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ミワさん5

 さて、やっとポツン村に帰る馬車が出発する。オレとしては娘たちと一緒の馬車に乗るのは気が進まない。だって、どうせ娘たちが男たちへの非難囂々(ひなんごうごう)の中に入るってことなんでしょう?いくらオレは傍観者だったとは言え、男というしょうもない生き物であることは一緒なんだから、たぶん娘たちの言うことは一々うなずけることばかりで、肩身がどんどん小さくなる未来ってのは予想できるんだって。そんな、針のムシロに座りたくないから、歩いても良いから、馬車に乗って行きたくないと、思ってた。


 しかし、馬車の中に連れ込まれた。ユィとモァに有無を言わせられず。そして、

「ミワさんをどうやって連れてきたのか、ポツン村の人に説明するのか打合せしましょうよ」

 と持ちかけられた。オレがそのまま説明しようと思ってたと言うと、

「だから男ってバカなのよねぇ!」

 とモァに言われて。

「そんなこと、正直に言って、良いコトなんて一つもありませんよ?」

 とユィに窘められた。そりゃそうですけど、馬車の中に居る者も、外のおバカな男3人も皆、ミワさんを身請けしたってことは知ってることだし。人の口に戸は立てられない、っていう諺はこの世界でも有効なんだと思うよ。特におバカな男3人にはね。


 でもモァ曰く、

「ミワさんの境遇を知れば、村の女の人はみんな、ミワさんの味方になってくれると思うわ。ううん、味方になってくれるように私が話をする!でも、時間かかると思うから、最初はカタリナ様やサラさんとか、マモル様に近い人だけに話して、味方になってもらって徐々に根回しして味方にしていくから」

 などと策士なことを言う。

「でも、娼館で働いていると聞いて、女の人が味方になってくれると思えないけど」

 とオレが言うと、

「それはマモル様の中の常識だから。そういうのは私たちより、ミワさんの方が詳しいと思うけど、娼館に好きで努めている女の人っていないの。たいてい、家族のために売られて来た子がほとんどなんだからね。喜んで娼館に売られてきた娘っていないから。それにさ、初めて抱かれる相手が、初めて見る男で、バゥみたいなヤツとか、脂ぎってるデブとか来ても、愛想笑いして相手して、抱かれないといけないんでしょ?その後だってさ、オレグやビクトルみたいな若くていい男なんて滅多に来ないっていうし、ね、ミワさん?(ミワさん、苦笑い)

 お客さんの中で好きな人ができたとしても、その人と一緒になることなんて、まずないんでしょ?身請けするくらい金持ってるのって、たいてい年寄りでデブでハゲなんじゃない?(ミワさん、顔ひきつってる。モァさん、それはかなり偏見だと思いますよ?そういう傾向がないとは言わないけど)

 とにかくさ、男が娼館の娘を見てどう思うか別にして、女から見るとね、嫌悪の対象なんてならないの。そりゃ、バゥみたいに、奥さんそっちのけで、遊びに行きたがるバカが夫なら、苦労ばっかりさせられる奥さんは娼館を目の敵にするかも知れないけど、普通はそんなことないんだよ?」

 とモァが言ったら、珍しくミンが、

「アタシはあの村に住んでたから、身体売らなくて済んでたけど、もしノンと一緒に町で暮らしていてたら、ノンは身体売ってアタシを育てたかも知れないって思うの。あの村に住んでるときだって、村の女の人が旅の途中で村に泊まった人に身体売って、代わりに食べ物もらっていたもの。

 オーガの町に行って、タチバナ村行って、ブカヒンの町に行って、貧民街って呼ばれる所に住んでる人たちを見たけど、アタシやノンみたいに何もできない女って身体売るしかなかったと思うよ。だって、悪いコトせず、お金稼ごうと思ったら、それしかないでしょ?だからミワさんを見ても、娼婦やってたってこと以外は普通のお姉さんにしか見えないもの。村の女の人はアタシとおんなじこと思ってくれると思うよ」

 と言った。ホントに珍しく長文を語った。


「ただ問題はバカな男どもよね」

 とモァ。

「そうよ。村の男たちも、バゥたちと同じ反応示すかと思うと、頭が痛いわね。ミワさんが何の仕事してたか知ると、群がって来るかも知れないし。それだけは阻止しないとね」

 とユィ。

「だから、村に着いて、ミワさんのこと、何も説明しないの。村の人たちが憶測したり、噂したけりゃ、させとけば良いのよ。言いたいヤツには言わせとくの。そうすれば良いの。とにかく娼館にいたことだけは秘密にしとくの。噂なんて、そんなのいつか収まるから。いいでしょ?ミワさん」

 ミワさんは頷いている。

「それにミワさんを見たら、誰もがマモルくんと同じ『降り人』だって思うから大丈夫よ。マモルくんの繋がりある人だって思うから、手を出すバカなんていないから」

 とのたまわったのだが、それは夕べも聞いた。しかし、本当にそうなんだろうか?


「モァ、聞くんだが、オレとミワさんを見て、同じ『降り人』だってみんな思ってくれるだろうか?みんなが分かるくらいオレたちは似ているのか?」

 と聞くと、さっきから黙っていたスーフィリアがプッ!と噴き出して、

「マモル様、分かります!ゼッタイに分かりますから、安心なさってください。兄妹と言っても通りますよ」

 と言ってきた。ユィモァミンも笑ってる。思わずミワさんの顔を見ると、ミワさんも『さあ?』というような顔をしているけど、スーフィリアが言うくらいだから、似ているんだろう。ここは話に乗っかるしかないだろう。が、

「じゃあ、オレとミワさんが似ていて、ミワさんとの関係は見れば分かるってのは良いよ。でも、外にいるバゥたちはどうするんだ?きっとヤツらから話は漏れると思うぞ」

 オレの言うことを聞いて、モァは拳を前に振り上げ、

「そうよ。だから圧を掛けて黙らせるの。一言でも漏らしたら、ブカヒンの夜のことをバラすってね」

 前にバゥがいたら殴りそうな勢いである。どうどう、と抑えにかかって、

「ちょっと待て、モァ。バゥにそんなこと言っても、アイツに抑えが効かないんじゃないか?」

「だから、もしミワさんのことを誰かに話したら、ユリさんにあることないこと話すから、話されたくないなら黙っとけ!!って言えば一応、黙っといてくれると思う、きっと」

 とモァが言うとミンが、

「大丈夫。バゥが約束守らないなら、アタシが一生立たなくなる呪文を掛けると言うから。それならゼッタイに守ると思う!」

 と断言する。それは怖い。オレはゼッタイ掛けられたくない、うん。でもそんな呪文は本当にあるんだろうか?


「ミンよ、立たなくなるのってアレか?男の大事なもの。でも、そんなさぁ、アレが立たなくなる呪文って本当にあるのか?アノンさんがそんなこと言ったことあったけど、本当なのかな?オレは半信半疑というか、どちらかと言うと出任せかと思っていたけど?」

 ミンはちょっと顔を赤らめてコクコク頷き、

「うん、だってアレを立たせる呪文があるんだから、反対の作用の立たなくなる方だって、あったって不思議じゃないでしょ?たいていの呪文って、背中合わせの作用があるんだって。氷を作るのがあれば、溶かすのあるでしょ?冷ますのと熱するのとかってね。だからアレを立たせるのがあれば、当然立たなくするのもあるんだって。

 あーーー、それにしても、どうしてアタシにそんなこと言わせるかなぁーーー!?アタシは乙女で処女なんだよぉ!今まで1度も経験ないのに、アレが立つの立たないのって言わせるかなぁーー!!夕べといい、今日といい、乙女が4人もいるのに男たちは何やってんだ!?って思うよ、ホントにもぅ!!」

 ミンがキレてしまった。確かにそうですね、すんません。そして一度キレたミンはなかなか収まらず、あらぬ事を言い始めた。


「そもそもさ、どうしてマモル様はアタシを妻にしてくれないの?こんな人(とミワさんを指差して)と関係持っていながら、アタシはずっと放置されてんのよ!!ノンがアタシの年頃にはダンナがいたって言ってたよ!アタシはずっとマモル様見ててさ、ふぐっ!」


 横からスーフィリアがミンの口を無理矢理塞いで、それ以上言わせなかった。うーーん、スーフィリア感謝!ナイスプレーっす!このままだとミンが何を言い出すか分かったモンじゃない。空気がすっごい気まずくなってしまった。


 ユィモァたちがポツン村に来てからオレとミンの距離ができて、関係が疎になりがちなので、鬱積が溜まっているんだろうなぁ。でもオレはミンを妻にって、ねぇ。オレの半分くらいの年なんだからねぇ、たぶん。ミンの生年月日は曖昧不明だから年齢ははっきりしていないし(あの村にカレンダーなんてものはなかったし、あっても無意味だった)、もう生理は始まってるとは言え、ノンの娘を妻にするというのはどうか?という自制心はあるのよ。妻を3人持ってて、もう1人がもうすぐ増えようかって、男でもさ。



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