表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
519/755

ハルキフに入る

 国境目前で大公様を待っていたギレイ様一行と合流する。

国境を越えるのは至って簡単で、皇帝就任式の招待状を門番に示すとVIP待遇となりスルーパスとなった。荷物を改めるとか、人相を見るとか、もちろんない。荷物を改めると言っても、ポケットに入っていれば改めようがないけどね。


 ハルキフに向かって進む。帝国領に入ってからは、帝国軍の護衛がついている。当たり前だが何事もなくハルキフに着いた。

途中の村で野営するのも、帝国軍が設営してくれたテントに泊まるので、非常に楽であった。ただ食べる物は、食中毒や毒の混入とかが心配されるので、大公様お抱えのシェフが準備する。もし毒物が入れられていたとして『Clean』を掛けると毒は除去されるのでは?と思ったりもするが、超強力な毒、例えば青酸カリなんかだと、除去できそうな気がしない。どこまで除去できるのか曖昧なんだが。そもそもこの世界に、純品の青酸カリなんてないと思うが。それに死に到る呪いの付与された食物を食す、なんかだったら『Clean』なんて何の役にも立たないだろうし。そもそも、そんな食事なら口に入れた時点で分かるだろう。いや、呪いなら分からないか?


 ハルキフの町では町一番の宿に泊めさせて頂いた。それで、オレには2人部屋が提供された。2人部屋、いわゆるツインに1人で寝ろ、ということではなくミンと2人で泊まってね、ということで。

 前のゴダイ帝国旅行みたいに夜は警戒のため夜番をすれば良いか?と思ったら、男爵様がそんなことをする必要はないと言われ、ゆっくりお休みくださいと言われてしまって。ハイグレードの宿屋っていうのは1人部屋というのは少なく、ツインやダブルの豪華な部屋が用意されている。そしてお付きの者たちの泊まる4人部屋とか6人部屋がある。

 前のゴダイ帝国からの帰り道では、それまでの戦闘でだいぶ人数が減っていたから、余裕で収容されたけど、今回は前の倍以上の人数なのでオレのような男爵成り立ての者がどうこう言えるわけもない。言えるのかも知れないが、言っても良いのか悪いのか、それが分からない。よって黙って従うだけだ。


 ミンが夕食の時から喋る喋る。ミンってこんなに喋るんか?と思うくらい喋る。オレと2ヨハネはいるがで旅行するということは初めてであるがここまで旅している。けれど豪華な宿屋に泊まったというのがテンションを上げているんだろう。

 オレたちが食べている途中で、先に食べていた人たちが食事を終え、外に出て行く。それを見たミンが、

「あの人たちは、どこに行くの?」

 と聞くから、

「酒を飲みに行ったか、娼館に行ったか、だと思う」

 と正直に思うところを答えると、すっと表情がなくなり、低い声で、

「マモル様は行くの?」

 と聞いてきた。

「いや、オレは行かないよ」

 と言うと

「行きたいなら、行けば良いのに」

 と言いながら、眉を寄せ険しい顔をしている。顔に不機嫌そうな色丸出しなんだよなぁ。ミンという地雷を抱えているのに、それを踏み抜く勇気なんてありませんて。

「行かないって。ミンを残して行けるわけがないだろう」

「あれ?アタシがいるから行かないの?アタシはちゃんと宿で留守番しているから、ヨハネと行ってくればイイのに。バゥやビクトルみたいにさ」

 最後の方のセリフにはどす黒い念が込められていたように思う。オレが答える前にヨハネが、

「ミン様、私は福音派信徒でありますゆえ、娼館には参りません」

 と模範解答をする。『福音派』ってのは便利なフレーズなような気がするが、気のせいか?それはともかく、

「オレも行かないから。明日は休みだから、サラさんのご両親に挨拶に行くぞ。だから寝ろ」

「ふーーーん、分かった。なら、大人しく寝ます。でもアタシが寝た後に出ていかないでね」

 と一応、追及の矛先を納めてくれた。なんとか心安らかになったので、

「ヨハネよ。宿の周りに怪しいヤツはいなさそうだよな?」

「そうですね、帝国軍の兵士たち以外はいないようです」

 レーダーを働かせて、調べ確認する。外に遊びに行った人たちの面倒までは見られないけど、宿の周りくらいはレーダーを働かせておかないといけないだろう。誰から頼まれたというわけでもないが、ここは異国なのであり、敵国の宿にいるのだ。どれだけ警戒しても足りないということはないだろう。


 前回の大公様の帝国往復の旅で、供として従った人の半分以上が死んだ。あのときは、ヤロスラフ王国の皇太子と第2王子の手配した者たちが襲ってきたことになっている。しかし、ヤロスラフ王国の者が異国で誰の手引きもなく、あんなに上手く大公様の行動を掴んで攻撃してきたなんて不思議なことだ。シュタインメッツ様は何も言ってないが、ゴダイ帝国の中の誰かが手助けしたのだと思う。

 今回の帝国行きの従者には、前回の経験者がほとんどいない。行列の責任者がヒューイ様からギレイ様になったということもあるだろう。帝国の皇帝就任式に参列するということで危害が加えられるわけがないと思っているような気がする。だから、ハルキフに来て、夜遊びに行くのだと思うのだが考えすぎなのだろうか?オレのような下っ端貴族が考えてみても仕方ないのでできることをするだけだ。


 それに今晩、ミンが大人しく眠ってくれるのか?という心配がある。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ