぎーーーーー!!」」」」

 4人が絶叫する。それから、スティーヴィーは初めて抱かれた時のことを根掘り葉掘り聞き出され、言わせられた。スティーヴィーはもちろん顔を真っ赤にしているが、残りの4人も真っ赤な顔をして聞き出す。それでスティーヴィーはだんだんと普通に話すことができるようになってきた。無理矢理、話すようにされることで、滑らかに話せるようになった。もちろんスティーヴィー本人は気づいていない。スティーヴィーの除く4人はそれが分かっていたが、黙ってスティーヴィーの成長を感じている。


 4人はスティーヴィーの初体験の話に大いに盛り上がっている。足下に男の死体を放置したままで。




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