ザーイに戻り
エミネのお姫さまを治して、こりゃデニルさんも治しといた方がいいなと内心決意。子どもは感染してないようで良かった。
エミネの身体にかなり『Cure』しているのに、足なんかまだ痕があるのは、それほど深い傷ということなんだろう。よくぞ、こんな身体で仕事していると思う。その前に、よくここまで階段上がってきたな、と。おまけに子ども抱いてたし。
エミネの治療が一通り済んだ。エミネはスッポンポンで足を屈伸したり、腕を回したり身体ひねったりしている。スッポンポンですよ、スッポンポンで。見える所が見えてて、お姫さまが開いたり閉まったりして。エミネさん、キミに恥じらいと言うものはないのか?と聞きたいが、それを聞くと「そんなこと見てる、このスケベ♡」と言われそうなので、黙って見ている。
「お客さん、ホントに、ありがとう。身体の痛いとこ、具合の悪いとこ、全部なくなった。こんなに調子いいの、久しぶり。ホントにありがとう。払うお金ないから、代わりに私を抱いて。ファティマの分は、お金もらってるから、私タダでいい。私とファティマの2人で、相手する。お願いシマス」
と言ってきた。ファティマも後ろで、頷いている。えーー2人?確かに男たるもの、2人相手というのは1度は経験してみたいもの♡異世界ノベルでもハーレム展開というのは当たり前に語られてるもんな。人、エルフ、獣人、魔人、悪魔、などなどありとあらゆる女性を集めて云々。
でも、いざとなったら、何をどうすればいいのか分からない小日本人のオレ。旅の恥はかき捨て!か?いや、どうしよう?2人の相手って何をすれば良いのか?任せておけばいいのか?2人はプロだし。でもやっぱり1人にしておこう。2人相手の甘美な世界に沈殿してしまって(自分で何を言っているのか分からない)抜け出せなくなるのが怖い。
と言うことで、1人に相手してもらうことにした。やっぱり安心な気持ちで致したいから。
「いや、気持ちはありがたいけど、オレは1人でいいから。ファティマで良いよ」
「え、そんなこと言わない、で2人でやろうよ。よく、2人呼ばれるから」
とエミネは言うけど、ベッドの上見て、
「だって、子どもがいるし。泣いたりしたら気になるし」
「そんなこと、言わないでさぁ!」
と粘るエミネ。別に金を払わないって言ってるわけじゃないんだから、大人しく言うこと聞いてくれればいいと思うけど?
「エミネはね、夕べのこと、私とハチセから聞いた。それで、自分も体験したいって」
とファティマが言う。なるほど、そういうことね。
「なら、エミネが相手してくれればいいから。子どもはファティマが預かって、下で待っててくれるか?はい、これは家に持って帰って」
とポケットから、干し肉1束を出して渡した。
「お客さん、干し肉、簡単に出すけど、これはスゴいね」
おっと、2人の目の前でカモフラージュせずにポケット使ってしまった。目くらましのバッグ使うの忘れてしまった。
「こういうの、他の客でもいるんだろ?」
「いる。使えるの、見せびらかす。偉そうな顔して、出し入れする。あれはイヤ」
とエミネが、ほんとに嫌そうに言う。そうね、そうだよね。
「オレが使ったのは見なかったことにしてくれ。この干し肉は口止め料も入っているんだからな。その代わり、またここに来たときは2人を呼ぶから」
「うん、分かった」
ファティマは子どもを抱いて部屋を出て行った。
「お客さん、ファティマにしたようにしてみて。私も、魔力あるか、調べてみて」
やっぱりエミネもそっちの方が興味あったんだな。でも調べて見ると、やっぱりエミネにはなかった。オレは疲れてきて1回戦で終わることにした。エミネにいくつ『Cure』を掛けたか忘れたけど、結構魔力を使ったんだと思う。それに身体の傷を見て、ちょっとダメージ受けたし(戦場の死体見ても何も思わなくなったけど、エミネのキズは心に刺さった)。
隣の部屋ではビクトルくんが励んでいるようだ。いいなぁ、若いってのは、腰が痛いなんてことはないんだろうな。明日になったら、孝行息子がずっと何かに挟まれている感じがするんだろうな、きっと。ビクトルくん、キミはいつか1人でお姉さんの所に行って、痛い目に遭うことがあるんだよ。今のうちにせいぜい楽しんでおきたまえ。
あぁ、ビクトルくんの勇姿をサラさんに語りたい!!語りたくて堪らない!!このジレンマをオレはどこにぶつければいいんだぁぁぁぁーーー!!
翌朝、デニルさんに『Cure』を掛け、宿を出る。ファティマたちにしたことはバレていないようで、治療してくれと言うヤツもおらず、何事もなくメルトポリを出ることができた。もう来ることもないかな、この町は。ギーブの黒死病の時みたいに、町の隅々で『Clean』掛けて回ればいいのだろうけど、ここはヤロスラフ王国の領地でなさそうだし、オレが何かしに来ることはないだろうな。
ザーイで麦飯とろろゴハンを補給し、メルトポリで放出した以上に補給した。山芋はなぁー、ポツン村で栽培できると思うけど、魚醤が作れない。こんな臭いもの、大顰蹙ものだと思うから、ザーイから運んできてもらうしかないだろう。魚だって、焼いて食べようとしたら「これを食べるんですか?」という白い目で言われたし。生臭い、泥臭い、などなど散々苦情聞かされたので、どうしても魚が食べたいときは1人で食べている。しかし塩焼きしかできてない。味噌、醤油が欲しい。斉藤さんに会いたい。帝国に行きたい、行けるものなら行きたい。作ってもいいが、しょっちゅう留守にするオレは面倒見切れないので、造れない。もう1人日本人の転移者が欲しいなぁ。ただし細かい性格の人限定です。
それで、ザーイに1泊したあと、すぐ隣の町だから、わざわざ泊まらなくてもいいのだが、キシニフに宿泊する。ビクトルは嬉しそうな顔をしながら、
「泊まる必要あるのですか?」
としれっと聞いてきやがる。そんなこと言うと連れていってやらないからな。オレはミワさんに会いに行くという大義名分があるけど、キミは単なる連れなんですよ。ご主人様が致している間は、従者はポツネンと待ってるというのもありなんですよ?それなのに、オレが行くと言うことは必ず自分も連れて行ってもらえ、致すことができると考えているでしょ?
娼館の前で、
「ビクトル、今日は2回で止めろよ」
と言うと、顔を真っ赤にして、
「そんなにやってません!!」
と力説するけど、キミはハチセとは必ず4回していたと言うじゃないか?ネタは挙がっているんだよ。オレの中ではビクトルのことを「機関銃ビクトル」と呼んでいるんだからね。まぁ、持ち物が機関銃か大砲か、見たことないから知らないけど。
運良くオレもビクトルも、前のお相手は空いていた。やはり早く来るものである。どうも一番乗りだったようで、ビクトルのお相手は驚いていたが。
ミワさんはオレがまた来るとは思っていなかったようで、オレの顔を見て驚いていた。娼館に来る客というのは「必ずまた来るから」と言いながら、2度と来ないのが普通なのだそうだ。
ミワさんの部屋に入り、麦飯とろろゴハンを出す。一瞬の間があり、ミワさんの顔が満開の笑顔になった。
「麦飯なんだぁ!へぇー、とろろゴハンなんて、何年ぶりなんだろう?うふふ、もう一生食べることなんてないって、諦めていたんだ。ありがとう、タチバナ様!嬉しいよ、ホントに嬉しい!」
目尻に涙をたたえながら言ってくる。
「どういたしまして。でも醤油じゃなくて魚醤なんだ。そこはゴメンね」
「いいよ。そんな贅沢言わないから。でも、そうなんだなぁ、麦ゴハンにとろろかければいいんだ。思い付かなかったよ。食べてイイ?あぁ、もう、ガマンできないんだけど?」
ミワさんは引き出しから箸を出してきた。
「これでほうじ茶があれば言うことなんだけどな」
と言いつつ、涙流しながら笑いながら食べている。
「幸運をみんな使っちゃった気がするよ」
人が嬉しそうに食べてる姿を見るのって、ホントに幸せになる。




