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無双する

 光が消えたとき、敵は誰も立っておらずステファニーさんが立っているだけだった。


「ステファニーさん?」

 モァが聞くと、ステファニーさんはちょっと恥ずかしそうな顔をして、

「さん付けは、その、や、止めて、く、ください、ませんか?」

 語尾を変に上げて言う。ステファニーさん改め、ステファニーは人付き合いが下手というか、人見知りが激しいんじゃないの?要はコミ障ってことで。


 そんな子が転移したって、まったく知らない人の中で生きて行くってハードル高いなぁ。神様は転移するとき、外交的な性格にするとかできなかったんだろうか?今さらそんなこと言っても仕方ないけど。ラノベで引きこもりのオタクが転移して、なーんてそれはほぼ無理だと目の前の事例を見て思う。


「ステファニー、スゴい!」

 ユィが言うと、恥ずかしそうに目を逸らして下を向く。

「敵はどうした?弓を使っていた者たちは?」

 オレが聞くと、地面を指差し、

「倒した。そこ、と、そこと、そこ」

 死体が3つある。3つとも首に一太刀入れている。レイピアで首筋を斬り裂くというのはスゴい腕だ。血塗られたレイピアを一振りして血を拭う。ためらうことなく人を斬り殺すことのできる心と腕が揃っている美少女がステファニーか。ただし血を浴びてすごいことになっているけど。ブラッディー・ステファニーね。


 殺された死体を見ると、中の一人はたぶん日本人だろうと思われた。オレと同じ、平たい顔。そして髪の毛の先は茶色だが根元は黒い。茶色に染めていた髪が伸びていたんだな。手に弓を持っているが、弓の能力をもらってクロダと一緒にやんちゃしていたんだろうか?


「剣、すっごいね!ステファニーさん、神様から能力もらったの?」

 ミワさんが聞くと、ステファニーはこっちを向いてすぐに目を逸らし、

「そう。もらい、ました。前の世界で、敵からロビィ様を守ろうとして、守れなかったから......」

 と言い、涙をこぼす。


 何がどうして泣き出したのか分からず、オレたちは当惑する。

「大丈夫よ。そんな泣かないでステファニー」

 ユィがステファニーの肩を抱いて声を掛ける。


 ひっくひっくと嗚咽を漏らしていたステファニーが突然顔を上げて、

「私は、ステファニーという名前があるけど、実はスティーヴィーと呼ばれていた」

 と言い出す。何を言い出すんだ、この娘は?でもステファニーは続けて、

「見た目が男だから、兄が、私のこと面白がって、スティーヴィーと呼んで、そしたらそれが広まって、誰もステファニーと呼ばなくなって、スティーヴィーと呼ばれるようになった」

 気の毒な話に言葉が出ない。でもそういうのってありそうな気がする。兄だって悪気があったわけじゃないと思うけど、得てしてそういうことってあるよね、ってヤツ。


「かわいそう!じゃあ、私たちはステファニーって呼ぶからね!」

「そうする!」

「分かりました、ステファニー!」

 と3人娘が宣言したにもかかわらず、

「いえ、スティーヴィーとお呼びください」

 と答える。なんかこの娘、すごく屈折しているんだなぁ。オレには手に負えないわ、きっと。

「どうして?ステファニーってかわいい名前があるのに、どうしてスティーヴィーって呼ぶのよ!」

 結構微妙なポイントだと思うけど、ためらうことなく切り込むモァ。このメンバーの中では、それをできるのはあなただけです!」

 ステファニーはなぜか少し顔を赤らめて、

「あの、それは、ロビィ様が、そう呼んでくれていたから......」

「ロビィ様って誰?」

 容赦なく聞くモァ。ステファニーは目をキョドらせて、

「あの、ご主人様?」

「どうして疑問形なの?」

 モァに任せておけばみんな聞いてくれる。

「あああ、そ、その、わ、私と、そのロビィ様は、そ、その......」

 絵に描いたようなアワワを繰り広げるステファニーに対し、

「要は、ロビィ様がステファニーのご主人様で、ご主人様の手が付いていたと言うコトね!」

 モァが決めつけると、

「ハイ......」

 と下を向き、真っ赤になるステファニー。


「愛するご主人様がスティーヴィーと呼んでいたので、スティーヴィーと呼んで欲しいということね?」

「ハイ......」

 ステファニー、いやスティーヴィーの声がさらに小さくなる。

「ちなみにそのロビィ様ってどんな人だったの?貴族?爵位は?」

「あ、あの、マリー王国の王子様、です......」

「「「「「ええーーーーーー!!!!」」」」」

 一同唖然。


 すぐに立ち直ったモァから質問が飛ぶ。

「王子様って、すごいじゃない!国王も狙えるんでしょ?スティーヴィーは王妃は無理かもしれないけど、第2夫人とかあったかも知れないじゃない!」

 モァはそう言うけど、このコミ障では王妃は無理だと思う。

「無理......だって、ロビィ様、11番目だから」

「11番目!11番目の王子ってこと?あーーー残念すぎる!」

 とモァが言えばユィも、

「うーーーん、ちょっと王位は遠いわね。上が全部死ぬなんて難しい」

 と言う。さすがに王位継承者の娘だった者の言うことはリアルだ。


「それでスティーヴィーさんはロビィ様を愛していたのね?」

 ミワさんが優しく声を掛けるとスティーヴィーは、ミワさんの顔を見てポロポロ涙をこぼして、

「好きだった。う、う、う、ロビィ様、会いたい!ロビィ様、会いたい......」

 と言って、そのまま倒れ意識を手放した。

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