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夜襲あり

 その後もワチャワチャと女たちがうるさい。新キャラが入ったということもあるけれど、スティーヴィーは、ユィモァから見て愛玩動物に見えているような気がする。スーフィリアの代わりにかまう相手が見つかったという感じか?とにかく話しかけて話しかけて、スティーヴィーの返事を少しでも多く引き出そうとしている。


 最初はとまどっていたスティーヴィーも、ユィモァに無理矢理順応させられてしまっている、というのか。迷子の子猫を拾ってきて、最初はミャアとも言わず警戒して餌にも近づかなかったのが、だんだんとニャアと言い出したような状況に似ていると思う。


 それにしても美形というのは、どうしてこんなにアドレナリンを出させるんだろうか?出しているのはオレ以外だが。ま、オレだってモァたちがこんなに騒がなければ、もっと舞い上がっていたかもしれない。キレイだもんなぁ......スーフィリアだって美人だけど、もうちょっと女性らしさが滲んでるし、胸だってある。ユィモァは完璧美少女だからスティーヴィーとは完全に路線が違っている。スティーヴィーの毅然とした中性っぽい佇まいは、そのなんだ、何というか、まあ、引かれないわけはない。


 とにかくワチャワチャしたまま夕食に突入し、就寝となった。順番に夜の番を勤める。最初にオレとミワさんが組んで番をしている。

 遠くに狼の群れを感じる。オレたちがここにいることを認識していて、襲おうかどうしようか迷っているようだ。10頭から15頭くらいいると思う。

 今になって思い出したけど、オレってこんな原っぱや森の中にいると、獣を呼ぶんだったよ。


 狼の群れとは反対側に大型の獣が近寄ってきた。アレは熊か?虎か?象ではないけれど、かなり大型の獣。それにかなり敏捷性のある獣か?まさかスティーヴィーの転移のお祝いでケルベロスではないよね?またヌエが来たら泣いてしまいそうな気がする。というかオレたち全滅か?でも今の娘たちならなんとかするのか?


「敵が来た?獣?」

 突然、声がして驚いた。声を出したのはスティーヴィー。オレでも辛うじて感じているのを、スティーヴィーはテントの中でも分かったのか?横のミワさんは眠そうな目をこすっている。一応、ミワさんも夜番だったんだけど。


 スティーヴィーにつられたのかモゾモゾと3人娘が起きてきた。

「どうしたの?」

「何か来てますか?」

「獣でしょうか?近づいていますね」

 スーフィリアが1番緊迫感を持っているわ、いつものコトだけど。


 狼たちの動きがあった。決心したようで、ソロソロと近づいている。どうしようか?まだ距離があるけど、反対方向の虎?と同時に襲いかかられると厄介だ。

「タチバナ様、弓を持っておられますか?」

 オッと驚いた。スティーヴィーが普通に喋ったよ。

「タチバナ様?」

 オレが驚いてフリーズしているともう一度聞かれた。


「いや、スティーヴィーが普通に喋ったから驚いたんだ」

「はぁ!?」

 スティーヴィーがムッとしている。が、これも絵になる。暗くても美形は目の保養になるよ、まったく。


「はい、これ」

 と昼間に敵が持ってた弓を渡す。スティーヴィーが弓を手に取り、スッと弦を引く。驚いたことに目一杯引いた。あぁぁぁ、胸が邪魔になっておりません!どこかの誰かが、弓を引くと胸が邪魔になって、胸を削ってしまいたい!とおっしゃっていた女性もどこかにいたなぁ......確かケンタウロスの女性だったような?どこぞのラノベの話ですけど。


 とにかく、キリリとしてスティーヴィーが弓を引く姿に見とれている3人娘とミワさん......スティーヴィーが何をしても見とれる時間というのが存在している。この展開はいつになったら平常モードになるんだろう?


「矢は......ありますか?あれば頂けませんか?」

 スティーヴィーが普通に喋ると感動する......。

「ホイ!」

 と10本ほど出して渡す。ジィーーーっと矢を見るスティーヴィー。どうも気に入ったようではないようだが、それでも1本抜き取り、矢をつがえてヒュッと放った。いとも無造作に放ったように見えたんだけど、これが気持ちイイくらいに狼の群れに飛んでいく。先頭を走る狼の頭を射抜き、狼が転がった。


「あっ!?」

 あんまり見事に当たったので思わず声を出したしまった。

「スティーヴィー、アレは狙ったの?」

「はい......なんとなく」

 きっと、なんとなくではなく確実に狙ったんだよね。一瞬で狙いを付けて放つ。スティーヴィーは次々と矢を放つ。


「ねえ、何をしたの?」

 モァが縋り付いて聞いてくるから、

「今、スティーヴィーの放った矢が狼を仕留めているだよ」

「ええっ、ホントですか?」

「スゴいです!?」

 娘たちの賞賛が止まない。しかし後ろから大型の虎が走ってきている。それも異常なほど速い!んん!?虎じゃない?もっと大きくて凶暴なヤツ!ヌエかぁぁぁーーーーーーー!!


 オレの心配をよそに、

「私に任せて!」

 こんなときの1番手のモァが言う。

「引きつけるわよ!待ってて、待って、待って、まって............『Thunder!!』」


 周りが一瞬昼のように明るくなった。と同時にバリバリバリぃぃぃーーーー!!という空気を切り裂く音がする。そしてドオォォォ-----ン!!と轟音と振動が伝わってきた。

「やったわ!!」

 自慢そうなモァの声が聞こえてくる。だが、反対方向の狼はまだ残っている。スティーヴィーが矢で射殺したのが6頭で、まだ走って迫ってきているのが7頭。オレとスティーヴィーなら全部剣で倒せるはずだ。


 踏み出そうとしたとき、

『Ice Javelin』

 と声がして、夜目にもきらやかな氷の槍が狼に向かって飛んで行く。氷の槍は狼を狙ったように誘導され次々と射る。氷の槍で狼は全部地面に縫い付けられた。

「えへへ、私の魔法をスティーヴィーに見て欲しかったの」

 はにかみながらも、スティーヴィーを見ながら言うユィ。後ろでフン、フンと鼻息の荒いスーフィリア。きっと自分も見せたかったんだろうな。昼間に転移者と戦ったとき、十分に見せただろうに足りなかったのか?


「スティーヴィー、アレのトドメを刺してよ」

 モァが振り返ってスティーヴィーに頼むと、

「ハイ!」

 スティーヴィーは身を翻し、ヌエに歩み寄っていく。

「それ、まだ死んでないの。気絶しているだけだから」

 モァがそう言ったとき、ヌエがぬくっと頭をもたげた。

「危ない!!」

 ミワさんが叫んだけど、全然危なくなかった。


 スティーヴィーは剣を横一閃、ヌエの喉を切り裂いた。またもやスティーヴィーはヌエの血を全身に浴びるが、ヌエは事切れた。



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