帝国皇太子3
「こ、皇太子様、お止めください!」
他のメイドが、ウラジミールを止めようと腕を抱え込む。それをはね除け突き飛ばす。メイドは机に頭をぶつけ、気を失ったのか床に倒れた伏した。それを見て他のメイドたちの動きが止まってしまった。1人のメイドが、
「メイド長を、侍従長様を呼びにいかなくちゃ!!」
と言い、部屋の外に出て行ったが他の者はおびえ、部屋の隅に固まり震えている。官吏たちは難を怖れて早々に逃げてしまった。
ウラジミールがメイドの服のボタンを全部飛ばし、襟を左右に広げると、下着が暴かれた。メイドは服を押さえ、なんとかウラジミールから逃げようとするが、男の力にあらがえず、胸元を隠せない。顔をそむけ、部屋にいる者を見るが、恐怖に染まった顔をしてメイドたちは誰も動かない。衆人環視の中で、自分が皇太子に犯されようとしているのに、誰も助けてくれないことに絶望する。そして、抗うことを止めた。皇太子のするがままに身を委ねることにした。
皇太子付きメイドになったとき、もしかしたら皇太子の伽に呼ばれるかも知れないことは理解しており、期待もした。正妃はあり得ないにしても、何番目かの側妾になれれば良いと思っていた。でもそれは、このような真っ昼間の、人の面前で犯されることではなかった。涙が目から落ちる。もう目を開けていられない。目を瞑り、余計なモノを見ないようにすることとした。
ウラジミールは下着に隠れている胸を掴む。幼い胸、とても豊満とは言いがたい、幼さから離れ、多少成長してきた胸、それを力任せに掴む。
「痛い!!」
メイドが思わず叫ぶ。その言葉は、ウラジミールの沸騰した頭に辛うじて届いた。力を弱め、胸のてっぺんにある蕾を引きずり出す。服は脱げていないのに、無理矢理胸を出しているので、胸の大部分は服の中にある。蕾を見て、頭の中が違った色に沸騰し始めたのがウラジミールには感じられた。下半身が痛いくらいに硬くなっている。これをメイドの中に入れたい、納めたいと強く思う。そうなると胸のことは考えられなくなり、スカートをまくり上げる。細い腰、まだ大人の女になっているとは言えない腰があった。そして装飾の付いてないショーツが腰を覆っていた。
もうメイドは脱力して動かない。ショーツを脱がすときも、協力することなく、足を持ち上げてもそのまま、放すとそのままの形でいる。足の付け根の翳りが見えると、より一層ウラジミールの身体中の血液がたぎってくるのが分かった。ズボンを膝まで下ろし、硬くなったものを手に持ち、メイドの中に入ろうと試みる。しかし、メイドの身体は受け入れる準備ができておらず、そしてウラジミールは初めてのことなので、どこに入れれば良いのか分からず、入らない。滅茶苦茶に突き立てるが、入って行かない。訳が分からず、突いているうちに、ウラジミールは終わってしまった。メイドの中に入ることができず、出してしまった。
白濁したモノがメイドの腹の上、そしてまくり上げたスカートの上に飛び散っている。そして、その上を見れば、胸をはだけたメイドが、いつも通りの仮面を付け横を向いている。ウラジミールが顔を上げて周りを見れば、メイドたちは皆、仮面をかぶり硝子の目で自分を見ている。硝子の目にさげすみの色が浮いている。ウラジミールはまた色彩のない世界に戻ってしまったことに気づいた。
「ウラジミール様!!」
侍従長とメイド長が皇太子の執務室に入ると、そこには、胸を露出してスカートをはだけているメイドが横たわっており、その側に膝立ちしている皇太子がいた。皇太子は下半身を丸出しにして茫然自失の体である。皇太子の下半身にぶら下がっているモノの先から白い糸が引いてメイドの腹の上に繋がっているという、あり得ない光景に誰1人として、動こうとせず、声を発する者もいない。ただ全員の目が、皇太子とメイドに注がれている。何が起きたのか一目瞭然だった。
皇太子が侍従長とメイド長を見たが、その瞳は空虚で2人を捕らえていないことが分かる。侍従長が声を掛けたが、通じていないようだ。侍従長はテーブスクロスを引き剥がし、皇太子の下半身を隠す。それに合わせて、メイド長が横たわったまま動かないメイドのスカートを整える。この場でショーツを履かせるということまではできない。
メイド長がメイドの上半身を抱きかかえると、メイドはメイド長に縋り付き、泣き始めた。
「あなたたち、この部屋を片付けてちょうだい。この子は私の部屋で休ませるわ。手を貸して」
「「はい!!」」
魂が抜かれたかのように立っていたメイドたちが、メイド長の一声で動き出した。合わせて侍従長と一緒に駆けつけた男たちも動き始めた。皇太子と襲われたメイドが存在しないかのように、テキパキと後片付けに動く。
ウラジミールは侍従長に抱えられ、トボトボと私室に向かって歩き出す。テーブルクロスの下は裸のまま、何もつけていない。
ウラジミールも侍従も無言のまま私室に着く。ベッドに座らされ、替えの衣服一揃えが届けられる。ウラジミールは指示されるまま、服を脱ぎ、新しい衣服に着替える。そこに一切の感情は見て取れない。
侍従長が服を着たウラジミールに問い掛ける。
「ウラジミール様、先ほどのメイドが気に入られたのなら、夜の伽に呼びますが?」
「......」
「それとも違うメイドがあれば、伽をさせますが?どのような女がご希望ですか?」
「......」
ウラジミールが女を欲したのは今日が初めてだった。今まで女に興味がなかったわけではなかったろうが、メイドたちを性の対象に見ていたことはなかった。求めた素振りもなかった。侍従長は、もしやウラジミールがあの絵描きの娘に未だ執着しているのか?と考えもした。しかし、あの娘と会えなくなっても、ウラジミールが娘と会いたいと言ったことはない。それなのに今日の爆発と、行為の後のこの沈黙。
ウラジミールは内向的ではあるものの、侍従長とはいくらか会話が成り立っていたが、今はまったくウラジミールの心は閉ざされている。
侍従長が問い掛けても何も答えない。爆発が起きた後、一切の沈黙がウラジミールに訪れる。その沈黙がいつまで続くか分からない。言われたことは理解しているのだが、反応がなく沈黙が続く。
ウラジミールは何も言わず、そのままベッドに入り眠ってしまった。夕方、侍従長が食事を運んで行くと起き、食べ終えるとまた寝た。その間、まったく声を発せず。侍従の言葉に頷くのみ。喜怒哀楽がまったくなくなり、自分の殻に入ってしまったのが分かる。
しかし、翌朝からいつも通りの生活が再開し、日を追う毎に少しずつ表情が戻り始め、侍従長の言葉に反応するようになった。元の生活に戻って来たと思ったとき、また爆発が起こり、そして今度はメイド長を襲ったのだった。




