表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
623/755

接種することになる、あぁん!?

 オレの心の中では葛藤が起きているのに、ミワさんはそんなこと知らずに、

「やりましょう!ご協力します!!」

 と即答する。ミワさんがそう言うものだからオレも仕方なく、

「じゃあオレもやります」

 といかにも気が進まない風で同意する。ブラウンさん夫妻は満面の笑みでいる。ちょっと怖いんだけど?大丈夫かなぁ?そんなオレの気持ちは無視されて、

「ではさっそく進めようと思うが、最初の治験は大公様の前でやりたいんだよ!」

 ブラウンさんが吠える!それに合わせてミワさんが、

「そうですね!確かにおっしゃる通りです!まず、治世者の前で接種を行い、何も問題がないことを示さないといけないでしょう!やりましょう、やりましょう!」

「いやあ、マモルは羨ましいなぁ、こんな理解者が側にいて。この世界の人たちは誰も理解してくれなくて本当に困っていたんだよ!助かった!本当に助かった!」

 ブラウンさんはオレと握手しながら、バンバン叩いてくる。それが痛くて痛くて。


「でも、ブラウンさん。オレはもうじき旧タチバナ村に行かないといけないんですよ。異世界から転移してきた者が暴れていて、何人も人を殺しているそうで、それが終わってからになりますね」

 と一応、すぐには受けられないことを告げると、

「大丈夫!!もうワクチンはできている。マジックバッグの中に数百人分保存してあるんだよ。明日、大公様の所で接種しようじゃないか!私の方から大公様に連絡しておくから、頼むよ!必ずだよ!」

 あぁぁ、何という手際の良さ、そしてワクチンを保管してても劣化しないマジックバッグの優秀さよ!


「マモル様、ご心配なく。私も一緒に受けますから!もし具合が悪くなっても、サラッと私が治して差し上げます!大丈夫、ご心配なく!」

 ミワさんがオレの逃げ道を無くしてくる。あれ?そう言われて気が付いたことが。

「ミワさん、そんなサクッと治せるなら、感染しても治せるんだし、わざわざワクチン打たなくてもいいんじゃない?」

 と聞いてみると、

「もう、何言ってるんですか!ワクチン打って少しくらい具合悪くなっても、感染してひどくなるよりずっとマシなんです!それに感染されたとき、いつも私がいるとは限らないじゃないですか!もし治せる者が近くにいない時に感染されたら、結構な確率で死んじゃいますよ!ダメですよ、まだ小さい赤ちゃんもいるんですからね、長生きして頂かないといけないんですよ!」

 しっかりと諭された。何も言葉が出ず、

「ハイ」

 とだけ答えた。


 その夜は、明日ワクチン接種だと思うと、たぎってたぎってミワさんにずっと声を上げさせてしまった。「オレのワクチンはどうだぁーーー!!」なんて、思っても言わなかったけど。


 あくる朝、あんなに泣かせたのにミワさんはスッキリした顔をしている。鼻歌まで歌ってるのに、オレはきっとやつれが見えているんじゃないだろうか?


 朝食を取り終えると、

「お客様がいらっしゃいました」

 と食事の支度をしてくれたメイドが伝えてきた。

「誰だろう?こんな朝早くに」

 と独り言のつもりだったのだが、メイドさんの聞き耳は優秀で、

「ブラウン様です!うふふ、お山のように大きい方って他にいらっしゃいませんから。あの方にお会いできて今日は幸運な日です!」

 嬉しそうに言う。


「ブラウンさんは怖くないの?」

 オレの質問にメイドは手を振って、

「そんなことありません!あの方に命を救われた者はたくさんいるんです!あの方に感謝こそすれ、怖がりなんかしたらバチが当たりますよ!あの方こそ聖人ですよ。亡くなられたら、大聖堂に肖像画が掲げられると思います!!」

 なんともはや、嬉しそうに話す。人って善行積めば、大きくて怖いってなくなるのね。


 メイドに連れられて玄関に行くと、ブラウンさんはメイドを高い高いしていた......190㎝のブラウンさんが150㎝くらいの成人女性のメイドを高い高いしている画......横の奥さんが「またか」というような顔をしている。どういういきさつで、高い高いすることになったんだろう?


 それを見たオレを案内しているメイドが「いいなぁ......」と言うし、ミワさんも「私もして欲しい」と呟くし。いいなぁ、人気あって。でもオレは、人気なくていいから高い高いはしたくないから。ヤレと言われても、オレには低い低いくらいしかできんわ。


「マモル、おはよう!済まないな、逃げられるかと心配になったので迎えにきたぞ!」

 ガハハ、と豪快に笑いながら言って来るブラウンさん。メイドを高々と抱え上げて、メイドのスカートの中が見えるくらいまで抱え上げたのに、息も切らしていないなんて。いったいこの方はなんのスキルをお持ちなんでしょうか?奥様と2人っきりのときに、奥様も高い高いしているんだろうか?なんかできそうだし、やってそうな気がしてきた。奥様がキャッキャ言うのが見えるような気がする。


 何はともあれ、馬車に乗せられて公宮にドナドナされていく。今日も空が青いなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しませて頂き、有難うございます。 [一言] 福音派は…証人を意識していると2月5日の感想返しでありましたが、彼らの教義的に獣痘は大丈夫なんでしょうか。さらなる悶着となるのか?はたまたフツ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ