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狩りをする

 オレとジンジャー、それに村長の息子、ドンガという名前だそうだが3人で村の周りの耕作放棄地を通り草原に出る。向こうには森も見えるし、何かいるだろう。

 耕作放棄地と簡単に言うが、日本みたいに農業後継者がいなくて放棄地になったわけでなく、黒死病で働き手の絶対数が足りなくなってしまったので、仕方なく耕作できなくなっただけだろう。村の人口が増えれば(と簡単に言うけど、何年もかかる話だろうなぁ......)だんだんと耕されていくだろうけど。


 さて2人に向かって、

「オマエたちは周りに獣がいないか捜してくれ。見つけたらオレが狩りに行くから教えてくれ」

 と言ったら、

「タチバナ様、お一人で狩りをされるのですか?何を武器に使われるのでしょうか?お一人なら、あまり大きい獣は上手くないでしょうか?」

 とジンジャーが言うしドンガも、

「お一人というのは無理でしょう?もちろん私たちもお手伝い致しますが、狩りをやったことがないので、足手まといになるだけだと思うのですが」

 と泣き言しか言わない。要はオレの狩猟スタイルが通じてないということで、トークスキルが足りてない。


「いーの。オマエたちは獲物を探してくれれば。象は無理だけど、他の動物ならなんでもいいから。できるだけ肉のたくさん付いてそうなのでないと、数を狩らないといけないからね。理想を言えば牛とか豚とか羊とか鹿とかかな?繰り返すけど象はダメだからね。大きすぎて致命傷を与えるのが大変だから。あと良心が痛むからダメ。

 あと群れているのは、オレが相手している間にオマエたちの所に行くかもしれない。オマエたちの所に行ったヤツは自分で相手するんだよ。我が身は自分で守る、それが原則なんだから、ちゃんとしてね。頼んだよ。

 いろいろ疑問もあるかも知れないけど、これ以上の質問は受け付けないから。ほれ、獣見つけて。1頭狩りをすれば、どういう展開になるのか分かると思うし、早く獲物を見つけて。ほれほれ♪」

 

 オレの言うことに、まったく納得していないが男爵様の言うことには従うしかないと思ったようで、2人は遠くを見て獣を捜し始めた。ここでふと思ったのが、2人とも近視じゃないよね?ということである。


「あ!あそこ、あそこに何かいます!鹿、いや牛ですかね!?」

 ジンジャーが最初の1頭を見つけてくれた。ずーーと先で言われたら、何か黒い点がいるのが分かるくらいのモノ。ドンガはまだ分からないらしい。

「よし、近づくぞ。ついて来い」

「え?あれを狩るつもりですか?」

「私たちが近づくと逃げていきますよ?」

「ごちゃごちゃ言ってないで、黙ってついて来い。ほら、周りに他の獲物がいないか見張ってろよ!」

 先頭きって走り出す。後ろがつい来なくてもオレ1人で行くから。草原ってやつは、草だけは平べったく見えるけど、草の生えている地面は凸凹だから、むやみやたらに走るとすぐ転ぶ。早足くらいの感じで、足の裏で凸凹を探りながら走る。

「ま、タチバナ様~~~」

「た、た、タチバナ様ぁーーー」

 声を聞くと2人が離れているのが分かるけど、そんなことを気にしていられない。早く行かないと、向こうが逃げてっちゃうかも知れないし。


 そんな心配することなく、牛はオレを見つけると、オレを見たまま待っててくれた。そして50mほどになると戦闘状態になって身構えし、30mになるとこっちに向かって突撃し始めた。剣を取りだし、振りかぶる。オレも走りながら牛の頭を見る。上下に振りながら走って来ている。10m、5m、3m、2mとなったところでジャーーーンプ!!牛の頭を飛び越え、首筋狙って剣を振りきる。首筋からドバッと血が噴き出した。それでも牛は走り去り、止まる。そしてもう1度突進すべくオレの方を向き、準備行動に入っている。前足で地面を蹴っている。が、そのガッ、ガッ、ガッという間隔が開いてくる。


 そして一瞬の間があって、牛の身体が傾き、ドーーンと音を立てて倒れた。やっとそのとき、ジンジャーが到着し、ジンジャーの呼吸が落ち着いた頃、ドンガが着いた。

「ドンガ、オマエはクビだからね、クビ。見つけるの遅いわ、走るの遅いわで、ちっとも役にたたないから」

「はぁはぁはぁ、た、タチバナ様、ちょ、ちょっと、早すぎ、ます。追いつけ、追いつけないです。無理、です、はぁ、はぁ、はぁ」

 なーんて甘ったれたことを言ってやがる。

「何を言ってるんだよ。ジンジャーを見てみ。もう息を荒くしてなんかいないぞ。日頃の鍛錬が足りてない!村長の息子だからと言って怠けてちゃだめだろうが?オマエがそんなんじゃ、村長になれんぞ?村人の先頭に立って、動かないといけないだろうが。ヒューズ様に言って、別の者を村長にしてもらうぞ」

 1度マウントとったら、部下をいびりまくる。気持ち良いねぇ。


「はぁ、はぁ、申し訳ありません、そ、それで私は、ここで何をすれば、良いのですか?」

「何って、次の獲物を捜すんだよ」

「それなら、これは?この牛はどうされるので?村人、呼んで来ましょうか?解体しないといけないのでしょう?」

「いや、そんなことしなくていいから。次の捜して、次の」

 と言い牛をポケットに収納する。2人は牛が一瞬でなくなったので驚いていたけど、オレと付き合って驚きっぱなしなので、慣れてきたのか何も言わず、捜し始める。と、

「マモル様!あそこ、あそこにいます。ほら、あれ、あれです!!」

 ジンジャーがまた見つけてくれた。

「え、どこ、どこよ、オレには見えんぞ?どこだ?」

 ドンガは見えていない。コイツは使われることに慣れてないし、適応性がないんじゃないかなぁ。いろいろ理屈は言うけど、実際には仕事できなくて、できないのは人のせいにするヤツ。村を助けてくれって言った時は、こいつ見る目があるな!と思ったけど、その後はだだ下がりの評価。きっと、コイツって素案をバン!!と出して、後は部下に検討させてできあがるのを待ってるタイプかも知れないな。そういう意味では村長に向いているのかも知れない。あとは優秀な補佐がいれば良いんだろう。となるとボルトってことになるのかなぁ。


 ジンジャーの見つけたのは鹿で、あと、他に2頭仕留めて狩りは終わり。村に持って帰って、今晩のメインディッシュになった。

 村人たちは大喜びで、今夜の夕ごはんを食べていると当然、旅の連中は羨ましそうに見てくる。そいつらは有料で提供することにした。もちろん、それは村の財布に入れてもらう。

 それまでは良かった。オレは久しぶりに肉を食べて喜んでいる村人を見て、良かった良かったいう声を聞きながら端っこの方でサラさんと肉を食べていた。そこに伽をする予定だった女の子が母親を連れて来た。横にいるサラさんが、いないかのようにオレだけ見て、母親がズズズっと前に来た。

「タチバナ様、いきなりですけど、アタシに伽をさせてください」

 とおっしゃった!!びっくりして言葉が出ない。

「昼間にこの子の伽を断られたのを聞きました。でも、こんな小さい子だから断られたんでしょう?アタシは大丈夫ですから、一晩お好きなようになさってください」

 なんちゅーことを言い出すんだ、アンタは。そりゃ、胸はどこぞの神官さんほどあるし、たゆたゆとしているけど、ウエストはまっすぐでそのままおけつとの区別つかないという、丸太におっぱいつけたような体型で。


「アタシじゃ、だめでしょうか?」

 と手でおっぱいを持ち上げてみせる。いやキミ、胸がでかけりゃイイというわけじゃないのよ?お、おい、そんなに胸を揺らすとてっぺんが見えちゃうじゃないか!?と、隣の方からどす黒いオーラが滲んで来ているような気がする。サラさんの方を見れない。あ、さっきからオレは黙ったままだった......沈黙は肯定、というように受け取られているのだろうか?たんに、あっけに取られていただけなんだけど......。


 この局面を打開すべくサラさんの腰を抱き寄せ、

「気持ちは嬉しいけど、オレには愛する妻がいるから。昼に渡した金の報酬は貰ったし、もう十分だから。ありがとう、気持ちだけ頂くよ」

 と片手で腰を抱いていたサラさんを膝の上に乗せて、両手で抱きしめる。ポツン村でそんなことをやると張り倒されると思うけど、ここではサラさんもこの母親にみせつけようとしたのか、身体をひねってオレの頭を抱いてきた。それでトドメの一押しに、


「ね、分かったでしょ?オレは今晩、妻を抱くことにしてるからさ」

 と諭したら、一応は分かって頂けたようです。

 ガヤたちが、

「ほら、やっぱりな」

「オレの勝ちだぞ」

「男なら乗ってくると思ったんだけどなぁ」

 などなど言う声が聞こえてきた。どうも賭けの対象になっていたようだ。


 その夜、ジンジャーたち3人は戻って来なかった。オレが今晩サラさんを抱くと宣言したことで、みなさん遠慮してくれたようで2人だけの熱い夜を過ごさせて頂きました。ちなみに聴講者はおりませんでしたよ。


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