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ミンがベタベタと

 午後になると、呪文が効いたのかミン自身の力なのか分からないけど、顔色が良くなってきた。こんなことは滅多にないので(女の子の日に男が側にいて過ごすというのは、ちょっとあり得ないことのようだ。特に貴族では)、オレはミンの側にいた。

 

 ミンが手を握って!といえば握っているし、髪の毛をナデナデしてと言えば(ミンはいくつなんだ、と思うが)言われたとおり、ナデナデする。あのミンがこんなに甘えるのか?と思うくらい甘えてくる。ミンとの付き合いはノンと知り合ってからだが、昔は結構距離を取っている感じがしていて、じっとオレのすることを見ている子どもだった記憶がある。ただ、お話をするときだけは、すり寄ってきて甘えるということはしたけれど。


 まぁ、今日は、もしかしたら明日もミンが歩きに耐えられるようになるまで宿にいるしかないのだから、ミンの側にいようと決めている。最初の村のときは、女の子の日というか女の日のときは、ノンやアンがオレから隔離されて顔も見れなくなっていたけど、それを考えるとミンの側にいるのは違う国にいるようである。ま、実際、違う国にいるのだが。


 ミンが寝入ったところで部屋を出て食堂に降りていくと、イワンがポツンと座っていた。こいつには外出禁止を言ってあるし、宿にいたってすることはないから、寝ているか座っているくらいしかないのだが。

 オレを見たイワンが、暇を解消する話相手が来た!と思ったようで顔を綻ばせている。

「タチバナ様、ミンさんの調子はどうですか?」

「うん、良くなったと思う。明日の朝になってみないと分からないけど、明日は出発できるかも知れないな」

「それは良かったです。まだ子どもなのに長旅させるのは負担が大きいですよね?」

「それはその通りなんだけど、ミンの先生が(アノンさんのこと)もうそろそろ外の世界を見せた方が良いと言ったから連れてきたんだ。本人も希望したしな。何事も経験だよ。

 ところでヨハネはどこに行ったの?宿の中にいるの?」

「ヨハネさんは、同朋から情報を仕入れてくると言って、出かけました」

「そうなの?イワンを1人ぼっちにしといていいのから?危なくないのか?」

「それは大丈夫だそうですよ。宿の外に1人、番をしている者がいて、この宿自体もヨハネさんの同朋が経営しているそうですから」

「なるほど、なら大丈夫そうだな。過信は禁物だけど。イワンは油断して外に出たりするなよ」

「分かっていますよ、そこまで甘いこと考えていませんから」

「ならいいけど」

「タチバナ様に伺いたいのですが、タチバナ様はいろいろな呪文が使えるようですけど、どういうモノが使えるのですか?今朝、ヨハネさんと話しておられた呪文ですが、私には聞き取れなかったのですが?」

 あっと、イワンには『Mark』が聞こえなかったのか。ということは、聞き取れたオレは使えるということか?ヨハネもだけど。それはともかく、

「イワンよ、オレがどんな呪文使えるかなんて、言う訳ないでしょう?もしさ、イワンが敵に回ったとき、オレの手の内をみんな知ってるわけだから、オレの痛いところ突いてくれば良いんだもの。そもそもオマエは自分の使える呪文が言えるの?」

「私は呪文、一切使えませんよ」

「え?ホントに?」

「はい、使えません!」


 清々しいくらいに言い切るイワン。オレの前では一切、使って見せてないから「使えない」と言い切っても、嘘はついていないことになるわな。

「そうなんだ。(でもホントかなぁ?)なら良いよ。オレも使えないことにするから」

「しかし、タチバナ様は使えるではないですか?」

「オレは表向き使えないことにします。イワンが見たのは非公式のことですから。知らないことにしてください」

「はい......分かりました」

 イワンは不承不承言った。

「でも呪文はどうやって使えるようになったのでしょう?」

 イワンは粘って聞いてくる。

「それは、この世界に降りてくるときに神様に教えてもらったの。神様がね、オマエには生活魔法に関する呪文を使えるようにするって、言ってくれたの。だから使えるようになったんだよ~」

「ミンさんは神様にもらったわけではないですよね?」

 こいつしつこいなぁ。

「ミンは母親が使えたんだよ。だから母親に教えてもらったんだと思うよ。それにポツン村に先生がいるから」

「えっ、ポツン村に先生がいるんですか?」

「いるよ」

「私もその人に教えてもらうわけにはいかにでしょうか?」

「どうかなぁ?イワンがポツン村に行けば教えてくれるかも知れないな、イワンはイケメンだから歓迎してくれるかも」

「イケメン?その方は女性ですか?年はいくつでしょう?」

「えらく食いつくね。その人、女性だよ、年は40代半ばだと思う」

「思うって知らないのですか?」

「うん、女性に年を聞くのはタブーでしょ?」

「タブー、そういうものですか?その方は誰に教えてもらったのでしょう?もしかして自得したとか?」

「いいや、違うよ。その人も母親に教えてもらったと言ってたと思うけど」

「そうなんですか、私に見込みはないですかね?」

「分からない」

 調べないと分からないけど、イワンの手を取って、魔力を流すなんて気持ちの悪いこと、したくないから。


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