ポツン村の女子会
マモルたちがメルトポリの戦役に行っているある日、カタリナ、サラ、アノンの3人がお茶会兼女子会を開いていた。
アノンが言う。
「マモルくんがいないと、夜が楽よねぇ~~あははは」
それにカタリナも頷いて、
「私も妊娠して、夜のお相手がなくなり楽になりました。おなかに子どもがいると、夜はお二人の所にマモル様が行かれますから。お二人が大変だとは思いますけど笑。ちょっと寂しいときもありますけど、まずはおなかの子どもが第一ですから」
サラはそれを聞いて言う。
「そうなんですよね。私の前の夫は、ビクトルが生まれてから一切何もなかったので、マモル様とこんなになるとは思いもせず。ビクトルが生まれてからは、夜ビクトルが泣くと、うるさくて眠れないとネストルが言って、寝室も別になりましたから」
「でしょう。私もそうよ。死んだ主人とは、娘が生まれてからは全然なかったもの」
とアノンが同意すると、カタリナが、
「え?そうなんですか!?子どもが生まれると、しなくなくなるのですか?」
と真顔で聞くので、サラとアノンはしばらく考えてサラが
「カタリナ様の場合は、そのようなことはないと思います。また、あってはなりません!お一人目が生まれたからと言って、もう1人か2人くらいは跡を継がれる方が必要ですし。欲を言えばやはり、お子様が3人はいらっしゃった方がよろしいと思いますよ。男、女、男の順が理想的ですね」
と人ごとのように言う。それを聞いたカタリナは頰を膨らませて、
「サラさん、私だけが跡継ぎを産むということはないのですよ?サラさんが産まれても良いでしょうし」
サラは顔の前で苦笑いしながら手を振り、
「いやいや、正夫人が産まれたお子様が跡継ぎでしょう?もし、カタリナ様の産まれたお子様が女の子だとしても、どこかの貴族の次男か三男の方をお婿さんに持って来れば良いですよ。ねえ、アノンさん?」
とサラが言うと、アノンも頷き、
「そうですよ、カタリナ様。私たちは、そもそも夫のいた身ですから、そのような女との間に産まれた子どもが例え男の子であろうと、跡継ぎだなんてとんでもない。私たちの子がこの村の領主になるなんて考えられませんよ。
それに私はもう年なので、子どもを産もうなんて思いませんから。全部、カタリナ様にお任せ致します笑」
とアノンが言う。そこでアノンはふと気が付き、
「サラさん、ということは、もしかしてずっと避妊しているの?」
と聞くと、
「はい。もう出産なんて大変なことは経験したくありませんから。それこそ、もし子どもを産むなんてことになれば、命がけになると思いますから。マモル様の妻になった時から避妊しております」
とサラは言う。それを聞いたカタリナがアノンに聞いた。
「アノンさんは避妊、されているのでしょうか?」
この世界でアノンくらいの年になるとほとんど閉経している。だからカタリナはアノンの顔色を見ながらおそるおそる聞く。アノンは少しウンザリした顔で、
「それがまだ、女の日が来るのよ。だから一応避妊してるわ。私は自分で避妊の呪文掛けることができるから、そうしてるし。でも女の日が来ると言っても、若い頃みたいに出血の量も多くないし、体調悪いってことも少なくなったから楽になったのよ。でも村の女の人の中には、女の日がなくなったらなくなったで、具合の悪い人もいるから診てあげてるけど。女っていつまでも大変よねぇ」
とため息を突く。そして
「でも、アタシはもうマモルくんの夜の相手をするのは終わりにするから、マモルくんの相手をするのはサラさんに任せるワ」
とアノンが爆弾を落とした。
「え、え、それは夜のお相手するのは、しばらく私だけということですか?」
サラが狼狽えながら聞き直す。
「うん、そう。でも、毎日、サラさんの部屋にお泊まりしてもらうのは、サラさんが気の毒だから、アタシの部屋で泊まってもらってもいいし」
というアノンの返事に、サラは?の顔をし、カタリナもサラの顔を見ながら?という顔をしている。
サラが、
「アノンさん、マモル様が泊まりに来られて、いたされないのですか?」
と身を乗り出して聞いてきた。アノンはニンマリしながら、
「当然よ。するときもあればしないときもあるし。アタシだって、年のせいかも知れないけど、いつでもマモルくんに抱かれたいわけじゃないから、「今日はそんな気分じゃないの」と言えば、マモルくんは分かってくれて、私を抱きしめるだけで、眠ることもあるわよ」
「「えぇ!!」」
サラとカタリナがハモった。
「わ、わたしは、マモル様がいらっしゃったら、必ず致すものだと思って......」
サラが衝撃の事実にガックリと肩を落とす。アノンもカタリナも、いつもサラの部屋から嬌声が聞こえてきて、サラが嫌なことなんてないのだろうと思っていた。それなのに、無理に抱かれることがあったのかしら?と思うのだった。
「な、なら、マモル様は何もされなくとも、眠られるのでしょうか?」
サラがすぐに立ち直ってアノンに聞いてくる。
「うん、そうね。マモルくんも、そんなにしたいってわけではないみたいよ。それに、何もしなくても手を繋いで魔力を流してくれるわね。それをするとアタシはすっと眠りに入れるから。マモルくんに抱かれたまま眠りにつけるのよ」
サラはガーーーン!!という音が頭の中で響いていた。今日は疲れていて、ちょっとしんどいなぁ、と思っているときもマモルが来るから、することをしようと心に決めてベッドに入り、マモルを待っていた。それなのに、マモルに抱かれて魔力を流してもらいながら眠りに付けるなんて。そんな夢のようなことでいいのなんて、信じられないのだけど。でもせっかく来てもらえるのに、何もしなくて寝るなんてもったいないような気がする。マモルの妻になってから初めて知った、女の歓びというヤツが少しくらい眠くても、身体がだるくてもやっぱり求めてしまうのだ。
そんなサラの気持ちとは関係なくアノンは、
「だってさ、マモルくんは村の外に出かけているときは、相手がいないじゃない。だから、ずーーーとしないこともあるわよね?今だって、娘ら連れているから、そういうお店だっていけないし、ずっと禁欲しているのよ、たぶん。それに、女が1人もいない所にずっといることもあるんだし。
マモルくんはね、ポツン村にいるから、妻の所に来ているだけなんだって。それに妻が3人もいるから順番に相手しないといけないと思って、回っているんだと思うよ」
「確かに言われてみればそうですけど」
とサラは頷いている。カタリナがアノンに聞く。
「と言うことは、私はマモル様と一緒に寝るとおなかの子どもに影響が出るかと思ってご一緒していなかったのですが、ただ手を繋いで寝るということもできるのでしょうか?」
と真剣な顔で迫ると、
「それはアタシに聞くより、マモルくんに聞いてみてよ。でもたぶん大丈夫だと思うなぁ。マモルくんだって妻が3人いて、相手するのも結構大変かもよ。特にサラさんがさあ、ねぇ」
ニマニマしながらアノンが言うと、カタリナも、
「そうですよねぇ、サラさんが昼の謹厳な顔を脱ぎ捨てて、夜は変身して奔放に喜びを求めているのですから、ふふふ」
と言うが、サラは何を言われているのか分からず、キョトンとして、
「私がなにか?何を言っておられているのでしょう?」
と真顔で2人に聞き返す。アノンとカタリナは互いの顔を見て、アイコンタクトをする。
『サラさん、気がついてないんだ!』
『そうですね、知らないのですよ』
『これは追求したらいけないわ』
『そうです、ごまかしましょう』
一瞬のうちに会話は終了した。
アノンがサラに向き直り、
「ごめんなさい。アタシの勘違いだったわ。サラさん、気にしないでね」
「そうですよ。私も勘違いしていました、申し訳ありません」
と2人が頭を下げてきたので、サラは何がなんだか分からないが、一応納得する。
「ええ、お二人が良いなら私は良いですけど......」
「でもねぇ、マモルくんは今頃、どうしているのかしら?」
アノンが言うと、
「本当にそうですよねぇ。みんな元気でやっているのかしら?」
サラが相づちをうち、
「ずっと戦場にいるのですから、色々と困っているでしょうに」
カタリナが言う。その言葉に乗っかってアノンが
「戦った後って気分が上がっているから女が欲しくなるって言うけど、どうしているのかなぁ?」
「「え!?」」
「あ、知らなかった?そういうものらしいのよ。マモルくんも前はそうだったし。アタシが大公様と一緒にゴダイ帝国に行った帰り道で、何回も戦闘あって、そのたびマモルくんはたくさんの敵を殺したんだけど、その後は大変だったのよ。何回も何回も」
自然と話を盛ってしまうアノン。カタリナとサラはゴクン!と唾を飲み、
「大変なのですか?」
「そうなの。戦いが終わってから、2人になったときに求められ、1度で収まらないから、2度3度とあって。それだけじゃ足りなくて寝て起きた後にも求められて」
とアノンが話を盛って話すと、
「そんなにーー!?」
とカタリナは引くけれどサラは、自分でもそんなに求められたことあったなぁー?と思い返している。サラが黙ってしまったので、アノンとカタリナは、これは思い当たる節があるんだろう、と以心伝心してしまう。胸もなく尻も張っていない、かなりスレンダーで肉感的とはいいがたいサラの体型だが、マモルは意外と好んでいるのかも知れないと2人は思うのだった。
サラに対する視線を窓の外にやり、
「これできっと、モァさんたち4人はもう戦場に行きたいなんて言わないでしょうよ」
アノンが言う。サラとカタリナも頷き、遠い戦地の空を見る。
「マモル様ももうこりごりでしょうね。あの子たちを連れて行くというのは」
カタリナが呟くとサラが、
「そうでしょうね。でも、ミンはルーシ王国で生活していたときは、戦場よりも大変な状況だったようなことを言ってたから、ミンだけなら連れて行くのは苦にならないかも知れませんね」
と答える。アノンも頷き、
「アタシもロマノフ商会で旅するときは、ほぼ男として生活していかないと付いていけなかったですもん。ミンのルーシ王国のときの生活を聞いたけど、あれを経験していたなら、どこでもやっていけると思うわ。それに旅に治療者はゼッタイ必要だから。攻撃したり防衛したりするのに戦う者は普通に揃えているけど、治療できる者、それも腕の立つ者ってホントに貴重だから、今回の遠征でミンの行動見てて、マモルくんはミンを外に連れて行くようになるかも知れないわ。アタシはもう旅の空って無理だもん」
「そうね、そうかも知れないですね。マモル様はこれからも色々な所に行かされそうですから」
カタリナが頷くと、
「マモル様は『シュッチョーに行く』と言われていましたけど、どこかに行くと女を連れて帰ってきたりしますから。アノンさんもそうだし、ユィモァ様もそう。スーフィリアだって連れて帰って来たし、今回はどうなのかしら?」
サラが言うと、
「ほんとに。また増えるのかしら?アタシは仲良くやれれば連れてきても良いけど」
アノンが頬杖つきながら言う。
「私のときは、マモル様はその気はなかったと思いますけど、ウンと言わざるを得ない状況に追い込みましたから」
カタリナが言うと、
「え、ホントですか?そう言えば、私のときも、そうでしたね」
サラも笑いながら言い、アノンも、
「アタシも押したら応えてくれたなぁーー」
と言うと、2人が、
「何それーー!?聞かせてーー!?」
「初めて聞きました。教えてください!!」
と言う。マモルの知らない所で過去の闇が暴かれていく。




