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移動中の馬車の中で語られる

いつもありがとうございます。

この舞台の設定として、現在我々の生きている世界から、死んだ人は結構転移しているという前提に立っています。ただ、転移しても、たいがいは転移してすぐに死んでしまう、ということです。

だって、女性が転移しましたと言って、よほど特別な力を持っていない限り、生きていくことはできないですよね?王城や領主の館とかに運良く降り立ったとしても、何もできないんじゃ、すぐに底辺に落ちてしまいますよね?

ですから、この小説の場合、転移してきて生き残るのは一万人に一人、くらいの感じで書いています。私がもし、転移したとしても間違いなく、瞬殺されます。

 興が乗ってきたのか、ポロシェン様の話は続く。

「私はそれで終わったと思ったのだが、リューブ様は面白がられて、シショーにさらに何か見せるように言われたのだ。そうするとシショーは、ヤツはだな、本当に困ったヤツでな、『それでは槍を貸していただけますでしょうか?』と言い出したものだから、私は心臓が止まるかと思ったのだ。そうだろう、剣なら投げないとリューブ様に届かないが、槍で突こうと思えば突ける間合いなのだぞ。


 それでもリューブ様は槍を持って来させて、ヤツに渡された。ヤツは何をするのかと思いきや、紙をまた宙に舞わせて、槍で一突き。見事、紙を槍で貫いて見せたのだ。宙を舞っている紙を槍で突いて見せたのだ、私もリューブ様も驚いて声が出なかったよ。

 ヤツはこちらを向いて一礼したので、やっと『よくやった』と言葉が出たがな。リューブ様が、私にできるか?と聞かれたのだが、とてもとてもできるわけがなく、辞退したのだが。

もしかしてマモル、オマエもシショーも同じ異世界から来ているというなら、シショーと同じことができるか?」


 それは無理です、同じ世界出身者は同じことができる、という思い込みは止めてください。

「申し訳ありません、ポリシェン様。私には無理です。おっしゃられたことは、シショーが特別な人、武人だったということを証明することです。それくらいの剣技ができるのは、私の元いた世界でも100万人に1人ぐらいなのではないでしょうか?」

 これはハードル上げておかないと、迷惑な話ですから。

「そうか、やはりヤツは、特別な者だったのだな。

 それで、リューブ様はシショーの剣と槍の技に対して褒美を取らそうとされ『紙を斬った剣を褒美に渡そう』と言われたのだが、シショーがなんと辞退したのだ。その理由が『私はこの先、この剣を使い、お役目をなすことがあるとは思われません。私は手元にある剣で十分ですので、褒美を頂けるのであれば、わずかばかりの金銭をお与えください』と言ったのだ。私からすると剣をリューブ様から頂けるというのは、とんでもない名誉なのだが、それを断るというのは無礼千万、私の顔に泥を塗る行為なのだが、平気な顔でヤツは言ったのけたのだよ。


 それで、リューブ様は逆にその返答を面白がられて、金銭をやっても良いがその金は何に使うのだ?と戯れに聞かれたところ、シショーは『悪党どもの退治に連れて行った仲間たちを怖い思いをさせたにも関わらず、何も報いてやっておりませんので、酒と女のいる所に連れて行き、一晩良い思いをさせてやろうと思いまして』とぬけぬけと言うものだから、リューブ様も私も呆れてしまった。

 リューブ様が『私はシショーの女の一晩が幾らか知らないが、これくらいで3人分は足りるか?』と言われ、金貨3枚を出されるとシショーが、ヤツがな『いえいえ、私のなじみは銀貨1枚でお釣りがきます。仲間の者も、余りいい思いをさせると癖になりますゆえ、3人で銀貨3枚で十分です』と言ったものだから、リューブ様は大笑いされて、銀貨3枚だけ渡された。


 私は生きた心地がしなかったが、その件もあり、私はその後リューブ様からたびたび呼んで頂き、騎士隊の隊長に昇進したのだ。知らないと思うが騎士隊員は騎士爵だが、隊長は男爵なので、男爵に叙爵できたのはリューブ様とシショーのお陰ということだ笑」

 褒美の剣を断って、小銭もらうって滝川さん、大物過ぎますよ。ジンさん、バゥさん、ここでも良い思いをしてたじゃないですか!滝川さんに、どれだけタダ酒飲んで、女にもてたか、ちゃんと伝えてお礼していませんよね!


 馬車は途中休憩を挟みながら、夕方には宿場街に入った。ここはミコライという名前の街らしい。さすがにこの街は村とは違って、周りが石垣で囲まれており、門には門番がいる。門には行列できていたけど、当然のことながらポリシェン様はスルーして中に入れます。


 門を入り、堂々と道の真ん中を通って町の奥に入って行く。こんなにたくさんの人を見るのは久しぶりで懐かしい。宿舎はもちろん決まっているようで、庶民が泊まるような宿屋ではなく、公立の貴族専用の宿舎ということだった。江戸時代の本陣のようなものですかね? 


 立派な作りの宿舎の前で馬車が駐められ、オレは下ろされる。周りで宿舎の人たちが色々と動いて片付けとかされているが、オレは何もできないので立っているだけだ。それにしても人通りの多いのには驚く。と言うか、村が特別なんだろうね、それに気になるほど臭くないし。ほら、外国に行って飛行機からターミナルに入ったときに、その国特有の臭いがするでしょう?ああいう感じ。この街に来て村は特別なことが分かった、良かった臭くなくて。

 

「マモル、こっちだ」

 物珍しくキョロキョロしていると、ポリシェン様に声を掛けられ、宿舎に入る。ポリシェン様にはお付きの者がいるので何か話をしておられ、オレには宿舎の人が部屋に案内してくれる。

 オレの部屋はビジネスホテルの部屋を少し大きくしたくらいで、ベッドと机があった。トイレと風呂はもちろんないけど、ベッドは村と違い本当のベッドで、クッションがある。このありがたさ!やっと文明に触れた気がする。風呂は?シャワーは?部屋にはないけど、どうなんだろ?


 トン、トン、トン

 ドアがノックされ、宿舎の人が来たよ。

「マモル様、お召し物をお着替えください。着て来られた物はこの袋に入れてください。トイレはあちらにありますし、身体を洗われたいときは、裏庭に井戸がありますので、そちらをご利用ください。食事は準備ができましたら、お呼び致します」

 とビジネスライクに告げられた。オレの扱いって、一体何なんだろう?一応、客人というレベルに近いものではありそうだけど、下僕よりは上で、貴族様よりは下?


 時間はあるけど、知らない街に出たいとも思わないし、一文無しなので、食事まで部屋で魔法の練習をしよう、というか他にすることがない。

 馬車に一日乗っているという体験は生まれて始めてだったので、ひどく疲れた。馬車はサスペンションがもちろんなく、道路は舗装されているわけがないので、道の凸凹と忠実に馬車に反映してくれるので、そのまま身体に伝わってきた。ポリシェン様というお偉い方と一日一緒にいたので、それだけで肩が凝ったし。明日も一緒なんだよなぁ、領都まで残り、どのくらいあるんだろう?

 まずは

『Cure』

 これで、身体の凝りがなくなったような気がする。次に

『Clean』

 風呂にずっと入ってないけど、髪の毛の汚れもなくなるんだよな。着替えた物も一応かけておく、エチケットだし。一応、確認で

 喉が渇いていたので、

『Water』

 うん、美味しい。


 部屋を出てトイレに行くと、やっぱりそこには紙でなく藁っぱが置いてありました。水に溶けるトイレットペーパーなんて夢のまた夢。元の世界でも、日本のトイレットペーパー、ティッシュペーパーの品質の紙なんて世界になかったし、無理もないよ。村を出て町に行けば、トイレットペーパーがあるかも知れないと思ったけど、そこは同じでした。


 そんなこんなで、夕ごはんとなり、食堂で1人食べる。

 なんとパンが出てきた、硬くて黒いけど、パンはパン。よーく噛みしめて味わいながら食べる。スープだってあるし、肉と野菜の煮込みがあるし、村との違いに愕然とする。この差はなんなんだろうな?あの村にいるひとたちが、あまりにも違い過ぎて可哀想になるが、久しぶりの食事らしい食事に、我を忘れ口に入れる。あっという間になくなってしまうが、ちょっと物足りない。そうすると給仕のおばちゃんがやってきた。

「もう済んだかい?おかわりもあるよ?それともお茶を飲むかい?」

 おぉ、あなたは天使でしょうか?いや天女?おかわりもお茶もお願いします!


 おばちゃんの言うには、オレの食事代はポリシェン様持ちだそうで、馬鹿げて食べなければ問題ないそうであり、アルコールも大丈夫だそうな。ちなみにお茶は紅茶のような薄い茶色のついたお湯で、オレが恋い焦がれる日本茶はもちろんないし、コーヒーもない、でも贅沢は言いません。アルコールは炭酸の抜けた室温のビールのようなものか?ひどくマズい。

 ちなみにポリシェン様たちは、別の所で食べておられるそうで、そう言われればオレの食べている所は、台所の一角のような場所でした。でも、オレはこの方が居心地がいい。


 食べ終わって部屋に戻ろうとするとおばちゃんが

「どこか遊びに行かないのかい?」

 と聞くから

「普通は遊びに行くのですか?」

 と聞いたら

「そうさ、たいてい若くてきれいなお金のかかる女の子のいるところに行くね。どこに行けば、かわいい子がいるか教えろ、という貴族様も多くてね、爵位ごとにお薦めする店が違うから注意しないといけないんだよ。だって、皆さんが同じ店で顔を合わせたら都合悪いだろ?」

 とおっしゃる。

「オレは金を持っていないので、どこにも行けないんです」

 と言ったら、おばちゃんんが

「おや、金を持ってないとどうしようもないね。何なら、タダでアタシが相手をしてあげようか?後で、部屋の鍵を開けておいてくれれば行くからね」

 とニマニマ笑いながら、恐ろしいことをおっしゃった......。何と積極的な女性でしょうか?何の相手をして頂けるのでしょうか?......部屋に戻り、鍵をかけ、ひたすら平穏な夜を過ごせるように祈りながら、寝落ちしてしまった。

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