ミワさん3
「ミワさん、質問があるのですが......」
おずおずとユィが聞いてきた。
「その、スカートから膝が出ていて恥ずかしくないのですか?それと足が少し光って見えるのは気のせいでしょうか?」
と言うとモァも、
「そう!私もそう思ってた。膝が出ていて、すごく気になって。マモルくんは気にならないのかな?って思ってたの。注意しようかどうしようかって迷ってた」
と言う。
ミワさんは就活スーツ着ていて、立っているとスカートから膝が見えるし、座るとスカートの裾が上がって膝上10㎝ほどになっている。足はパンストはいているから、パンストのキラキラ感が光って見えるんだろうな。オレとしては、この服装ならこれが普通と思っていたので、久しぶりに見たなぁ、くらいの印象で特に恥ずかしくないけど、娘たちにしてみると恥ずかしいということなのか。
「ユィ様、モァ様のおっしゃることは分かります。ですが、私とタチバナ様のいた世界では、これは普通の服装で、もっとスカートの短いものをはいている人もいましたから」
「「「「えーーーーー!?」」」」
みんな、ビックリ。
「そ、それだと、な、中が、奥が、見えてしまうのでは?」
代表してユィが聞いてくるが、他の3人も肯定している顔つきです。まぁ、この世界の人なら、こういう反応は普通かも。
「そうですね、見えます。油断すると見えてしまいます。だから階段昇るときは、後ろをバッグで隠して見えないようにしたりします」
「えぇ?隠す?隠すと言う前に、そういう服装をしなければ良いと思いますが、どうしてそんな短いスカートをはいているのですか?はくのは、はしたないでしょう!男の人が見るでしょう!?」
ユィが断言する。まぁ、理屈を言えばそうなんですけど、どうしてなんですかね?オレもよく分かりません。でもなぁ、ミワさん、奥が見えないと分かってはいるけれど、気になるんだよなぁ。これって悲しい男のサガですわねぇ。
「マモル様、ミワさんの膝をそんなシゲシゲと見たらダメだから!」
とミンに注意されるまで気が付かなかったけど、そう言われればついつい内股を見てしまう自分。ふくらはぎは位置的に見えないので、ミワさんの足を見るとどうしても膝上を見てしまうわけで、足を見るというより、パンストを見ていたというか、よくあったなぁーと思って見てた。
「いや、ゴメン。ミワさんがパンストはいてるの見て、よく今までパンスト持ってたなぁーと感心してたんだ」
「パンスト?」
「何ですかそれ?」
と口々に聞かれるので、ミワさんが立ち上がって膝の辺りのパンストをつまんで引っ張った。
「「「「ええぇぇぇーーーー!?」」」」
娘たちが驚きまくる。これはもしかしたら、皮膚を引っ張ったように見えたのか?声に驚いてミワさんがパンストを放すと、皆が息を呑んだ。
「何それ?」
「それって皮膚じゃないんだ?」
「何か透明な皮があるみたい」
「それがキラキラしてるんだ。触ってみてもいい?」
「良いですよ。はい、どうぞ」
とミワさんがパンストを引っ張って、みんなに触らせる。
「何これ!?伸びるんですけど?」
「これ、おかしいよ?ちょっとツルツルして、手触りがおかしいんですけど?」
「コレって何?服なの?何かの呪文で作ったものなの?」
「えぇっ!手触りがおかしいよ!」
みんなマチマチのコメント。でも、驚いているのは共通で、これがパンストを知らない人の率直な感想なんだ。黒いパンストなら、スゴく薄い生地のズボンかと思ったかも知れないけど、ミワさんの履いてるパンストは、透明で艶があるっていうのか光沢があるっていうのか、足をキレイに見せるタイプのヤツを履いているんだと思う。
伸縮性のある素材というのが、この世界にはない。ゴムがない。だからパンツは紐で結ぶ。靴下もくるぶしまで上がらず、靴の上まで。女性の高貴な方はガードルをお使いになっている。カタリナも使っていた。今は面倒なのと、着飾らなくなったので止めている。
「ミワさん、よく今までパンスト持ってたね?」
と聞いてみると、
「持ってましたよぉ、うふふ。就活で企業回りしてましたから、途中で伝線しても、どこでも履き替えられるように予備をバッグの中に入れていたんです。残り1枚がバッグの中に入ってますよ」
「ということは貴重な1枚を履いてきたってわけ?」
「そうです。晴れの姿を見て頂こうと思いまして、化粧もしてきました。この世界の化粧道具じゃなくて、前の世界から持って来た物を使ったんです。バッグに入れてあるだけのものですから、そんな大したものじゃなくて、簡単なものしか入ってないのですけど」
「へぇー、そう言えばこの世界の化粧と違って見えるね」
と言ったとき、娘たちが乗ってきた。
「そうなの!違うと思ってた!」
「やっぱりそうなんだ。くちびるが輝いてるもん!」
「え、ホントに?よく見せて!?」
「化粧道具を見せて」
「化粧してみて」
化粧と聞いた途端に熱量が爆上がりして、ミワさんに迫る娘たち。それからは、オレそっちのけでミワさんが化粧道具をバッグから出して説明し、ミンに対してやってみせる。馬車が揺れるのでリップを塗るくらいなのだが、これがウケた。ミンのくちびるが光沢あって、コンパクトの鏡で顔を見せられてすごく喜んでいる。他の娘たちも順番にやってもらって大喜びになっている。もう、オレの存在意義はなくなってきて、ただ馬車にいるだけなんですけど。外に出ていいですかね?
その後も着ているスーツの生地の話になり、胸元から見えたブラジャーで大盛り上がりしている。オレに見せないようにして、娘たちにブラジャーを披露している。オレは外を見ながら耳はダンボにして、どんな小声の会話も聞き漏らさないようにして聞いている。
ミワさんのブラジャーはひどく好評で(オレは見てない。けど、いつか見せてももらおうと強く決意している。お店で会ったときはこの世界の普通の下着だったから、ブラジャーもこの日のために付けてきた、ということなのか?)、
「かわいいーーー!?」
「なにこれ?」
「この刺繍、キレイねぇ!」
「いいなぁー私も欲しい!?」
「ミワさんのいた世界には、こういう下着がいっぱいあるの?」
と根掘り葉堀り聞かれている。さすがにパンツまでは見せてないけど、見せたらウケるんだろうな。
「そう言えばね、こういうの持ってるの」
と言ってバッグから雑誌を取り出した。オレに、
「はい!これ、懐かしいでしょう?」
と言って見せてくれたのはR〇yで、なんともはや、懐かしい。オレは表紙くらいしか眺めたことはないけれど、前の世界にあったものはすべて懐かしくて、見るとこみ上げてくるものがあるよ!オレも残せておけるモノがあったら、残しておくんだったなぁ、と思うけど、あん時はまだポケット持ってなかったし。
「「なにそれ?」」
とユィとモァが目をキラキラ輝かせて見ている。オレより余程食いつきがいい。
「はい!!」
とミワさんが娘たちの前に雑誌を差し出すと、
「「「「エエえぇぇーーーー!!!!」
今日一番の歓声?悲鳴?奇声?が上がった。あまりに声が大きかったので、外にいたオレグとビクトルが
「どうしたのですか?」
と聞いてきたくらい。
それからは馬車の中、馬車が港についてからは船の中でずっと、ミワさんによるR〇yの記事のレクチュアが続けられた。まったく文化背景が違うのに、若い娘たちって何のバリアもなく受け入れるのね!?こんなの違う世界の話だから、夢絵空事だろう?なんて思わず、この世界のどこかにあるかも知れない、と思うようだ。なんちゅーか、若い子の頭の柔軟性に驚くばかりデス。




