サラさん、小トラになる
サラさんって、自分を律する気持ちの強い人だから、トラになるくらい飲むってことはなかった。ま、この世界で潰れるくらいまで女の人が飲むってこと自体がないんだけど、というか見たことはない。
けど、今のサラさんはナゼか、トラになっている。異常に酒臭い。酒瓶を見ると半分に減ってる。あれ、オレは一口飲んだだけなのに、こんなに減ってるのってナゼ?顔が真っ赤で、目がとろんとしている。口から少しよだれが漏れているし。
ナゼそんなに飲んだのかしら?なんて想像できるけど、それは置いといて、サラさんの服の中にオレの手が入っていて(引き入れられて♡)揉んでいる(揉まされている?)。そして甘い甘いサラさんの声が、あぁん、とか、いやん、とか大聖堂のマヤさん夫婦の部屋に響いている。
サラさんの足がモジモジ、すりあわせてしている。これは発情しているんだよなぁ......マヤさんが「これを見ないでおくものか!!」ってくらいの勢いでガン見しているし。
サラさんが頭を下げ、オレの首筋に動き、胸に下がり、ついに硬々息子に移動した。孝行息子はずっと前から硬々息子に変身している。そこにサラさんの顔がコトンと落ちた。
それを見たマヤさんが、
「うわっ!?」
と驚いてくれたんだけど、サラさんはそれっきり動かなくなった。そして寝息を立てている。ね、だよね、寝落ち。そうなると思ったんだよな。はぁ、硬々息子をどうしてくれるんだい。
期待して見ていたマヤさんも、寝てしまったサラさんを見て、
「あらら、サラさん、寝ちゃったんですか。あ~ぁ、途中までいい風向きだったんだけどなぁ。まぁ、いいや。ポツン村に行ってから聞きますから。
でも聞いたところで、私に相手がいないとどうにもならないんだけど、どうしようかしら?」
これはオレに向けて風を吹かせているんじゃないよね?
「それなら、うちの村には若い男がたくさんいるから心配しないでくださいよ」
「でも、私は1度結婚しているから」
「それは大丈夫だと思いますよ。マヤさんさえ、贅沢言わなければ、相手は必ず見つかりますから」
「そうですか?じゃあ、マモル様に紹介して頂きます♪」
寝てしまったサラさんを膝の上からどかして、テーブルセットを片付け、サラさんを背負って館に帰った。マヤさんは酔ったようにみせていたけど、歩く姿は実にしっかりしていて、マヤさんがウワバミさんだったということが分かった。う~~ん、ビールのアルコール度数はマヤさんには物足りないかも知れないなぁ。リキュールとかウオッカなんかを作る計画を持っとかないといけないだろうか?
何はともあれ、予定より早く帰館した。夜明け前だったので、誰も起きていなかったし、ゾイさんが出て来なくて一安心。
サラさんをお姫さま抱っこしたまま、ベッドに寝かせる。靴を脱がせ、神官服とズボンを脱がせる。色気のまったくないブラジャーというか胸当てと、パンツというのかドロワーズだけにする。怖ろしいほどの色気のない下着。
思い起こせば、カタリナとの初夜のとき、カタリナはさすがに可愛い刺繍の入った胸当てとドロワーズをはいていて、やっぱり金持ちってこんな可愛い下着付けてるんだって、すっごい感激したの覚えている。あの下着を脱がしていく喜びってやつがあるのとないのは全然違うでしょ?服をめくったときに可愛い下着が出て来て「おぉっ!?」って思うと、下着の下がどうなっているか知ってても、やっぱ脱がしていく気持ちの高まりっていうのがね。だけど、2晩目からは飾りっ気の全くないものを着用していて、すっごいがっかりした。
とにかくオレも神官服を脱いで、サラさんの横に入る。酒臭いなぁ、オレももっと飲めば良かったけど、サラさんが怪しいような気がして飲まなかったので、嗅覚は麻痺していないんだよな。
だから、
『Clean』
と掛ける。これでオレもサラさんもキレイになったし、一眠りしよう。
そう思ったらサラさんが寝返り打って、オレの方を向く、薄目を開けて。
「サラさん、起きてたの?」
「ハイ、うふふふ♪」
ちょっとテンション高め、そして怪しい。
「なら言ってくれれば良かったのに?」
「ちょっと様子見ようかと思ったのです」
「何の様子?」
「マモル様とマヤさんの様子」
「2人になったら、仲良くなるかなー?と思って」
「はぁ?別にそんなことないよ。起きてたんなら分かったでしょう?」
「はい、分かりました。安心しました。もしかしたらマヤさんと親密になられるのかな?と思ったもので」
「そんなバカな。どうしてそんなこと考えたの?」
「どうしてって、マヤさんキレイだし、マモル様は未亡人好きだから」
「未亡人、好き......?」
「そうです。私、アノンさん、ノンさん、アンさんという方もですか?みんな未亡人。未婚だったのはカタリナ様だけですよぉ」
言われて見れば確かにそうだけど、
「はぁ。いや、オレは未亡人が好きなわけではなく、たまたま相手がそうだった、というだけで!?」
「ええぇぇ、そぅなんですか?」
「そうですって。オレは未亡人だから好きになるわけじゃないって、たまたまそうなっただけで」
「そうなんだ......」
「そうだよ」
「じゃあ、ご褒美をあげなくては!」
「??まだ酔いが覚めていない?」
「えへへへへ♪ うぷっ!」
あぶねーーー!
サラさん、辛うじてゲロせずに済んだ。いくら『Clean』あるからと言って、ゲロを見たいなんて思わないし。後片付けもしたくない。息も酸っぱくなるし。うー、息をするたび、酒くせー息が吐かれるよぅ。
「はいはい、サラさん、寝ましょうね。寝て起きたらロマノウ商会に移動しますからね。とにかく酔いを覚ましてくださいね」
「あーーん、マモル様、どーして私って、こんなに可愛くない女なんでしょーねぇ?」
顔を振って、オレの胸にぶつけてくる。
「はいはい、サラさんは可愛いですよ。そんな卑下しなくてもいいですよぉー」
なんかだんだん面倒になってきたよ。頭を抑えて、いい子いい子してみる。ぶつけてくるのは治まったけど、今度はぐずり始めた。
「ほら、すぐにそんなこと言う。私のこと、年くったオバサンだと思ってんだ。おんなじ年増でもアノンさんみたいに、可愛くないから、私、可愛くないからぁーーうわーーーんんんん!!」
あらーサラさんが泣き出した。いつも沈着冷静で感情をほとんど見せないサラさんなのに、今日は(今晩は?今朝は?)どうしたのかなー?
滅多に飲まない酒を飲んだからなのか、マヤさんのダンナとの再会を見たせいなのか?それもとゾイさんの暴れる姿を見たせいなのか、なんなんだろうなぁ?こういうサラさんも可愛いって言えば可愛いよ。普段見せない弱みを見れたような気がするし。
外にマヤさんが聞き耳立てていたけど、もう寝ることにしました。ゴメンね、期待に添えなくて。




