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宰相リューブ様に会う

領都編が始まります。あまり、大きな展開にはならないのですが。

 馬車は何事もなかったように進み、どこかの街で宿泊し、翌日の夕方、やっと領都に着いた。領都はカニフという名前だそうで、領主様の名前はデニス・シュミハリ様と言うそうだ。だから、この領はシュミハリ辺境領という名前になるのか。辺境というからには、国の端っこなんですね、隣の国とも接しているんだし。


 領都の入り口の門は長い行列ができていたけど、異世界ノベルの決まり通り、お貴族様は審査をスルーして中に入る。ちょっと違うけど、外交官特権?のように荷物も何も一切調べられることもなく、顔パスで通れるもんね。


オレが出張で飛行機乗って4時間ほどかかって行った国は、外国から来た旅行客の入国審査の列がずぅ~~~とつながっていて、遙か遠くに審査官がニコリともせずパスポートを見て『入れてやってんだから』感満載で対応されたのが懐かしいよ。


 小市民的優越感に浸りながら、一般庶民の羨望のまなざしを受けながら、門の中に入ると大通りが真っ直ぐと伸び、突き当たりの高い所にお城がありました。あれば領主様のお館なのでしょうか?私には縁がなさそうです、なくていいです。


 ここでオレはどこに泊まるんだろうと心配していたら、なんとポリシェン様の家に泊めていただけるんだそうな!と言うのも、オレは他に知られたくない情報を知っているから、変な所に泊まらせて喋ってしまうと大変なことになるので、ポリシェン様の監視下に置いておくとのこと。

 そして、やっとポリシェン男爵家に到着しました。当主様が到着すると、やっぱり奥様、子どもたちを筆頭に使用人、いや召使いの執事とメイドの皆様が玄関にお出迎えされるんですね!おぉ、絵に描いたようなビクトリア朝のメイド服がずらり並んでおりますよ!これは、残しておきたい!『Picture』が使えないのが残念です。もともと『Picture』なんてないかも知れないけど。


 最初にポリシェン様の奥様らしい美女が挨拶し、子どもたちが挨拶し、老執事らしい人が挨拶するという、ヲタが見るとよだれを垂らして喜びそうな光景が目の前で繰り広げられています。すごいです、見とれてしまいます。アキバのメイドさんたちもスゴいけど、本職の方たちの持つリアルさは違うわ。庶民の女性ではそれほどでもなかったけど、奥様の胸から上の露出がすごくて、どこを見ればいいんだろう?スカートは足下もしっかり隠されているけど、胸が、胸が溢れそうになっていて(盛られている?)おっぱいのてっぺんが出るんじゃないか?と思うくらい、胸元が広げられていて、あれって現実にあるんだ!という感動と、目のやり場がなくて、奥様の顔に視点を移しても、大きな目で覗き込まれると、もう自分でも顔が真っ赤になっているのが分かる。

 子どもたちだって、お人形さんのようで、女の子って可愛いなぁ、って危ない世界に入って行きそうだ。


「おい、マモル、どうしたのだ?」

 感動と興奮に浸っているとポリシェン様が声をかけてこられたので、現実世界に戻る。もう少しで幽体離脱するところだったかも。

「いえ、何でもありません」

「そうか、何かぼーとしているように見えたが。マモルはこれからしばらく、この家に住んでもらう。宰相のリューブ様からお呼び出しがあるまでは自由にしていていいが、この屋敷から出てはいけないからな。あと、生活については執事のイワンに聞いてくれ。それでは私は用があるからな、イワン頼んだぞ」


 執事と言えば、セバスチャンが異世界ノベルの定番かと思っていましたが、残念です。

「イワンさん、私はマモルと言います。よろしくお願いいたします」

「遠いところ、ごくろうさまでした。私のことはイワンとおっしゃってください。では、お部屋にご案内致します。こちらにどうぞ」

 イワンさんは思った通りの執事の動作で、オレをお屋敷の中に案内してくれる、ビデオに撮りたい。ある部屋の前で止まり、ドアを開けながら

「こちらがマモル様のお部屋でございます。必要なものは中にご用意してございます。不足なものがありましたら、お申しつけくださいませ。ご夕食のときはご案内致しますので、それまでは、お部屋でおくつろぎくださいませ」

 と流れるように語り、洗練された仕草で一礼をして出ていった。部屋は、さすがに広い。オレのアパートの2倍以上ある。ベッドだってダブルよりも大きいですよね、オレの部屋のキツキツのベッドとは比べるべくもない。部屋の奥にドアがあるけど、何?もしかして、と思ったらトイレでした。さすがに風呂やシャワーはないよね、そもそもどうやってお湯を沸かすんだ?という問題あるし、ね。


 小日本人の典型的な行動で、部屋の中の捜索をやってしまう。これって海外出張に行ったとき、現地スタッフが予約してくれたホテルの部屋が思いのほか豪華でどこに何があるのか、確認して回るというパターンですよ。


 衣装タンスも見たことないような立派なもので、中には服が入っていた。下着もパジャマ?も。これを着て明日から生活せよ、と?これに比べると、あの村で着ていた物は、服とは言えずゴミでしかないわ。それでも、みんな継ぎを当てながら着ていたけど。

 ベッドに並んで、ちゃんとした机があるし、これで勉強しろと言うことなんだろうか?おや、机の上に呼び鈴あるから、鳴らせばメイドさんがくるのかしら、鳴らしてみたい、呼び鈴を!『お呼びでございますか、ご主人さま』と言われてみたい、キャ!

 もう、想像が止まらない。死んでしまいそうだ。


 ベッドで妄想しているうちに寝てしまったようで、イワンさんが夕ごはんだと呼びにきた。ついでに風呂について聞いてみた。

「お風呂はこの館にはございません。ご希望あれば、お湯をお部屋にお持ちいたしますので、身体をお拭きください」

 ということでした。やっぱり大金持ちか、ずっと偉い貴族様しか入れないんでしょうね。やっぱり異世界転移パワーで何とかするしかないのでしょう。


 イワンさんに連れて行かれたのは、異世界ノベルにありがちの広間で、ご家族の方たちが揃って、オレを待っておられた。お貴族様たちが、ド平民のオレを待っておられる、視線と胃が痛い。


「マモル、今晩は私の家族と一緒に食事をとろう。家族を紹介しよう。これが妻のアンナだ。そして、これが息子のヨハネ、娘のカタリナだ。

 マモルのことは訳あって詳しく紹介することができないが、しばらくここで暮らすことになる。外に出ることもできないので、何かマモルのことを聞いてくる者がいるかも知れないが、その時は黙っているようにしてくれ」

 ポリシェン様から紹介のような挨拶のような説明があり、食事となる。予想通りフルコースで(というより、フルコースというものが、どういうものかよく知らない貧乏人のオレですが)ナイフとフォークを使い、あまりの緊張感で飲んだか食べたか分からないような食事が進む。


 肉料理が終わって、あとはデザートがコーヒーが出るのかしら?と考えていたら、メイドさんが、ツツツとやってきて封筒をポリシェン様に渡した。封を開け、中の書面を読んだポリシェン様がオレに向かって

「マモル、明日の午前、さっそく宰相のリューブ様がお呼びだ。登城される前に会いたいということだから、朝食を食べたらリューブ様のお屋敷に向かうから、心して置いてくれ」

 と言う。おぉ、さっそくですね。

「リューブ様はお忙しい方だから、お会いできるのは数日後だと思っていたが、マモルについては、とても興味を持っておられるのだな。先ほど、領都に到着した旨、ご連絡したばかりなのだが明日お会いになるという。異例中の異例なことだ」

 そうですか、オレにはよく分かりませんが。


「ただ、マモルは平民ゆえ、公の場でお会いすることはできない。そのため、リューブ様のお屋敷の庭でお会いすることになる。シショーのような失礼なことをしないように頼む」

 ははーーーー、了解いたしましたぁ。それにしても、滝川さん、やらかしてますね。

 それにしても皆さんとご一緒の食事というのは、息が詰まりそうなので、明日から1人で食べさせて欲しい、と恐る恐るお願いしたら、快諾された。もしかして、最初からそういうつもりだったのかしら?


 翌朝、ポリシェン様に連れられリューブ様のお屋敷に向かう。

 やはり大きなお屋敷に圧倒される。最初の村の小屋との違いに涙がにじんできます。ヒエラルキーの頂点の方と最底辺の差をまざまざと体験しています。ここの残飯をあの村に持っていったら、大喜びされるんじゃないだろうか?


 広い、とにかく広く、花々が咲き乱れている庭でポリシェン様と2人でリューブ様を待つ。キレイなメイドさんがお茶を持ってきてくれるけど、高そうなカップに手が出ない。ダンの作っていた弥生式土器と伊万里焼くらいの差があるなぁ、ダンの言ってた通り、領内で芸術品レベルの陶磁器が作られていたんだね。お見それしました。同じ国の中と思えないギャップ。たかが馬車で4日ほどなのにね。

 

 ポリシェン様とポツーーーンとどれだけ待っていただろう、屋敷の中からコツコツと靴音がしたかと思うと、年配の痩せた紳士が出てきた。見るからに宰相様という感じですね。

 ポリシェン様が急に背中に棒を入れたようにしゃきっとして、一礼するのでオレも習って一礼する。

 リューブ様は鷹揚に頷き話始めた。

「構わぬ、気を遣わなくとも良い。時間がないので率直に話をしよう。ポリシェン、その若者が『降り人』か?」

「リューブ様、その通りでございます」

「そうか、マモルと言ったか、直答を許すから質問に答えよ。あの村から送られてきたものは、オマエが見つけたということだが、本当か?」


 オレに回って来ましたよ、これは営業で培った会話術を示す場面ですね。

「はい、私があの村で見つけました。私は前に住んでいた世界で、あの実のなる木を栽培しておりまして、実から粉を作ることもやっておりました」

「なんと、あれを栽培していたと言うのか?」

「はい、母親が色々と香辛料を楽しむことを趣味にしておりまして、家で栽培しておりましたので、私も育てておりました」

「......信じられん。家で栽培していたと言うのか。マモルはあの粉を我が国では輸入していると聞いているか?」

「はい、聞いております」

「そうか。実はあの粉は非常に高価でな、領内で栽培できないものかと検討していたのだ。しかし、いろいろ調べても隣国から情報が取れなくてな、種や栽培方法など今まで何も分からなかったのだ。それが、こんな形で分かるとは」

「あの粉の実は、村の横の森の中に自生しておりました。試しに村の中に挿し木したところ、根が張ったように思えましたので、このまま育っていくものと思えます。たぶん、あの地は生育に適していたものと考えます」

「そうか。それにしても、なぜにあの村で木が育っていたのであろうか?」

「私が想像しますに、渡り鳥の身体に種が付いて運ばれたのでないかと。私のいた世界でも鳥が、様々な植物の種を運んで、遠い所で見たこともないような植物が生育するということがありますから」

「なるほど、それならば領都の近くで栽培はできるだろうか?」

 と話をしているとき、奥の方から執事らしき人が来て、リューブ様の耳元で何か言うと

「しばし待て。急用ができた、すぐに戻るから、ここで待っていてくれ」

 と言って、リューブ様はあたふたと奥の方に入って行かれた。また2人で残されてしまった。


 何をすることもなく、待つ。ポリシェン様とは、特に何も話す事がないので無言で屋敷の奥を見ていると、奥の方でとびっきりの美少女がひょいっと顔を出した。10才くらい?もう少し上?こっちを興味津々という顔で見てるよ。

 顔を引っ込めたかと思うと、今度は近くのカーテンの陰から顔を覗かせた、だるまさんが転んだじゃないんですが。きっと、リューブ様の娘さんかお孫さんですよね、傍若無人にお屋敷の中で動いているし。ポリシェン様の娘さんも美少女だったけど、この子も可愛いなぁ。ツインテールをヒラヒラさせて、顔を出したり、引っ込めたりしてこっちの反応を見ているんだろうか?カタリナ様と2人で、とあるグループのユ〇モアを思い出してしまう。あぁ、目が幸せ過ぎる!!


 とうとう、全身を表し近づいてくる。もう、全身から『あなたは誰?』という疑問がにじんでオレに向かっていますよ?私の暇をなんとか潰してね、というオーラも一緒に見え隠れしていますが。

 目の前まで美少女が来て

「あなたは誰?」

といきなり聞いてくる。

「あなたは誰?と聞いてくる、あなたは誰でしょう?」

「あら、私を知らないの?(横でポリシェン様が、リューブ様のお孫さんのマリヤ様です、と小声で言う)そう、マリヤよ。あなたはだ~れ?」

 もう人を舐めた顔で聞いてきやがる。

「私はマモルという者です」

「あぁ、あなたがおじいさまの話していたマモルね。ねぁ、私にアナタの住んでいた世界の話をしなさい」

 なんと、オレの秘密がバレていますよ、宰相様!そして何コレ、この上目線!!美少女から高圧的な口調で命令されるという快感!!


「私は今、時間があるの。この私の貴重な時間をあなたに少し分けてあげるから、何か話をしなさい」

 えぇ、典型的なお嬢様パターンっすかね?んんんん、日本の話をしても説明が多すぎるから、何か一つ物語を咬ましてやろう!お貴族様にはあれか!


「では、私の世界のことですが、一つお話を致します。

ある国の都で大変仲の悪い貴族がおりました。その貴族は何かと反目し、ことあるごとに(いさか)いを繰り返しておりました」

「やっぱり、どこでも同じようなことはあるのね」

 とお嬢様は上手に合いの手を入れてくれる。

「貴族の片方の家の名はモンタギュー侯爵家と言い、その家にはとても美しい娘がおりました。名前をジュリエットと言いましたが、まるでマリヤ様のようなお姿の方でした」

「まぁ、私のような娘ですか?」

 そうです、あなたのような娘です。ジュリエットの外見は見たことありませんが、マリヤ様に似せていき、親近感を持たせましょう、ニヤッ。あれ、ポリシェン様も興味あります、この話?


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