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領都へ出発

ここまで読んでいただきありがとうございます。

正直言って、こんな主人公が何もできない、展開が変わらない、地味な日常が続くものをよく読んでいただけていると感謝しております。

異世界ものって、最初は弱っちい主人公もすぐに無双状態になって、あとの展開は似たり寄ったりということが、ほとんどなので、もっとリアルに近づけたいと思って書いています。ただ、リアルって何?と聞かれれば、確かに?なんですけど。

私たちに生きている世界に魔力持ちがいるのか?と聞かれると、私は「いるだろう」と答えます。ただし、これだけ科学が発達していると、魔力を持っていることのメリットが失われていると思いますが。本当に当たる占い師というのは、表に出て来ないですが、そういう方は魔力を持っているのだろうと思います。

主人公は苦労しながら、たまたま降りた世界を渡って行きます。そして、同じように降りて、苦労しながら生き残っている人たちと会うことになります。

今日も読んでくださり、ありがとうございます。

 朝が明け、あっという間に夜となり、今日もノンとミンが来ている、トホホ。

 アンよ、2人を呼ぶなよ。何?アンも聞きたかった?3人で目を輝かせて待つのは止めなさいって!!


 仕方なく、日中に考えていた宮〇アニメの最高峰で「ふたりの〇トロ」の話をする。まぁ、こういう展開を考えていたから「仕方なく」というのは語弊があるけれどね。話は長いから、一晩で終わらないと思うし、話が一回で終わってもまたミンは来るだろうから、長い話の方がいいでしょう。ノンはオレから仕入れた話を、他の子どもたちに話して、お話オバチャン(お姉ちゃん?)と化しているらしい。

 この「ふたりの〇トロ」をオレが好きなのは、出てくる人がみんな善意の人であって、憎まれ役、悪役がいないこと。普通、そんなお話ってないでしょ?物語のキーとなる出来事だって、妹がいなくなっちゃうという小さなイベントが起きて、村のみんなが大騒ぎした、ってことだし。

 でも,話をしていて、お母さんが入院ってとこで、アンとミンが「?」という顔をした。この村では病院はもちろん、お医者さんだっていない。でも、ノンは領都にいるとき、孤児院の横に治療院があったようで説明フォローしてくれて、助かった。やはり、ノンは自分が子どもたちに語らないといけないと自覚が芽生えているようで、オレのつたない話を自分の中で消化しているようだ。ノンは見た目や言動より、ずっと頭がいいような気がする。


 アンとミンは精神年齢が同じくらい。それで、話が進んで、途中で続きは明日、ということにしたら、2人からブーイングが......。だって元の映画は2時間弱あるでしょ?それは4回くらいに分けますよ、ほらアンとミンはブー垂れない。ミンとノンは帰った、帰った。アンは2人になったのに「アタシだけ続きをお話して」なんて言わないの!あなたは大人なんだから、ミンと一緒に待つんですって。


 それから2晩にわたって、「ふたりの〇トロ」の話をした。途中、猫バスを猫馬車と言ったところで、ハタと気が付いた。猫が引く馬車?あれ、猫が馬を引く?あれ、おかしい。馬車がそのまま、猫になるというけど、この村に猫がいないし、虎?虎の子ども?と混迷は広がる。結局、虎車ということで、なんとなく納得してもらい、大団円の後、めでたくお話は終了となり、異世界の片隅に宮〇アニメの信奉者を3名増やしたのだった。明日からまた、新しい話を考えなくてはいけない、あまり人を痛めつけず、かといって危険な真似をしたりしないような話って、ありませんか?


 翌朝、いつものように朝ごはんを食べ、剣の練習を終え、駐屯場に植えてある挿し木の胡椒の枝を見に行く。3本植えてあり、オレとジンとバゥの木ということになっている。もう植えてから2週間近く経っているが、一度葉っぱが落ちてから新芽が出てきている。やったね、たぶん根っこが生えているから新芽が出てきたんだよ。

 と喜んでいると、ジンが自分の木に小便をジョンジョロリン、ジョンジョロリンとかけ始める。

「おいおい、ジンの汚い小便かけると木が枯れちまうぞ」

「何言ってんだ、オレが毎日小便かけてるから、オレの木が一番元気あるじゃないか?バゥのなんて枯れそうだぞ。まぁ、バゥの小便掛けると木は腐るよな笑」

「何言ってんだよ、オレのは小便なんざ、かけなくても元気だからいいんだよ。オマエのしずくを飛び散らかすなよ。オレの木が腐っちまうじゃねえか」

 横にいたバゥが反発する。でもバゥも小便かけようとしていたんじゃね?

「ほんとにそうだよ、ジン。オレの元いた世界では、肥料の代わりになってたけど、ジンの小便では、胡椒の実がなってもオレは食べる気がしないって......」

「そんなことないって、まぁ見てろよ。オレの木が一番に伸びるからな!!」


 などとバカな会話していると、村から呼ばれた。

「おーーーい、ジーーーーン、マモルーーーーー。領都からマモルのお迎えが来たぞーーーーーぉ」

 ついに来た、と思っていたらジンが

「来たか、早かったな」

 と言う。眉の間にシワを作って、考えている。

「そうだな、えらく早い。ジンの予想だと4週間くらいか?と言っていたよな」

 とバゥと話をしているとジンからせかされる。

「さぁ、マモル、行け。持ち物は剣だけでいいから、すぐ行け」

「分かったけど、別れは言わなくていいか?」

「いい。あまり貴族様を待たせるな」

「分かった、あっとチョウジは持って行くから」

「そうだな、持って来させる。バゥ、取ってきてくれ」


 門の所に行くと、外に馬車と数頭の馬、そして数人の男がいた。この村の住人とは明らかに違う身なりで、臭いがしなさそうな、見るからに清潔ななりをしている。

 その中で一番偉そうな人が前に出てきた。この村は大人の男でも160cmほどなのに、この人は170cmほどある。この人は見るからに頭の良さそうな人である。いきなりオレに聞いてきた。

「オマエが『降り人』のマモルか?」

「そうです、オレがマモルです」

「そうか、それならこの馬車に乗れ。今から領都に連れて行く。持ち物は、その剣か。あと、なんだ、それは何の壺か?」

 おっと、いきなり断定的な命令と質問ですね。そこでジンが前に出てきた。

「お久しぶりです。ポリシェン様」

 ジンとバゥが出てきたら、ちょっと顔をしかめられた。これは2人が臭いってことか?


「あぁ、ジンとバゥか。久しぶりだな、何年ぶりだ?領都の衛兵隊以来だから10年以上は経っているな。それなのに、私宛てに連絡くれたのは良い判断だった。礼を言うぞ」

「いえ、これは重要なことと思いまして、ご報告するのはポリシェン様しか思いつかなかったもので、お手数をお掛けしたと思いますが、ご連絡させていただきました」

「うむ、こちらこそ連絡もらい助かったぞ」

「はい、ありがとうございます。この壺も例のものと関連するものですので、今回ぜひマモルと一緒に領都にお持ちくださいませ」

「ふむ、例のものと同じものか?それは良いな、私が来た甲斐があったというものだ。私が預かって行こう。

 さぁ、時間がない。マモルを連れて行くので、後はよろしく頼む。もしかして、商人や旅人が来て、探るヤツがいるかも知れぬ。そのときは上手くやってくれ」

「承知しました。こちらで対応致しますので、ご安心ください」

「よし、では出発しよう。

 おっと、その前に、マモルを着替えさせなければ、ならないな。そのまま乗せてしまうと馬車が臭くなる。臭いが取れなくなると困るしな」

 ということで、身体を洗って着替える時間をもらった。一応、臭いはしないつもりだが、服がボロボロだから見た目で臭いがきつそうだ、というのはよく分かる。


 アンとさよならを言う時間もなく、遠くでノンとミンが見ているのを気づきながら、門を出て馬車に乗り込む。このポリシェン様という人と2人で馬車に乗り、他の人は騎乗しているようだ。馬車は小走りくらいのスピードで走り、あっという間に村が見えなくなった。




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