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ミワさんの強さの訳

「ミワさん、どうしてクロダに攻撃が通ったの?私たちの誰もが攻撃したけど通じなかったよ」

 オレが聞きたかったことをモァが聞いた。

「もし、嫌だったら言わなくても良いけどさ」


 ミワさんが首を振って、

「ううん、全然大丈夫。この人だって、魔法だって打撃だって神様にお願いして、そういう能力をもらったんだと思うよ。だから私ももらったの」

 と言うが、まったくの説明不足で通常運転のミワさんである。だれか通訳してくれ。


「どういう能力を頂いたのですか?」

 ちゃんとユィが聞いてくれる。

「私の攻撃が通る能力を神様にもらったの。相手がどんな強力な防御をしてても、私の攻撃だけは通るの。必ず、ゼッタイに」

 はあ、そんなチートな能力があるの?オレだけじゃなくてみんなビックリである。


「スゴい!それなら最初からミワさんが攻撃してくれていれば良いのに?」

 ユィが続けるけど、ミワさんは首を振って、

「でもね、そんな都合の良い能力って制限あって、私が相手を直接攻撃しないといけないの」

「「「はぁ?」」」

 あまりにも中途半端な能力......残念すぎる。


「みんな、そういう顔すると思ってたよ」

 ミワさんはクスクス笑いながら、

「みんなは私が攻撃の呪文を唱えれば良いと思ったでしょ?でも私にはそういうのはできないの、覚えられないの。その代わり、私が剣を持って相手を刺すと、相手が鎧着てても剣が通るの。すべての魔法や剣や槍、矢を防ぐ防壁も私の持った剣なら通るのよ」

「ということは手を離れたらダメなのかしら?」

 あまりの説明にスーフィリアも質問する。

「それは分からないのよ。でも、私が剣を投げてもちょっとしか投げれないし、弓矢だってどこに飛んで行くか分かんない。そもそも飛ばないから」

「なんと理不尽な......」

 オレも感想を言ってみた。


 モァが、

「それなら、剣を持ったミワさんをマモルが抱えて、敵に向かって放り投げてもらえば良いんだわ!じゃなかったら、抱えたまま突撃するのよ!そうよ、それだわ」

 新しい発見をしたということで自慢げに言うけど、

「でも私、攻撃は受けちゃうから。私は何も防御力を持ってないから、ダメなのよ。ただ人よりは回復早いから、死ななければ時間経てば治るんだけどね」

「あちゃーーミワさんに攻撃頼ったらダメなんだわ!今夜のって、たまたまコイツが(とつま先で蹴る)が油断したからなのね」

「そうなの。運が良かったの」

 ミワさんの話を聞いて、みんなではぁ~~とため息ついた。


「ミワさんの能力は虫が寄って来ないのと、自分の攻撃がすべて通る、という2つだけなのですか?」

 ユィの問いにミワさんは、

「うん、それに病気にかからない、お腹を壊さない、あと食べるモノに困らない、悪い人に会わない、というのを女神様からもらったよ」

「えっ?でも、コイツに会ったよ?」

 またクロダを蹴るモァ。もう反応がないから死んだんだろう。殺されかけたんだから、憎さ満載って無理はない。それもストレートに殺されるんじゃなくて、いいようになぶられて殺すと言ってたんだから、同情の欠片だってないよね。


「ミワさんの能力は、良いのか悪いのか判断に苦しみますね。お腹が痛くならないのは羨ましいですけど。良い人悪い人の判定って、どなたがされているんでしょうね?」

 ユィが首をかしげながら言えば、スーフィリアも腹を押さえて頷いている。確かにこの世界に生きていると、下痢状態っていうのは、割と普通だ。下痢ほどでなくてもスウスウに日々のお勤めがある。便秘ってどの世界にあるのってくらいの状態だし。


 良い人悪い人っていうのも生活がそれなりに恵まれていれば、良い人が多いと思う。生活に余裕があれば、人間の悪い面を自分の中に押さえ込んで外に出さないことができる。でも貧しくなってくると、人に悪意をぶつけないと生きていけないということで、悪人にならざるを得なくなるように思う。ポツン村では村人全体に明日の食事の心配をしなくていいというだけでも、良い人として生きていけるだろう。



「とにかく、コイツは燃やしてしまいましょう」

 モァが言えばスーフィリアが前に出て、クロダに火を点ける。人の身体って半分以上が水だって聞いたことがある。だから火が点きにくいと聞いていたけど、スーフィリアの炎は温度が高いせいもあるのだろうけど、いとも簡単に燃え上がった。


 ビュッ!!矢が来たのを感知して、剣に当てる。

「まだ敵がいる。隠れろ!」

 オレの声が掛かる前に、3人は姿を消し、ミワさんは焦って転んだ。3人の真似をしようと思ってるわけじゃないと思うけど、焦ると失敗する人なんですよね。ミワさんの手を掴んで暗闇に引っ張り込む。間一髪でミワさんの転んだ場所に矢が立つ。


「う、う、う、すみません、私がどんくさくて」

「大丈夫。そういうの込みのミワさんだから」

「それって大丈夫じゃないですよね......」


 立て膝するミワさん、パンツ履いてないのが分かる。クロダの煌々と燃える炎で明るくなったから、奥まで見えている。

 それとは関係なく道の中央でクロダが燃えている。


 真っ暗な村の中、ここだけが明るいのは異様な光景だと思うが、誰も出て来ない。敵もだし味方も現れない。


「どうしましょう?」

 ユィが近づいてきた。

「矢の来た方向に進もう。不意打ちを食らわなければ、矢は防げる」

 と答えると、

「そうですね。ここで残りの賊を逃がしたくないですからね」


 道を挟んだ向こう側にミワとスーフィリアが見えている。手で先に行くことを知らせると、頷いてソロソロと物陰に隠れながら進む。


 オレたちも向こうから見えないように陰に隠れながら進む。いくらオレの『Defend』があると言っても無敵なわけじゃない。さっきのミワさんのナイフみたいに、防御を突き破るかも知れないんだから、過信は禁物だ。さっき過信しすぎたヤツが死んだばかりなんだし。それに矢だけが攻撃力とは限らないんだから。


 矢を無限に持っているわけではないだろう。それにどこから矢を放っているのか知らなければイケない。テレビでよくある、何かを敵から見えるところに放り投げたら、疑心暗鬼の敵が無駄に矢を撃ってくる、というのを再現してみよう。

 軒下に置いてあった樽の蓋を外し、それをコロコロコロと転がしてみた。蓋は転がって向こう側まで行き、倒れた。敵はそこまでバカじゃなかったってことか。


 家の中に潜んでいる人は多い。元々の村に住んでいる人の気配はしている。そして外に出ているのが敵か?逃げて行く。矢を放って逃げる時間を稼いだということらしい。もう今日は疲れたよ。クロダを倒したんだから、今晩はこれで良いだろう。



 

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